「もともと貴婦人。庶民のフリしてましたのよ」 桜井まい高貴な初告白
2日、スターダムが『FIBREPLEX presents NEW BLOOD 9』品川インターシティホール大会を開催した。ドンナデルモンド(DDM)の桜井まいはこの日、アーティスト・オブ・スターダムのベルトを掲げての初入場となる。キャリア初戴冠への道のりと今後の野望とは? 観客を「庶民」呼ばわりする貴婦人節はどこから来た? “貴婦人”の初告白インタビューに成功した。
(奈七永は)ワタクシがなりたいプロレスラー像とすごく近いものを持った庶民レジェンド
カクトウログ 試合直後にもかかわらずすみません。なんと貴婦人様のお言葉をいただける機会を、スターダム広報を通じていただくことができましたので。
桜井まい 負けはしましたが、育った場所、品川。しかも獲ったばかりのベルト(5・27大田区で戴冠)を巻いての初めてのお花道入場でしたから、気分は悪くなくってよ。高級ジュエリーをふだんからまとってるワタクシにとっても、ベルトの輝きはまた格別ですわ。今日は何でも聞いてよろしくってよ。ただし、目の前で滝のような汗を流していることは伏せなさい。
カク ありがたきお言葉(頭を下げる)。リング上では高橋奈七永選手に対して「ワタクシ貴婦人から勝つなんて生意気だわ」としつつ「おパッション注入マッチしてくれた感謝」もされておりました。振り返って、パッションは注入された試合だったのでしょうか。
桜井 ええ、庶民レジェンドにおパッションを注入されましたわ。こんなバチバチした試合をシングルでやる機会はなかなかありませんし、さすが「レジェンド」って言われてるだけのものはあったと断言してよろしくてよ。その声であったり、出てる気持ちの強さ、あと技のもちろん威力もそうですし、スタミナ、体力。お客さんを乗せていこうというパワーっていうんですか。全てにおいて。パッションを注入されるってこういうことなんだと思いましたわ。
[6・2品川/おパッション注入マッチ 〇高橋奈七永(14分21秒 クインビーボム→片エビ固め)●桜井まい]
カク 「パッション」を肩書きにしているだけのものはお感じになった?
桜井 (奈七永は)ワタクシがなりたいプロレスラー像とすごく近いものを持った庶民レジェンドなんで、そこを肌で感じられたっていうのは大きいことですわ。
カク ツイッターでも「私は全女のようなバチバチした戦いが好きでございます。自分もそういうレスラーになりたいと思ってDDMに入りました」と書かれてました。
桜井 喧嘩みたいな感じの、そういったファイトがすごく好きで。ワタクシの優雅な見た目からはあんまり想像できないかもしれないわ。でもプロレスというのは、楽しくやるときもあり、喧嘩を仕掛けるべきときもあり。そうした幅を持ったレスラーに、もっとなっていきたいと思いますわ。もちろん反省点もいっぱいありますし、今日は庶民レジェンドから学ばせてもらったというところかしら。
カク 今日の試合は特に右のフロントキックにこだわってましたが、作戦でもあったのでしょうか。
[フロントキックはリング内で何度も放たれたほか、花道を利用した疾走式としても繰り出された]
桜井 見ての通りワタクシはお上品で、筋肉のつきやすさという点で、トレーニングしても腕が太くなりにくいタイプ。ならばと足を使ったり、体重を乗せたり、コーナーを使ったりってことは考えての闘い方ではありますわ。
DDMには「折れない気持ち」を重んじた軍隊っぽい練習がございますのよ
カク 先日には(ジュリア、テクラとのチームで)アーティスト戴冠がございましたが、ジュリア選手とKAIRI選手の絡みも話題となった試合でした。
[5・27大田区/アーティスト・オブ・スターダム選手権試合 KAIRI&なつぽい&●安納サオリ(18分23秒 雁之助クラッチ)〇ジュリア&テクラ&桜井まい ※ジュリア組(バリバリボンバーズ)が新王者に]
桜井 2人が向き合っただけで高まるものをワタクシも感じましたわ。打撃の打ち合いを見入っちゃったし、悔しいけれど憧れるところでもありますわ。一つひとつの技のフォームも奇麗でしたわね。あの凄味をワタクシもゆくゆくは出していくから待ってなさい。
カク どういった点での自身の成長がアーティスト戴冠にたどりついたとお考えなのでしょうか。
桜井 DDMでジュリアが教えてくれる練習というのは、体力面もそうなんですけど、「折れない気持ち」を重んじた軍隊っぽい練習がございますのよ。精神的にめちゃくちゃ鍛えられましたわ。やっぱり気持ちの部分っていうのは大きいんじゃないかしら。試合をしているんですもの、誰しもに「(心が)折れそうになる」「すごい痛い」瞬間は絶対あるんじゃなくって? そんなときに、試合を超えるくらいの過酷な練習をしてると、「練習のほうが辛かった」って思えますのよ。自分に自信がついてきますし、「負けない」っていう気持ちが前より強くなっているとは感じますわ。
カク 詳細は想像するのがファンは楽しいと思うんですけど、その軍隊流の特訓っていうのはDDM独自のものなんですか。
桜井 独自ですわ。このワタクシも最初は「あ、ウッ、ワ~ギャ#&%$」ってなったんで(笑)。
カク チームとしてたどり着いた戴冠でもありましたか。
桜井 やっぱりその練習をすることによってチームワークもよくなりますし、よく喋るので、どのユニットにも負けない強い絆が生まれましたわ。試合を通じても息が合うというところにつながっているかと。
