8割「妥当」評価、スターダム以外の女子大賞6年ぶり プロレス大賞総括
10日の選考会により『東スポプロレス大賞2024』受賞者が決定した。選考委員会を構成したメディアが10日深夜(11日早朝)に朝刊(紙)で第一報を伝えた。結果を検証したい。
2023&2024年の受賞結果 東スポプロレス大賞
ザック・セイバーJr.が初のMVP(外国人のMVPはボブ・サップ以来の史上2人目)、女子プロ大賞はSareeeが初受賞となった。
▼受賞結果 東スポプロレス大賞(2年分)
2023年 | 2024年 | |
MVP | 内藤哲也(新日) | ザック・セイバーJr.(新日) |
ベストバウト | グレート・ムタvs.中邑真輔(1・1武道館/ノア) | 辻陽太vs.後藤洋央紀(3・20長岡/新日) |
最優秀タッグ | 後藤洋央紀&YOSHI-HASHI(新日) | 斉藤ブラザーズ(全日) |
殊勲賞 | 高橋ヒロム(新日) | 安齊優馬(全日) |
敢闘賞 | 拳王(ノア) | 清宮海斗(ノア) |
技能賞 | 青柳優馬(全日) | 青木真也(DDT) |
新人賞 | 斉藤ブラザーズ(ジュン&レイ/全日) | ボルチン・オレッグ(新日) |
女子プロレス大賞 | 中野たむ(STARDOM) | Sareee(フリー) |
ほか、2024年は特別賞あり。話題賞としてダンプ松本、ブル中野、岩谷麻優。
賞の意味合いの補足。
殊勲:優れた功績を残した選手
敢闘:期待以上の活躍をした選手
技能:優れた技能を披露した選手
当サイトが事前にTwitter上で実施したファンによる投票アンケートでは、MVPはザック、女子プロレス大賞は岩谷麻優(対抗がSareee)だった。MVPについては、ファンと選考委員メディアが一致。女子については、選考委員メディアはIWGP女子防衛ロード中心の岩谷よりも複数団体を股にかけたSareeeの方が活躍したと判断した。
▼参考:当サイトがTwitter上で実施したファンによる投票アンケート
岩谷麻優“女子初の個人三賞”ならず…敢闘賞1次投票では清宮海斗を上回りトップ得票
当サイトで受賞結果発表後に行ったTwitter上の投票では、2021年度に次いで“妥当”との声が多かった。
東スポプロレス大賞2024結果をどう思った🏆#東スポプロレス大賞 #プロレス大賞 #tospo #カク投票
— KAKUTOLOG📶プロレス/ボクシング/MMA/格闘技カクトウログ (@kakutolog) December 10, 2024
▼ファンによる東スポプロレス大賞の妥当度投票(5年分)
この表から受賞結果と妥当度の相関をみる。妥当度が低い年(2020年・2022年)だけの共通点にお気づきだろうか。実はこの年はMVP・ベストバウト・女子大賞が揃ってブシロード系となっている。
もちろんそれだけが理由とはならないだろうが、どうしてもMVP・ベストバウト・女子大賞が揃ってブシロード系となると「ブシロードに忖度したのでは」というファンの感想が多くなる。ここに他団体・他選手が食い込むことで「プロレス界全体を見渡しての選考が行われた」印象が高まっている。
もっと言うと、“MVP・ベストバウト・女子大賞が揃ってブシロード系”を突き崩したうちの2021年・2023年は、元新日本・武藤敬司(またはグレート・ムタ)の力が大きかった。その点でも、今回のSareeeの受賞は歴史的でもあるのだ。
選考委員を務めた小佐野景浩氏が選考過程をツイートしている。ツイート順がそのまま各賞選考順と思われるため、
MVP→女子プロレス大賞→ベストバウト→タッグ→殊勲賞→敢闘賞→技能賞→新人賞→話題賞
の順で議論が行われたようだ。このうち(岩谷麻優とSareeeの争いが注目された)女子プロレス大賞、(1次得票での順位から変動があった)敢闘賞をピックアップ。
【女子プロレス大賞】Sareee
舞華=3、Sareee=13、里村明衣子=0、岩谷麻優=2、ウナギ・サヤカ=1。マリーゴールド、SEAdLINNNGの2団体王者として活躍し、岩谷のIWGP女子王座に挑戦、自主興行では橋本千紘に勝つ等、団体を超えて活躍したSareeeが初受賞
