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小久保隆「シン入場をイメージして音作り・・・出来合いの曲とは効果が違う」

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 「ウィー、ウィー、ウィー」ケータイから流れる緊急地震速報のアラーム音の作曲者は、かつてプロレスラーのテーマ曲を手掛けていた!! 当サイトでも話題にさせていただきました。

 小久保隆さんが40年前の「サーベル・タイガー」(新日本プロレス参戦時のタイガー・ジェット・シンの入場テーマ曲)、13年前の緊急地震速報の音を手掛ける。

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 この2つの“緊急事態を煽る音”が同じ作曲者であることをツイートした昭和プロレステーマ曲研究家・コブラさん。小久保さんとツイッターでやりとりした延長で、貴重なインタビューが実現しました。カクトウログを通じて世に出したい希望をいただきましたので、喜んで掲載させていただきます。

音楽制作会社でシンセサイザー プロレスのテーマ曲のお仕事が来た

コブラ : 小久保さんの作曲されたタイガー・ジェット・シンのテーマ「サーベル・タイガー」が収録されたのは、昭和55年にキングレコードから発売された「新日本プロレススーパーファイターのテーマ」なんですが、このアルバムに参加されたきっかけを教えてください。

小久保 : 僕は電気通信大学に通ってまして、そこでプログレのロックバンドでドラムをやっていたんですが、高校の頃からシンセサイザーが好きで、そのバンドでも自分でシンセをプロデュースしてキーボードの人に弾いてもらっていたんです。当時は学生でお金も無いので、先輩からARPというアメリカのメーカーの高価なシンセサイザーを借りていたんですが、ある時それを壊しちゃったんです(笑)。で、直せるところはないかと調べたら秋葉原のエレクトロサウンドという会社を知ったんですが、そこは実はバッハ・リヴォリューションの田崎和隆さんと神尾明朗さんがやっている音楽制作会社だったんです。

コブラ : バッハ・リヴォリューションといえば冨田勲さんに見出されたシンセサイザー・ユニットですよね。

小久保 : ええ。僕としてはシンセサイザーを直してほしいというのがそもそもの用事だったわけですが、エレクトロサウンドで田崎さんとお話していく中で「君シンセサイザーよく知ってるね」と言われて親しくさせていただくようになり、田崎さんに頼まれてヤマハ音楽教室のシンセサイザーの講師を引き受けたのがきっかけでエレクトロサウンドに社員として入ったんです。最初は主にバッハ・リヴォリューションの仕事を手伝っていたんですが、僕と同じような立場で平沢進さんもいましたよ。

コブラ : 平沢進さん! 同じアルバムで長州力のテーマ「パワー・ホール」を作曲されています。

小久保 : ある時、田崎さんのお友達でアドバルーンという会社の辺見さんという方から、プロレスのテーマ曲のお仕事が来たんです。アドバルーンは「新日本プロレススーパーファイターのテーマ」の制作担当会社だったんですが、恐らくレスラーのテーマ曲を作るのにシンセサイザーが一番カッコ良いだろうという狙いでウチに話が来たんだと思いますよ。

コブラ : そこで小久保さんがタイガー・ジェット・シンのテーマを担当される事になったという事ですね。

小久保 : 僕らの間ではこういう仕事は「企画物」といって、自分たちが表現したいアーティスティックな作品ではなく、レコード会社や制作会社から依頼された仕事として受けてるんで、特に僕がシンの曲をやりたいと希望したわけではなく、エレクトロサウンドの中で「小久保さんはシン、平沢さんは長州」という風に割り当てられたんだと思います。

コブラ : 平沢さんは異母犯抄という変名でクレジットされていますが、小久保さんはご本名のままですね。

小久保 : 平沢さんはその時P-MODELをもう立ち上げていましたし、企画物のお仕事として割り切る意味で別の名前を使ったのかもしれませんね。よく覚えてませんが、僕は別に変えなくてもいいやという感じだったのかも。

コブラ : 演奏者名がP.L.O.となっていますが、これはどういったバンドなんでしょうか?

小久保 : P.L.O.? そう書いてあるんですか? 全然覚えてないなあ…(笑)。

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コブラ : P.L.O.は何の略なのかをお聞きしようと思っていたのですが(笑)。ちなみに、平沢さんの「パワー・ホール」の演奏者はZ.Z.Z.という名義でした。

小久保 : Z.Z.Z.?(笑)。当時の事とか、平沢さんと話してみたいなあ。彼は僕より年上で二つしか違わないんですけど、彼からは凄く勉強させてもらいましたよ。当時からとても才能のあった人で、根っからのロッカー。ほとばしる魂からの揺さぶりというか、エネルギーみたいなものが無いと、ああいった曲は作れない。僕なんてノンポリというか、カッコいい音楽が作れれば良いなあという感じだったので、エレクトロサウンド時代に二人で仕事をしていた時も僕はいつも彼に対して挫折を感じていました。逆に彼から刺激を受けていたから、僕は今でも音で飯を食えてるんじゃないかと思うくらいリスペクトしてます。

コブラ : 小久保さんにとって平沢さんは戦友であり、大きな影響を受けた存在でもあったわけですね。

小久保 : そういえば、そのアルバムで僕たちエレクトロサウンドが担当したのはシンと長州とアンドレの3曲と記憶してるんですが、アンドレは何て表記されてます?

