日本プロレスリング連盟(UJPW)が法人化 問われる具体的な取り組み
20日、都内で日本プロレスリング連盟(UJPW)の法人化について記者会見が行われた。既に詳細は新日本プロレスがホームページにて発表しているが、ポイントと思われる点を概観する。
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日本プロレスリング連盟(UJPW) 理念とビジョン、スローガン、当面の活動について
スローガンは「プロレスは常に日本の皆様の背中を押すものでありたい。」
日本プロレスリング連盟(UJPW)が法人化を発表!
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【日本プロレスリング連盟(UJPW)記者会見】
新日本プロレスから海野翔太、真壁刀義!
スターダムから舞華、HANAKOらが出席!「質疑応答」の模様も掲載【1.20会見02】
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日本プロレスリング連盟(UJPW)の記者会見
▼出席者
・代表理事 髙木三四郎(株式会社CyberFight 代表理事)
・業務執行理事 菅林直樹(新日本プロレスリング株式会社 業務執行理事)
・業務執行理事 斎藤了(DRAGONGATE株式会社 業務執行理事)
・業務執行理事 筑前りょう太(NPO法人九州プロレス 業務執行理事)
・理事 岡本保朗(株式会社CyberFight 代表取締役社長)
・理事 武田有弘(株式会社CyberFight 取締役)
・理事 福田剛紀(オールジャパン・プロレスリング株式会社 代表取締役社長)
・理事 登坂栄児(有限会社四ッ葉工芸 代表取締役)
・理事 三島通義 (株式会社ガンプロエンターテインメント 代表取締役社長)
・理事 木谷高明(株式会社ブシロード 代表取締役社長)
・理事 棚橋弘至(新日本プロレスリング株式会社 代表取締役社長)
・理事 松本仁司(新日本プロレスリング株式会社 取締役副社長)
・理事 岡田太郎(株式会社スターダム 代表取締役社長)
・理事 長岡征斗(TMI総合法律事務所 弁護士 コメント代読)※欠席
・監事 山田真哉(芸能文化税理士法人 会長・公認会計士、税理士)
・選手 真壁刀義(新日本プロレス)
・選手 海野翔太 (新日本プロレス)
・選手 清宮海斗(プロレスリング・ノア)
・選手 クリス・ブルックス(DDTプロレス)
・選手 山下実優(東京女子プロレス)
・選手 風城ハル(東京女子プロレス)
・選手 舞華(スターダム)
・選手 HANAKO(スターダム)
・選手 芦野祥太郎(全日本プロレス)
・選手 YAMATO (DRAGONGATE)
・選手 神谷英慶(大日本プロレス)
・選手 大家健(ガンバレ☆プロレス)
・選手 まなせゆうな(ガンバレ☆プロレス)
・司会 阿部誠(新日本プロレス リングアナウンサー)
・司会 難波小百合(東京女子プロレス リングアナウンサー)
概要
2023年12月に設立された日本プロレスリング連盟は、これまで任意団体として被災地を支援する合同興行『ALL TOGETHER』の主催などを行ってきた。今後はプロレス業界全体の発展および、プロレス文化の普及、海外発信という目的をさらに推進するべく、この度、一般社団法人となった。
設立の目的
日本におけるプロレスリングの水準、認知度および社会的信用の向上並びにプロレスリング文化の普及を図ることにより、豊かなスポーツ及びエンターテイメント文化の振興に寄与し、ひいては日本文化の繁栄および国際親善に貢献することを目的とする。
参加団体
(1)正会員
新日本プロレス、全日本プロレス、プロレスリング・ノア、DDTプロレスリング、ガンバレ☆プロレス、大日本プロレス、DRAGONGATE、スターダム、東京女子プロレス、九州プロレス
(2)賛助会員
順次発表
会員資格 ※賛助会員については③および④を満たさなくてもよい。
①継続的に活動している団体(アマチュア団体を除く)を主催または運営していること
②法人格を有すること
③所属契約(選手が正会員の運営または主催する団体に専属的かつ継続的に出場し、その対価として正会員から選手に対し固定の報酬を支払う契約であり、その契約期間が1年以上であるものをいう。ただし、雇用、業務委託などの契約形態は問わない)を書面または電磁的方法により締結している選手を1名以上擁すること