【敢闘賞】清宮海斗
ドラゴン・ダイヤ=1、辻陽太=2、岩谷麻優=8、内藤哲也=1、清宮海斗=7。岩谷と清宮の決選投票になり、大岩陵平とタッグリーグ優勝、N―1優勝、GHCヘビー級王座3度目の戴冠を果たして現在までV7に成功し、ノアを牽引する清宮が同賞3度目の受賞
※カクトウログ註:このほか「スターダムのIWGP女子王者・岩谷麻優との決選投票を1票差で制しての受賞」報道があるため、決選投票は清宮10・岩谷9だったことになる。
女子プロレス大賞での岩谷は2票で意外なまでの惨敗(舞華にも及ばず)。もちろん個々人の中でSareeeと岩谷が拮抗していた選考委員もいるだろうが、投票としては多くがSareeeに投票した。
その岩谷が、敢闘賞1次投票では清宮海斗を上回りトップ得票だった。例年のプロレス大賞では“MVP級の活躍をしながらMVPを逃した選手には何かの賞を与えるべきでは”との思いが個人三賞の選考過程に影響すると言われる。今年で言えば、それが女子プロレス大賞を逃した岩谷も含まれたのではないだろうか。
決選投票での“逆転”があったのは岩谷ファンからすると悔しいところ。岩谷によるプロレス大賞史上“女子初の個人三賞”獲得はならなかった。ただ、その未遂があったところに岩谷の活躍度、女子大賞争いにとどまらない規模での活躍(IWGP防衛ロードと半生映画公開、選手勢離脱後のスターダムクオリティ牽引)が見てとれるのだ。
それが別枠での岩谷の話題賞にもつながる。2022年にもmeltear(中野たむ&なつぽい)がタッグ選考に食い込んだが、女子大賞・新人賞以外でも当たり前に選考に女子が入って来る時代が来ている。また、このように「語れる」岩谷を女子プロ大賞としての得票で圧勝したSareeeにもまた、とんでもない活躍を感じられた2024年だった。
東スポプロレス大賞「MVP」「女子プロレス大賞」「ベストバウト」推移(2008年~)
新日本プロレス選手の「MVP」獲得は実に14年連続となっている。
通算MVP受賞回数ランキングのトップ3の更新はなし。
1位 アントニオ猪木(6度)
2位 オカダ・カズチカ(5度)
3位 内藤哲也、天龍源一郎、武藤敬司、棚橋弘至(4度)
▼東スポプロレス大賞「MVP」「女子プロレス大賞」「ベストバウト」推移
MVP(カッコ内は女子大賞) | ベストバウト | |
2008年 | 武藤敬司(女子:なし) | 丸藤正道vs.近藤修司 |
2009年 | 棚橋弘至(女子:さくらえみ) | 葛西純vs.伊東竜二 |
2010年 | 杉浦貴(女子:高橋奈苗) | 田口隆祐&プリンス・デヴィットvs.飯伏幸太&ケニー・オメガ |
2011年 | 棚橋弘至(女子:愛川ゆず季) | 小橋建太&武藤敬司vs.矢野通&飯塚高史 |
2012年 | オカダ・カズチカ(女子:愛川ゆず季) | 棚橋弘至vs.オカダ・カズチカ |
2013年 | オカダ・カズチカ(女子:里村明衣子) | 中邑真輔vs.飯伏幸太 |
2014年 | 棚橋弘至(女子:なし) | オカダ・カズチカvs.中邑真輔 |
2015年 | オカダ・カズチカ(女子:紫雷イオ) | 天龍源一郎vs.オカダ・カズチカ |
2016年 | 内藤哲也(女子:紫雷イオ) | オカダ・カズチカvs.丸藤正道 |
2017年 | 内藤哲也(女子:紫雷イオ) | オカダ・カズチカvs.ケニー・オメガ |
2018年 | 棚橋弘至(女子:藤本つかさ) | オカダ・カズチカvs.ケニー・オメガ |
2019年 | オカダ・カズチカ(女子:岩谷麻優) | オカダ・カズチカvs.SANADA |
2020年 | 内藤哲也(女子:ジュリア) | オカダ・カズチカvs.内藤哲也 |
2021年 | 鷹木信悟(女子:林下詩美) | 潮崎豪vs.武藤敬司 |
2022年 | オカダ・カズチカ(女子:朱里) | オカダ・カズチカvs.ウィル・オスプレイ |
2023年 | 内藤哲也(女子:中野たむ) | グレート・ムタvs.中邑真輔 |
2024年 | ザック・セイバーJr.(女子:Sareee) | 辻陽太vs.後藤洋央紀 |