武藤引退が奏でた橋本・三沢・蝶野コール/オカダ清宮に見た史上最大の夜
セミファイナルでは団体頂点王者のオカダ・カズチカ(新日本プロレス)と清宮海斗が対決。メインでは武藤敬司が内藤哲也(新日本)との対戦にて引退した。21日、ノア『chocoZAP presents KEIJI MUTO GRAND FINAL PRO-WRESTLING “LAST” LOVE ~HOLD OUT~』東京ドーム大会を振り返る。
仕掛ける姿勢を見出したファン「清宮、やってしまえ!!」本気の激が飛びかう
<第7試合/SHINING THROUGH>
●清宮海斗
16分32秒 レインメーカー → 片エビ固め
〇オカダ・カズチカ
声出しOK大会だったが、まわり観客の「清宮、やってしまえ!!」という本気の激が印象深かった。1・28横浜アリーナ大会と同様に、清宮の仕掛ける姿勢に期待したということなのだろう。異様な雰囲気でセミファイナル、対抗戦の注目カードは行われた。
清宮のドロップキックはオカダと同様の高さ・跳躍となる。レインメーカーとシャイニングによる攻防は、イケイケ感・ギラギラ感に彩られた。確かにオカダが胸を張った鷹木信悟戦(新日本2・11大阪)も濃密だったが、このオカダvs.清宮には「棚橋弘至vs.オカダ」の継承さえ感じた。たどると「中邑真輔vs.棚橋弘至」から新日本のラリープロレスは確立されていく。そこに清宮が加わったのではないか。
史上最大の清宮がここにあったと思うし、それを畳みかけで葬ったオカダにも史上最大の叩き潰しを感じた。試合を見ていないファンから「やはり格が違う」などと言われてしまうと複雑なのだ。結果を切り取ればそうなのだろうが、大会での感じ方は単純なものじゃない。
もちろんオカダの試合コントロールには改めて震えたが、清宮も地に足をつけた闘い方でオカダと渡り合う。土壇場での清宮によるシャイニングでのレインメーカー返しにはドーム大爆発。今回は清宮がオカダを欲したわけだが、どこかでオカダは清宮を欲しているのではないか。
みんなのプロレスはどうだった!? 2・21ドームは、自身の目と心で得たことが答えである。
昨年9月会見段階から「(蝶野・橋本・三沢)その人たちの分も背負ってできたら」
<第8試合/PRO-WRESTLING “LAST” LOVE>
〇内藤哲也
28分58秒 デスティーノ → 片エビ固め
●武藤敬司
<特別試合/シングルマッチ>
〇蝶野正洋
1分37秒 STF
●武藤敬司
※特別レフェリー:タイガー服部
実は2022年9月の会見段階から武藤は「蝶野だって、橋本(真也)も引退試合してない。NOAHの創業者である三沢(光晴)社長も。もしかしたら、その人たちの分も背負ってできたらな、なんて思います」と口にしていた。対戦相手選びの振り返りでは「昔の思い出を振り返るような対戦相手を望む声も上がってたんだよ。ただやっぱり、最後の最後までレスラーである以上、あくまで“現代”、“今”を追求したかったんだよね」(WEBザテレビジョン 2/17)としたが、方向性はずっと前からあった。
集客とバトン渡しと区切り。そのクロスがどこにあるかを考えに考え抜いた結論が、内藤を相手にした引退(発表翌日だけで5000枚のチケットが売れたとされる)そして蝶野正洋ボーナストラック戦だったのだろう。それでいてバックステージでの「うーん、もしこのあとプロレスビジネスが落ちたらあいつ(内藤)のせいだよ。そういうのを観察しておきますよ」というコメントも奥深い。
武藤は橋本の袈裟斬りチョップを繰り出す。さらに丁寧に“天国へのLOVEポーズ”を重ねる。LOVEポーズがなくとも伝わる観客多数でハシモトコール大爆発だったが、丁寧に丁寧に観客に伝えていくのが武藤スタイルだ。こういった“伝える”ことへの全力の積み重ねで平成を代表するプロレスラーに駆け上がったんだなと確信したシーン。この発想はストロングスタイルの系譜にはないのだが、強さにパフォーマンスを両立させる点が武藤の偉大な先駆者たるところだ。
