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プロレスの未来とイデオロギー闘争とイッテンヨン! ケニーのプロレスに感じたファンの「モヤっと」を、棚橋が気づき言語化

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 イッテンヨン「ケニー・オメガvs.棚橋弘至」まであと13日。
・ バンドリ! ガールズバンドパーティ! presents WRESTLE KINGDOM 13 in 東京ドーム 1月4日(金) 17:00 東京・東京ドーム

 Rolling Stone Japanにおける両者のロング・インタビュー掲載が話題となっている。こちらも参照しながら、今回のイデオロギー論争を考察してみたい。

 ケニーインタビュー。
・ ケニー・オメガと棚橋弘至 「プロレス」を守る者はどちらなのか? Rolling Stone Japan(ローリングストーン ジャパン)

 棚橋インタビュー。
・ エース・棚橋弘至が恐れる「プロレスブーム」の先にあるもの Rolling Stone Japan(ローリングストーン ジャパン)

 

■拮抗するはずの支持スコアは棚橋が2倍近くリード! ケニーのプロレスに感じたファンの「モヤっと」を、棚橋が気づき言語化した

 2年前の2017年1月4日。オカダ・カズチカvs.ケニー・オメガの一戦は世界中で話題となり、新日本プロレスの知名度を上げた。国境を超えて凄さを感じさせるケニーの優れたパフォーマンスは、間違いなくファン獲得につながっている。それでもオカダに勝てなかったケニーであるが、2018年6月9日、ついにオカダを倒してIWGPヘビー級王座を戴冠した。

 一方で、棚橋弘至は特に2017年までのコンディション低下で王座戦線から後退していた。2018年が明けると、徐々に復調する。春のニュージャパンカップ決勝ではザック・セイバーJr.のポテンシャルを引き出しながらの準優勝。GW博多でのIWGPヘビー級戦ではオカダに肉薄し、夏のG1クライマックスを制覇するに至る。闘いにおける起承転結でファンを魅了している。

 両者の支持スコアは拮抗してもよいはずだが、当サイト実施の応援アンケートでは棚橋が2倍近くリード。
・ どっちを応援? IWGPヘビー戦 – 投票/アンケート – 人気ブログランキング

 新日本公式のMVP結果としても、2位の高橋ヒロムを挟んで、棚橋が1位、ケニーが3位につけた。

参考。

 ケニーと棚橋は、お互いに相手のプロレス観を否定している。

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 ケニー:極端に言えば、俺が楽しませたいのはプロレスファンというよりも「人」なんだ。プロレスを知らない人が観ても、一瞬で虜になってしまうような試合を心掛けているつもりだよ。そのためならハードコア、ストロング、コミカルといったカテゴライズなんて関係ないし、たとえリングがない場所でだって、俺は常に世界が認めるベストバウトをする自信がある。でも棚橋サンは、そうじゃない。彼は新日本のストロングスタイルしか知らないし、世界のファンにも目が向いていない。

 棚橋:今のケニーがやってる試合って、単に自分の身体能力の高さを見せびらかしているだけだから。もちろん、彼の身体能力は称賛に値するものだけど、プロレスは、技の“凄さ”を競い合うだけのスポーツじゃない。あのスタイルがファンを喜ばせているのは事実だとしても、レスラーは目先のトレンドに惑わされず、ひとつひとつの技に意味と魂を込めて闘う、いわゆる「人間力」の“凄さ”を競う試合をしなければならないんです。

 オールオアナッシングではなく、どっちに寄っているかという話。だけれども、技の応酬が目的化しているようなケニーの試合にファンが「モヤっと」していたのも事実。その見られ方は10・8両国国技館での“仲間内同士での3WAY”IWGPヘビー級戦で、より顕著になった感もある。

 そこに気づいた棚橋が奮起して挑戦者となり、言語化してイデオロギー闘争を仕掛けたのである。

 

■向こう3年の隆盛が確信できれば、棚橋も主張を引っ込めるのでは? 言わずにいられない危機感、ヒロム・柴田の欠場もひっくるめて

 棚橋は「(ケニーのプロレスには)品がない」発言について、以下のように噛み砕いている。

棚橋:長年観ているファンなら、そこまでの技を出さなければ決着がつかないことをわかってもらえるとは思うんです。時には、反則や凶器攻撃が必要になることも理解できるでしょう。しかし、初見の方やファンになって間もないお客様の場合はどうなのか。特に初見の方なら「やっぱりプロレスは過激で、野蛮なスポーツだ」と思ってしまう可能性が高いんじゃないのかな。

─つまり、プロレスに対しネガティヴなイメージを持ってしまうと。

棚橋:僕の中で「3年理論」っていうのがあって。現在やっていることの影響が反映されるまでには、だいたい3年くらいの年月がかかるという。これは、新日本の低迷期から復活までを体験したことで得た結論なんですけど。

─初見のお客様を大切にしなければ、3年後には観客数が減ってしまうかもしれない。

棚橋:メディアで取り上げられる機会が増えて、そこで初めてプロレスに興味を持った方も多いと思うんですよ。そうした初見のお客様が、数年後にファン層の中核をなす存在になる。僕はそう信じています。