コブラ : アンドレ・ザ・ジャイアントのテーマ「ジャイアント・プレス」は、作曲者・演奏者共にE-Projectと表記されています。

小久保 : E-Projectというのは僕と平沢さんが一緒にやる時に、どちらか片方の名前だけじゃおかしいから何かバンド名を、という事で付けた名前だったと思います。僕はシンは一人で作ったんですが、アンドレはちょっと記憶があやふやで。今改めて「ジャイアント・プレス」を聞くと、平沢さんぽい音作りなんですよね。僕も参加していたとは思うんですが…。あともしかしたらバッハ・リヴォリューションの神尾さんも入っていたかもしれない。

コブラ : E-Projectという名義では他に、スター・ウォーズなどの映画音楽をシンセでアレンジしたアルバムを出されていますよね。

小久保 : そういった企画物をやる時のバンド名で、正式なバンドとしては活動していなかったですね。

シンがサーベルを振り回して入場・・・イメージしながらデザイン

コブラ : いよいよ「サーベル・タイガー」についてのお話を伺いたいのですが、小久保さんは、元々プロレスはご覧になっていたんですか?

小久保 : (申し訳なさそうに)いや全く見てなかったわけじゃないけど、詳しくは分からないですね~(笑)

コブラ : では、シンの事も全くご存知なかった?

小久保 : 世間一般レベルでの認識だけど、悪役レスラーだという事は知ってましたよ。もちろんこの仕事を引き受けるにあたって、ちゃんとテレビで「ああやってサーベルを持ちながら入場するのか」といった情報は仕入れたりしてました。

コブラ : 恐らく時期的に、小久保さんが当時ご覧になったシンの入場シーンには、ミーコの「タイムマシン〜イン・ザ・ビギニング」という曲が使われていたと思うんですが覚えてらっしゃいますか?

小久保 : 先ほど聞かせていただきましたが、全く記憶にないですね。でもやっぱり「僕のサーベル・タイガーの方が断然似合ってるな!」って思います(笑)。

コブラ : やはりそうですよね! 先ほど学生時代プログレのバンドをやられていたと伺いましたが、当時シンとよく比較されていたアブドーラ・ザ・ブッチャーという悪役レスラーのテーマにピンク・フロイドの「吹けよ風、呼べよ嵐」が使われていたんですが、ご存知でしたか?

小久保 : もちろんその曲は知ってましたけど、ブッチャーに使われていた事は知らなかったですね。

コブラ : 小久保さんがシンの曲を作られる三年前から使用されまして、プロレステーマ曲として当時かなり認知されていたので、失礼ながら何らかの影響を受けていたのかなと思っていたのですが…

小久保 : いや、全く意識はしてないです。ブッチャーの場合はピンク・フロイドの「吹けよ風、呼べよ嵐」という曲が元からあって、悪役にちょうどいいからテーマ曲にしようという流れですよね。でも僕は最初からタイガー・ジェット・シンのために作ってますから。シンがサーベルを振り回しながら入場してきた時に、どういった音作りをすれば盛り上がるだろうとか、ちゃんとイメージしながらデザインしています。出来合いの曲を与えるのとは効果が全く違うと思いますよ。

コブラ : その作曲者としての力強いお言葉で、今日取材させていただいて本当に良かったという気持ちで一杯になりました。

小久保 : 僕はプロとして、そこは自信を持って言えますね。

コブラ : 音をデザインするといえば、やはり今回の取材をさせていただくきっかけでもあった緊急地震速報ですよね。シンは入場する時に、観客にも襲い掛かるほど狂暴で危険なレスラーなんですよ。だから観客は「サーベル・タイガー」が流れると逃げる準備をするんです。なので「危険を察知させて避難を促す」という意味で、この二つの作品は共通しているのかなと思うんですよ。

小久保 : いやあ、コブラさんのツイートで初めて、シンのテーマと緊急地震速報が繋がるのか!とビックリしまして(笑)。鋭い指摘だなあと。

コブラ : 恐れ入ります(笑)。

“癒し”も“緊急地震速報”も同じ 音によるソリューション




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