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柴田勝頼「辞めることが俺の新日本」 奇跡の帰還はなぜ実現したのか

新日本プロレス, 柴田勝頼

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 9日深夜、関東地区テレビ朝日の『ワールドプロレスリング』では3年前(2017年4月9日)のオカダ・カズチカvs.柴田勝頼が特集される。

 1か月前に当サイトでは、オカダ戦からの柴田の奇跡と軌跡を振り返った。

 オカダ戦は、柴田にとって新日本プロレス帰還後初のIWGPヘビー級戦でもあった。しかし、そもそも2012年に柴田が新日本プロレスに戻ってきていなければ、オカダ戦にはたどり着いていない。ましてや、2005年の新日本退団時の柴田には「辞めることが俺の新日本」との思いもあった。

 本稿では、柴田の奇跡の新日本帰還はなぜ実現したのかを追いかけたい。

新日本でデビュー、退団、他団体でのプロレスを経て総合格闘技へ

 新日本デビューから新日本帰還まで。柴田はどのような歩みだったのか。

【新日本プロレス】
1998年3月 新日本プロレスに入寮。
1999年7月 札幌大会でプレデビュー戦。
1999年10月10日 井上亘戦で正式デビュー。
2004年 柴田・中邑真輔・棚橋弘至の3人が「新闘魂三銃士」と呼ばれる。
2005年1月 新日本プロレスと3度の契約交渉を行ったが決裂。1月31日付で退団。

【他団体でのプロレス】
2005年5月14日 新日本プロレス東京ドーム大会に登場するも、大会翌週に興行会社ビッグマウスと契約。
 8月4日 ビッグマウス主催大会「WRESTLE-1 GRAND PRIX 2005」に出場。
 8月10日 8月からは関連会社ビッグマウス・ラウドに移籍。以降参戦。
 11月5日 ノア日本武道館大会にて、KENTAとタッグを組んでノア初参戦。
2006年8月20日 ビッグマウス・ラウドを退団。
 9月9日 ノア日本武道館大会参戦。

【総合格闘技】
2007年3月1日 総合格闘大会HERO’Sへの参戦を表明。また船木誠勝とともにチームARMSを発足させたことも明らかに。
 3月12日 HERO’S初戦として名古屋大会で山本宜久と対戦、勝利。
2009年9月 師匠・船木のプロレス復帰に伴い、ARMSから桜庭和志のチームLaughter7に移籍。
2011年12月31日 DREAM&IGF合同興行に桜庭和志とタッグを組んで参戦。柴田としては5年ぶりのプロレスルールでの試合であったが、ドロップキックを放った際の落下で左手首を骨折。

【新日本プロレス】
2012年8月12日 新日本プロレス両国国技館大会に登場、柴田が「ケンカ、売りにきました。」と宣戦布告。
 9月23日 新日本プロレスに6年ぶり出場。以降も桜庭とのタッグでスポット参戦。

「新日本を辞めたのは、辞めることが新日本だと思ったからです」

 「辞めることが俺の新日本」という言い回しは、2005年1月の退団の心境の振り返りでよく取り上げられる言葉である。おそらく複数機会でこの証言がなされているのだろうが、たとえば2012年1月のムック『Dropkick』vol.4での金沢克彦氏が手がけたインタビューでは、このように柴田から放たれている。

「新日本を辞めたのは、辞めることが新日本だと思ったからです」。

「ボクはプロレスラーです。ずっとプロレスラーです」。

「時代錯誤かもしれないけど、先輩たちが大晦日に総合のリングに駆り出される姿をずっと新弟子時代から見ていた」。

「だから強いレスラーになりたいし、強くなることから逃げたくないからいまこうしている。まだその途中だし、完成されたレスラーじゃ全然ない」。

 2016年1月の『ゴング』vol.10でのインタビュー(聞き手・金沢氏)ではこのように答えている。

「なんか『自分らしく動きたかった』ってだけですよ。それはカネとか、プッシュしますとか、そういういい話はあるかもしれないけど、カネより大事なものってあるから。いまできることって限られてるんで。何事も経験。昔から直感で動いていたんで」。

 新日本を辞めたのは、柴田にとって自分が自分であるための決断だった。全身全霊をかけての決断だった。

 総合格闘技に出陣するレスラーを何度も会場へ行って応援してきたボクからしても「先輩たちが大晦日に総合のリングに駆り出される姿を~」などのくだりはグッとくる。柴田は新日本を出て最初から総合に行ったわけではなかったが、退団して船木誠勝ともトレーニングしているうちに、このような思いも強く重なっていったのだろう。

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 柴田はボクらの思いも背負って、外のプロレスの世界、総合格闘技の世界に出陣した。

どうしてプロレスに戻ることになったのか

 人一倍こだわりが強いプロレスに背を向けた男が、どうしてプロレスに戻ることになったのか。

 今回の(ゴング)6号では(井上崇宏氏が)書き原稿を再投入。柴田インタビューとセットでレポートを寄せている。まず柴田がインタビューで「本当に自分が今、新日本プロレスのリングに上がっている事実というのは、桜庭さんがきっかけだったんで。桜庭さんがいなかったら上がってないんで」とコメント。そもそもタッグで新日本プロレスに参戦したわけであり、この言葉には特別なサプライズはない。

