プロボクサーの長い道のり(プロテスト合格から世界まで)
今回はプロボクサーの道のりについて書いてみたいと思います。
プロボクサーのライセンス
プロボクサーを目指す人の大半は、ボクシングジムで練習をかさねボクサーとしての最低限の体力や技術を身につけます。その後はジムの会長の判断によりプロテストを受けることになり、めでたくプロテストに合格するとプロライセンスが発行されます。
ボクシングのプロテストの合格率は年々上がっています。これは総合格闘技やK1など、他競技の人気により、ボクシングの受験者数じたいが減っているのが原因と考えられます。ちなみに 2018年(男子)のプロテストは349名の受験者数にたいして78%の合格率 でした。つまり、10人受けて約8人が受かる計算です。
2018年プロテスト結果(合格率)
受験者 | 合格者 | 合格率 |
---|---|---|
349名 | 273名 | 78% |
プロライセンスの種類
合格率78%(女子の合格率はもっと高い)ですから、プロボクサーまでの道のりは遠くはありません。しかし、ボクシングの世界はここからが長いのです。
プロライセンスにはC~A級ライセンスと言うものがあります。基本的にC級(4回戦)からスタートになり、勝ち進むことでB級、A級の昇格を目指していきます。
プロライセンスの昇格条件
C級(4回戦)→B級(6回戦)→A級(8回戦)
B級に昇格するためには、C級で4勝(引分は0.5勝)、A級に昇格するためには、B級で2勝(引分は0.5勝)が条件になります。つまり、C級からA級にあがるために6勝が必要となるのです。
但し、アマなどで実績を考慮される選手の場合は、B級からスタートする場合もあります。例えば、高校生時代アマチュア7冠の井上尚弥選手のプロテストはB級スタート。注目度が非常に高かったため、一般客が観覧できる異例の公開スパーリングでした。
スパーリングの相手は、当時の日本ライトフライ級王者・黒田雅之選手(川崎新田)でしたが、まだアマの井上尚弥が現役の日本王者を圧倒します。※黒田雅之は2019.5.13(後楽園ホール)2度目の世界挑戦
世界までの道のり
A級で勝利→10回戦(日本ランキング)→日本王者挑戦→日本王者→世界ランカー→世界王者挑戦
※この他にアジアを統括する東洋太平洋(OPBF)王者がある
どこに壁があるのか?
井上尚弥選手のような化物は例外として、C級スタートのボクサーは、4回戦のまま現役を終える選手もたくさんいます。そして、順調に昇格できたとしてもA級→10回戦に大きな壁があると言われています。
そして、ここからは壁の連続です。10回戦にあがれたとしても、日本タイトル獲得にはまた大きな壁があります。語弊が無いよう追記しておきますが、個々により壁の高さは違います。ここに記載しているのは、あくまで一般的に言われることです。
日本王者も遠い
先日、元プロボクサー10人(元日本王者3人、他元日本ランカーとA級ボクサー)と飲む機会がありました。この時、一人だけ現役のA級ボクサー(20歳)も来たのですが、あるトレーナーが「お前、日本チャンピオン位ならなれると思うだろ?」、「でも、これがなれねーんだよ!」と力説していたのが印象的でした。
地上波TV(ゴールデンタイム)は、ボクシングの世界戦を中心に放映しています。だから、観る側にとっては、世界戦を見慣れているわけですが、現実には、日本タイトルの挑戦権(特に日本人の多い軽量級)ですら、とてつもなく遠いのです。
例えば、現日本フライ級王者の中谷 潤人選手(MTジム)の日本タイトルは18戦目。そこまでの戦績は17戦17勝(12KO)。獲得タイトルは東日本新人王(MVP)、全日本新人王、初代日本フライ級ユース王者。無敗でこんな優秀な成績を残していても、タイトル挑戦までは18戦かかっています。※全日本新人王を獲得すると日本ランキング入りできます
そして、世界挑戦
もう、ここまで来れる選手は、実力以外にも試合の勝ち方、運、ジムのプロモーション力もないと厳しいと言われています。
ボクシングの世界は実力主義ですが、 勝ち続けてもタイトルに挑戦できないこともある不条理な世界でもある
・・・ここについてはまた次回にでも。