カク 先日ジュリア選手にお伺いしたところによると、『この1年くらいかな、(桜井に)つきっきりで一緒に練習したりいろんな話をして、どこかでいつまでも「ジュリアみたいに」では本人のためにならない。それじゃコピーになってしまう。それでどうするか。自分で考えるしかない。それで生まれたのが「貴婦人」なんですけども』との見解がありました。ご自身で振り返って、いかがですか。
桜井 最初はまず自分の基礎力というのを上げていかなきゃいけないということで、必死に食らいつきましたわ。その基礎力がだんだん身についてきだしたころから、どうやって自分の個性を出していくかを考えたんじゃないかしら。ジュリアの妹分、弟子みたいな印象がついていたとしたら忘れなさい。そうじゃなくて、これからは仲間として支えるぐらいの存在になっていきたいと思いましたのよ。
カク (聞き入る)
桜井 『5☆STAR GP』くらいのころから、いつまでも後ろについていくばかりじゃいけないと。『CINDERELLA TOURNAMENT 2023』1回戦でジュリアと闘ったきっかけもあるんですけど、あそこ(3・26横浜)でいろいろ変わったんじゃないかしら。
[3・26横浜。「庶民のあなたたちは、関内駅で立ち食いそばでも食べながら、この貴婦人様を思い出して家路につきなさい」と上から目線での初マイク]
桜井 前日に、庶民同期(月山和香)が庶民レジェンドを相手にキャリア初勝利をする姿を見届けたことで、負けてられないなと。試合も見せ方も、もっとお客さんが楽しめるものは何か。そんなとき「ワタクシ、貴婦人じゃないか」と思って、ワタクシの貴婦人としての素をどんどん出していこうと思って、あのマイクを始めましたわ。
庶民のあなたたち、もっとブーイングなさい。「庶民」と呼ばれて喜ぶな!!
カク 貴婦人の素養があった?
桜井 言葉には気をつけなさい。「素養」ではないのよ、もともと貴婦人で、庶民のフリを今までしておりましたのよ。
[5・27大田区に向けた記者会見でのバリバリボンバーズのショット]
カク 失礼しました。この路線にしてから、周りの反響とかあるものですか。
桜井 最初はやっぱりいろんな声・・・批判の声とか応援してくれる声とか、まあ「なんだこれ」「ちょっとよくわからない」みたいな声もありましたわ。ワタクシも最初は少し構えましたわよ。みんなに無視されシーン・・・ブーイングさえないんじゃないかと。でも意外とお客さんが反応してくれたのが大きくて。今ではどの地方でもマイクを持ちますが、ちゃんと知ってくれてて、反響の大きさを感じておりますのよ。
カク 「さあ今日は何を喋ろうかしら」という意欲にもつながりますね。
桜井 そうとも言えるわね。だけどワタクシこんなに「ありがとう」と言われることなんて求めてなかったわ。いかにお客様が嫌な気持ちになるだろうみたいなこと、上から高飛車なことばっかり言わなかったかしら。ブーイングも飛び越えて最近すごく「マイクまだですか」みたいなのがあるので、ワタクシの思ってるのとちょっと違う方向ですわ。
カク 意外と受け入れられた?
桜井 庶民のあなたたち、もっとブーイングなさい。「庶民」と呼ばれて喜ぶな!!
カク はい…(貴婦人様を満足させるのは難しい)。庶民同期の初勝利の刺激に触れられていましたが、初勝利後にも桜井選手がシンデレラトーナメント準決勝(4・15代々木)で勝っている中で、(月山)本人は「フューチャー戴冠後に桜井選手へのリベンジ」を目標として口にしていました。感じることはありますか。
桜井 決着つけたばかりですからお黙り!! ただ、シングルのベルトをワタクシは獲れなかったので、もし獲ったら対戦してあげてよろしくてよ。スターダムに来る前から、辛いときも楽しいときも一緒にやって来たかけがえのない同期なので。そこは(少し言葉に詰まる)いろんな思いがないと言ったら嘘になりますわ。あらちょっと喋り過ぎましたわね。うまく編集しておきなさい。
カク もちろんでございます。本日は高貴なお話をありがとうございました。
桜井まい プロフィール
桜井まい
フェリス女学院大学卒業。K-pop好きで韓国の梨花女子大学に語学留学の経験を持つ。タレントとして活動し、ミスFLASHファイナリストになった。Actwres girl’Zでプロレスデビューしたが、2021年7月に退団。「強さを求めて」と、8月13日よりスターダムに参戦。初戦では、ウナギ・サヤカの持つフューチャー・オブ・スターダム王座に挑戦。敗退したが、その場でCOSMIC ANGELS入りが認められた。しかし2022年に入ると目指すプロレスの方向性の違いを強く認識、2月12日大阪大会試合後、かねてよりそれを察知していたジュリアの誘いに応じ、Donna del Mondoに電撃移籍を果たす。
生年月日/1990年9月14日
出身地/千葉県
身長/164cm
体重/55kg
デビュー戦/2020年2月11日、東京・新木場1stRING(Actwres girl’Z)
○青野未来(9分13秒、ダブルアーム・スープレックス→片エビ固め)桜井まい●
得意技/ダイビング・エルボー、ビッグブーツ、スタナー、STF、フェイスバスター、ダイビング・ローリング・ギロチンドロップ
タイトル歴
第30代アーティスト・オブ・スターダム