 振り返ると2011年末のIGF大会へのプロレスマッチに桜庭&柴田が出撃。これでプロレスに両者が“目覚めた”というのが、ボクらの知っているアウトライン。昭和プロレスばりの緊張感のあるプロレスを持ち込む意気込みで3年前に新日本上陸を果たしたわけだ。

 ところが井上氏のレポートは、より突っ込んだ内容となっている。ドSな性格の桜庭に到来した「プロレスをやってみたい」という抑えられない思い。しかし、プロレスへのこだわりが強すぎる(当時はプロレスではなく総合格闘技に没頭していると自覚していた)柴田にはなかなか切り出せない。ついに伝えられた柴田は、驚きつつも桜庭の気持ちを理解。おそらく自身の未来への気遣いもあるんだろうと恐縮する。「やるなら新日本」と柴田は応じ、「柴田くんと組めるならどこでも」と桜庭は受け止める。

 踏み込んだやりとりや前後談は井上氏のレポートでぜひ確認していただきたい。桜庭・柴田の2人の絆の深さが溢れている。世界的にみても総合格闘技の歴史をつくった桜庭だが、最後の最後にめぐりあった“同志”が柴田なのかもしれないなぁ。いやはや、このレポートは何通りもの味わいができて、何度でも読んでしまうよ。

 また、同『ゴング』の柴田自身によるコラムでは、新日本vsUWFインターナショナル対抗戦、東京ドーム大会での桜庭出場の第1試合タッグ戦がプロレスラーになることを決意させる試合だったことが改めて明かされている。「3年前に、両国で一緒に参戦表明をしに行きましたが、ぶっちゃけ自分は桜庭さんのオマケのようなものだった」などとも告白した。

(2015.07.25 カクトウログ)

 ボクが“踏み込んだやりとりや前後談は井上氏のレポートでぜひ確認していただきたい”と書いたのは、もちろん発売直後だったから。その先には秘話が書かれているが、ここでふたつだけ拾っておきたい。ひとつは、桜庭がIGF大会でのタッグマッチでの桜庭の姿勢「なんか起きたときのために頭だけはきっちりガードしとこうぜ」「ファールカップは忘れないように」。もうひとつは、桜庭の気づき「柴田くんはやっぱりプロレスの方が輝いている」。

 IGF大会にタッグ参戦したことをきっかけとした桜庭の“柴田となら同じ心構えでプロレスを闘える”という確信がなければ、柴田の新日本帰還は実現しなかった。後輩を慕う桜庭、先輩をリスペクトする柴田。機運と、タイミングと、人間関係。その全てが奇跡的にそろったことで、柴田は新日本への帰還を決意することになる。

 2012年1月、新日本プロレスの親会社は株式会社ユークスから株式会社ブシロードへと移行した。キャラクタービジネス感が高まったところで、桜庭&柴田には「緊張感のある昭和プロレスを忘れたことにするな」という空き家を狙う意図もあったことだろう。

 8月12日、新日本プロレス両国国技館大会に2人が登場。柴田が「ケンカ、売りにきました」と宣戦布告する。ところが、空き家狙いが簡単に成就するものではないということを2人が実感するのに、さほど時間は要しなかった。

船木誠勝「ものすごいいい買い物を新日本プロレスはしたと思います」

 この経緯について、船木誠勝が別の補足を寄せている。

その(IGF大会参戦)後、新日本プロレスが桜庭和志の獲得に動きました。おそらく、その後のドームの中邑(真輔)選手の相手(にしたいという理由)だと思うんですけれども。
桜庭選手を獲得するともれなく柴田選手もついてきました。これはのちのことを考えると、ものすごいいい買い物を新日本プロレスはしたと思いますね。

(2020/02/25 船木誠勝YouTube)

 桜庭と柴田がセットで新日本参戦。当初は・・・新日本で話題になったり、ハマったりしたとは言い難いものがあった。

中邑真輔 紙媒体とネットも含めて「盛り上がっているのは『KAMINOGE』とカクトウログだけじゃねぇのか?」と思いますけどね(笑)。

(2012年10月『KAMINOGE』vol.11)

 2014年1・4ドーム決戦。柴田が相手を務めた後藤洋央紀復帰戦は同大会のベストバウトを獲得し、柴田は「俺は今、青春をしている」とのコメントを残す。2015年1・4ドームでは後藤とのタッグでIWGPタッグ王座を戴冠する。間違いなく時間がかかった。

 2015年7月5日、大阪城ホールで柴田と桜庭はシングルで対戦して柴田が勝利する。新日本での闘いに戸惑いを抱えたままの桜庭は久々に場内を熱狂させたが、新日本マットからは徐々にフェードアウトしていった。一方で柴田は、しっかりとファンを沸かせる試合ができるようになっていた。

 発端となったのは、桜庭の方の参戦渇望であり、新日本からも求められたのは桜庭の方だったかもしれない。ところが柴田の方がよりプロレスを求めるようになり、時間を要しつつも試合内容としても開花した。これほどまでにプロレスは難しい。

柴田はすべてを必要な過程だったと振り返る

 柴田はすべてを必要な過程だったと振り返る。



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