 ケニーが主張する「世界を意識したプロレス」と、棚橋の見解。

ケニー:大切なのは、その進化が誰のためのものかってことなんだ。俺は常に、ファンを喜ばせるためのプロレスをしているよ。新日本プロレスも、今ではストリーミング配信を通じて、世界中のファンに試合を届けている。だから、世界のマーケットを意識したスタイルを追求するのは当然のことだよね。

棚橋:ケニーは世界を意識したプロレスというけど、僕に言わせれば単に海外のファンに迎合しているようにしか見えないですよ。(中略)それではすぐに飽きられてしまうんです。日本の団体が世界で勝負するなら、自分達が自信を持って育ててきた日本のスタイルを届けなきゃ。もちろん、純粋な新日本流が受け入れられるのには時間がかかるかもしれない。だからといって、安易に海外に迎合していたら、結局のところ競争力を失ってしまうし、ひいては日本のファンをも失うことになりかねないと思いますね。

 このような棚橋の心配が杞憂で終わると確信できれば、棚橋も主張を引っ込めるのではと思う。確信できないからこその危機感であり、言わずにはいられないのだ。

 ボクはつねづね、誰がプロレスをどういうふうに持っていってくれるのだろうかと考えるのが好きだ。その点で、2018年前半の高橋ヒロムには出色ぶりがあった。アグレッシブな技だけではなく、グラウンド技も含めて闘いを表現。試合前後の主張やマイクと闘いの連動のさせ方も納得感があり、ジュニアへの思いも溢れ、間違いなく乗れるものがあった。

 それだけにヒロムの2018年7月の負傷(ドラゴン・リーの投げっぱなしドラゴンドライバーで首から落ちる)、戦線離脱はショックだった。棚橋の胸の内には、G1決勝でセコンドについた柴田勝頼(長期欠場知中)のことも含めて「どうにかならなかったのか」との思いがあって当然だろう。柴田らの欠場を受けて「『危なすぎる』だとかさ、そういうのがはやってんの? ここまで来るのによ、何千回も、何万回も受け身とってんだよ。もっと楽しまなきゃ損だぜ」との発言をしていたヒロムという流れもあったら、なおさらだ。

 ファンに長く楽しんでもらうためには? 応援している選手が闘い続けている状態を築くには? もちろんスポーツにアクシデントはどうやったってあるわけだが、方向性をコントロールするポジションにケニー、オカダ、内藤らはあるんじゃないか。そういうものをひっくるめたのが、今回の棚橋の仕掛けなんだとみている。

 もっと言うと、棚橋はファンに聞きたいんだと思う。どんなプロレスなら「もっと愛してくれますか?」「長く愛してくれますか?」と。ドーム大会は、観戦するファンにもプロレスを問いかける。

 

■東京ドーム大会の第1回は平成元年! プロレスの未来を願いつつ、イデオロギー闘争を重ねつつ見届ける平成最後のイッテンヨン

 ひとつわかったことがあった。「技の応酬が目的化しているようなケニーの試合」と先ほど書いたが、ケニー本人がやりたいことはどこにあるのか。

 『ケトルvo.46』よりケニーの発言。

・私はいろんなスポーツ(アイスホッケー、ビーチバレー、バスケットボール、柔術)を学んできた。いろんなアスリートの考え方を身に着けてきた。
・日本のゲームからはさまざまなストーリーテリングの方法も学んだ。プレーして「どうしてこんな気持ちになるのか?」と分析した。
・だから、私の試合にはたくさんのバリエーションがあり、すべてが違う。アスレチックなスタイルができれば、コメディだってできる。毎回異なるストーリーを語るから、世界中のどんな人にも伝わる試合ができるんだ。

 ケニーは試合を通してストーリーを届けようとし、腕を磨いている。ここまでのあからさまな告白はプロレスラーとしては珍しい。2018年の飯伏幸太やヤングバックスとの友情物語、BULLET CLUB内紛などは注目を集めたが、伝わったもの、伝わり切らなかったもの、どちらもある。ベビーにもヒールにも寄り切らず、提供する闘いの対立軸がわかりにくいという言われ方もする。

 改めてケニーに自身の生き様そのものとして表現したいストーリーが生まれ、それを表現しようという意欲が高まったときには、棚橋のいう「ひとつひとつの技に意味と魂を込めて闘う」プロレスに合流していくように思う。そういう意味での「ベストバウトマシン」ならば歓迎だ。

 ビギナーファンからすると面倒くさいジャンルにも見えるだろうが、棚橋がメインテーマにし、ケニーも反論をみせている。今回の論争はプロレスそのものを問う闘いなのだと思っていただきたい。

 日本のプロレスの東京ドーム大会、その第1回は平成元年だった。プロレスの未来を願いつつ、イデオロギー闘争を重ねつつ見届ける平成最後のイッテンヨン。次の時代に橋渡しされ、長く愛されていくためのゴングが鳴る。

 

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