④直近の事業年度におけるプロレス事業による売上が5千万円以上であること
⑤第1号に掲げる団体の設立および活動開始より2年以上経過していること
⑥所属選手・スタッフの人権尊重はもとより、コンプライアンスを重視していること
⑦健全な団体間競争を行いながらも、他の会員との対話と調和を重視し、プロレス界全体の発展を目指すという当法人のビジョンを共有できること
理念とビジョン
1.プロレスのイメージの向上
2.プロレスによる社会貢献
3.日本のプロレス文化を世界に発信
4.プロレス市場の拡大(「10年後には現在の2倍の市場規模」を目標に)
スローガン
プロレスは常に日本の皆様の背中を押すものでありたい。
本連盟の当面の活動について
①官民連携強化
②プロレス団体間での共通課題の解決
筑前りょう太「ライバルかつパートナーというマインドセット」 髙木三四郎「メリットが生まれるかは本当にこれからの課題」
筑前理事が「これだけの各団体さんが集うという機会自体がなかった。集う機会を増やしてそういったもの(ビジネススキーム)を作り上げていくっていう、今日はそのきっかけ」とすれば、髙木理事は「連盟ができることによって、各団体ともにメリットが生まれるという部分に関しては、本当にこれからの課題」とする。まずは理念とビジョンなどの発表にとどまったといったところになる。
=主な発言=
筑前りょう太(NPO法人九州プロレス 業務執行理事)
「『業界の一端を担いたい』という申し出を聞いてくださり、この組織の中に入れていただくことになりました。1954年、日本のプロレス界は幕を開け、昨年2024年でプロレスは70歳を迎えました。まずは本日80周年の時に現状の市場規模を倍にするというビジョンを一つ発表させていただきました。そのライバルという関係が大前提ながらも一部でパートナーとして活動していこうというのがこの連盟になりますので、業界全体にマインドセットしていければと思います。本連盟は新日本プロレス様が支援及び人材を投下し、各社の皆様にご賛同いただくことで法人化に至りましたが、持続的な活動を考えるならば、連盟が財務力を伴う第三者組織になっていく必要性を感じます」
メディアからの質問(具体的に何かしらそのビジネススキームであったり、ライセンスビジネスであったりとか、何かそういうふうに頭にあるものっていうのがあるか)。
「現状としては、まだないというところです。やはりこれだけの各団体さんが集うという機会自体がなかったので、これから実際にこの会見を機にまた、集う機会を増やしてそういったものを作り上げていくっていう、今日はそのきっかけかなというふうに思っております」
登坂栄児(有限会社四ッ葉工芸 代表取締役)
「連盟をやる中で日本に数十、数百と言われていますプロレス団体がある中、出来る限り自分の立場としては反連盟という団体がないよう、仮に非連盟というのがあったとしても、反連盟という団体がないような活動をインディペンデント中心に窓口となっていければと思います」
代表理事 髙木三四郎(株式会社CyberFight 代表理事)
「(合同興行については)今後の可能性自体は否定はしないんですけども、そもそも連盟自体が非営利団体ではあるので、合同興行自体が目的ではないということは、あらためて強調しておきたいというところであります。あくまでプロレス界全体の発展のために横のつながりが重要であるので、興行して利益を得るということが目的ではないということですね」
「(一般的に考えるとそんなに何年もかかるのか)かなり前から話を進めていたんですが、本当にコロナ禍にですね、わりと興行自体が無観客であったりとか、観客動員の半数しか席を作れないとか、いろいろありまして。それでコロナが明けたタイミングで、いろいろと話を協議を重ねて、設立できたというふうになっております。なのでタイミングとしては、このタイミングだったのかなというふうに思ってます」
「(会員については)一部の団体を積極的に排除したいという意図はもちろんございませんし、会員資格を満たしていて、なおかつ理念を同じくできる団体さまから申し込みがあれば、既存団体のコンセンサスを得た上で、参加を認めていきたいとは思っています」