つづく三沢ムーブではミサワコールも大爆発。武藤が解説席の蝶野を挑発するとチョーノコール。こうしたコールで即座に対応できたシーンが、90年代プロレスファンを大量動員できていたことを実感させもした。武藤引退は橋本・三沢・蝶野コールを奏でてみせた。
独特過ぎるノアの舵取り。「団体ありき」よりも「プロレスありき」で突き進む
拳王が大会直後に生配信していたのだが、その内容が興味深かった。「(清宮の)この結果は何をやっているんだ」と噛みつきつつ、「頑張ったのを超えるところは見れた」とも評した。さらにはAMAKUSAvs.高橋ヒロム、武藤引退試合はモニターではなく「これだけはね」と会場内で見ていたことも告白する。
拳王は「プロレスってめちゃくちゃいいもんだよね」とも。大会アウトラインにせよ、拳王の思考にせよ、ノアは「団体ありき」よりも「プロレスありき」という独特の方向性で突き進んでいる感がある。
これはプロレス界にとって新しいアプローチであり、「パイが広がれば見えてくるものがあるだろう」という思い切り・割り切りさえ感じる。欲が“ない”ようで“ある”というか。どう着地するかは神のみぞ知るところだが、楽しすぎた史上最大の夜に“続き”を期待せずにはいられない。
(大会結果)ノア chocoZAP presents KEIJI MUTO GRAND FINAL PRO-WRESTLING “LAST” LOVE ~HOLD OUT~ 2月21日(火)東京ドーム
■ ノア chocoZAP presents KEIJI MUTO GRAND FINAL PRO-WRESTLING “LAST” LOVE ~HOLD OUT~
日時:2月21日(火)17:00 ※STARTING BATTLEは16:00開始
場所:東京・東京ドーム 観衆30096人(主催者発表)
[大会ベストバウト投票は2月27日(月)24時まで受付]
<STARTING BATTLE(1)/STARTING LOVE>
●矢野安崇
稲村愛輝
7分21秒 サイト―スープレックス → 体固め
稲葉大樹
〇マサ北宮
<STARTING BATTLE(2)/東京女子プロレス提供試合 TJPW Spark>
●荒井優希
渡辺未詩
伊藤麻希
瑞希
11分38秒 魔法少女にわとり野郎 → 片エビ固め
辰巳リカ
中島翔子
山下美優
〇坂崎ユカ
<STARTING BATTLE(3)/WORLD WARRIOR BATTLE>
アンソニー・グリーン
ジャック・モリス
〇ジェイク・リー
7分14秒 串刺しフロントハイキック → 片エビ固め
●ティモシー・サッチャー
小島聡
杉浦貴
<第1試合/NEW EXPLOSION>
●宮脇純太
アレハンドロ
吉岡世起
YO-HEY
小峠篤司
6分23秒 レッグ・キャプチャー・チキンウイング・コンビネーション
ダガ
〇クリス・リッジウェイ
HAYATA
Eita
小川良成
<第2試合/DDT提供試合 Dramatic Dream Future>
●正田壮史
高鹿佑也
岡谷英樹
遠藤哲哉
9分06秒 WR → エビ固め
小島斗偉
〇上野勇希
勝俣瞬馬
MAO
<第3試合/DRAGONGATE vs NOAH>
ニンジャ・マック
〇イホ・デ・ドクトル・ワグナーJr.
丸藤正道
11分20秒 ムーンサルトプレス → 片エビ固め
ディアマンテ
●KAI
シュン・スカイウォーカー
<第4試合/AJPWvsNOAH>
征矢学
中嶋勝彦
〇拳王
15分37秒 P.F.S → 片エビ固め
●青柳優馬
諏訪魔
宮原健斗
<第5試合/FINAL DE LUCHA>
〇石森太二
外道
4分43秒 ブラディークロス → 体固め
MAZADA
●NOSAWA論外
<第6試合/TOKYO TORNADO>
●AMAKUSA
11分02秒 TIME BOMBⅡ → 体固め
〇高橋ヒロム
<第7試合/SHINING THROUGH>
●清宮海斗
16分32秒 レインメーカー → 片エビ固め
〇オカダ・カズチカ
<第8試合/PRO-WRESTLING “LAST” LOVE>
〇内藤哲也
28分58秒 デスティーノ → 片エビ固め
●武藤敬司
<特別試合/シングルマッチ>
〇蝶野正洋
1分37秒 STF
●武藤敬司
※特別レフェリー:タイガー服部