「(コロナ禍において)団体間で横の連携が取れる重要性というのを認識したというところが大きかったです。この連盟ができることによって、各団体ともにメリットが生まれるという部分に関しては、本当にこれからの課題だというふうに認識しております。いま現状では、われわれも先ほどお話もあったとおり、まずそのプロレスの市場規模というのが、どのくらいあるのかということを現状把握するというのが、たぶん一番大事だと思っております。その把握した上で『こういったところを伸ばせばいいんじゃないか』とか『こういうところに注力したほうがいい』というふうなところを、協議を重ねていって、よりよく加盟団体が運営していけるような体制作りを目指しております」
メディアからの質問(医療面や安全面で統一した基準を作ろうとした時に、それについてこれない団体もあるのではないか)
「理想だけを言えば、本当はこういった連盟の方から、何かしらそういう資金を援助するとか、ねん出したりとかっていうことも、将来的には考えなきゃいけないとは思うんですが。まずは、連盟をどういう風に運営していくのか、どういう風に運営資金をやっていくのか、そういう部分に関して協議が必要かなと思います。思いとしては、そういった部分で加盟している団体の選手が安心して取り組めるような環境づくりをしていきたいと思っています」
7団体による衆議院議員会館での要望書提出から実に5年。疑問を残したコロナ期間の歩調から脱却なるか
2020年の7団体による衆議院議員会館での要望書提出から実に5年がかかった。
=主な経緯=
▼2020年4月 馳浩氏(当時、衆議院議員)へプロレス界全体からの要望書を提出
ブシロード木谷高明取締役、新日本プロレス菅林直樹会長、棚橋弘至、ブシロードファイト原田克彦社長、岩谷麻優、全日本プロレス福田剛紀社長、諏訪魔、ノア丸藤正道副社長、DDTプロレスリングHARASHIMA、東京女子プロレス甲田哲也事業部長、坂崎ユカ、ワールド女子プロレス・ディアナ井上京子ら計7団体が衆議院議員会館を訪れる。
馳氏「業界としてコミッショナーがあると対応しやすい。業界の発展のためにも統一されたコミッションがあると我々受けるほうも助かる」
木谷氏「これを機につくったほうがいいなと思いましたね。こういうときに困るなってつくづく思いました。ちょっと音頭取りますよ」
▼2020年11月 格闘技振興議員連盟の設立(議員側)
▼2022年3月 馳氏が石川県知事選挙に初当選。
▼2023年12月 日本プロレスリング連盟設立(プロレス側)
賛同団体(9団体):新日本プロレス、全日本プロレス、プロレスリング・ノア、DDTプロレスリング、ガンバレ☆プロレス、大日本プロレス、DRAGONGATE、スターダム、東京女子プロレス
▼2024年4~5月 GLEAT鈴木裕之社長がメディア等で発信
GLEAT鈴木裕之社長が「(名を連ねていないのは)声がかかっていないからです。僕は(連盟に)大賛成なんですよ。だけどどうやったら加盟できるか、そのための条件があるのかも今のところ、分からない」(東京スポーツ)などの発信。
▼2024年7月 一般社団法人への移行を目指す準備会議
参加:設立時の賛同団体(9団体)に九州プロレスを加えた10団体
オブザーバー参加:ディアナ
法人化完了の際には、代表理事に株式会社CyberFightの髙木三四郎副社長、業務執行理事にNPO法人九州プロレスの筑前りょう太理事長、DRAGONGATE株式会社の斎藤了取締役、及び新日本プロレスリング株式会社の菅林直樹取締役会長が就任する予定について合意。
▼2025年1月 日本プロレスリング連盟が一般社団法人化
正会員:10団体(九州プロレスを含む)。ディアナ、GLEATは発表に含まれず。
今回の会見では髙木理事が「一部の団体を積極的に排除したいという意図はもちろんございません」としたが、一部釈然としないものは残る。公に発信していたGLEATと向き合ったのかどうか。ディアナと“女子プロレスラー撮影問題”で共闘したのは一時的なものだったのか(会見では「コンプライアンス重視、人権尊重」は盛り込まれていた)。今後に説明されていくことだろう。
そして髙木理事が「団体間で横の連携が取れる重要性というのを認識した」とした点。これについては要望書の提出こそあったが、コロナ期間に歩調を合わせる姿勢があったのかについては疑問が残る。特に声出し解禁については複数団体一丸で踏み切るものと考えられたが、2022年12月に新日本プロレスが単独で翌月1・4東京ドーム大会での「一定の条件下での声出し応援全面解禁」を発表したことをファン・関係者は忘れていない。
もちろん日本プロレスリング連盟のスタートは歓迎すべきものだが、疑問からの脱却は具体的な取り組みによってしか行われない。失われたのは表面的には観客数かもしれないが、業界への信頼そのものであるから根深いのだ。