ブシロードが上場後初の株主総会、新日本プロレス関連質問も多数 メイ社長「好きな仕事に携われると不思議なパワーがわく」
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7月29日に東京証券取引所マザーズで上場したブシロード(新日本プロレス親会社でもある)が25日、上場後初めての株主総会を行った。当記事では木谷高明氏、ハロルド・ジョージ・メイ氏いずれについても新日本からみた肩書「木谷オーナー」「メイ社長」で記しておきます。
“プロレス会社の上場”というと、かねてから「カミングアウトらしきものが日本でも求められる」説があった。2016年の木谷オーナーへのインタビュー記事より。
・ 新日本プロレスはなぜ一部上場を目指すのか スポーツ 東洋経済オンライン 経済ニュースの新基準
現在、プロレスというジャンルにおいて世界ナンバー1の企業であるWWE。そのWWEが、1999年、ニューヨーク証券取引所(現)に上場した時、ディスクロージャー(情報公開)の一環として「プロレスはシナリオのあるエンターテインメントである」ことを公表した。これと同様のカミングアウトらしきものが日本でも求められるだろうか。
「日本ではいらないと思います。たとえば株主総会で質問が出る可能性はあるかもしれない。それに関しては『ではあなた、ゲーム会社にプログラム・ソースを出せと言うのですか?』という風に言い返せばいい。ゲーム会社にはそう言えないはずです。だから『そこは企業秘密です』ということでクリア出来る気がしますね。
むしろ株主総会まで来ているほどの株主ならば、『何ヤボなこと言ってるんだ?』という雰囲気になるんじゃないでしょうか(笑)。それよりどうしてあの選手がトップにならないのか、なんていうファン株主の声が聞こえてくるかもしれませんね」
新日本プロレス自体が上場を目指していた際の見解。株主総会の様子はこのあとに紹介だが、実際にはカミングアウトに類するやりとりはなし。ネット上での木谷オーナーの先制が奏功した!?
スズキオンラインさんによる株主総会2019レポートより。新日本プロレス関連質問を中心に抜粋。
・ ブシロード株主総会2019レポ|木谷高明取締役「新規IPは最初からアプリやアニメなどすべてやるつもりで仕掛けている。負けたら死ぬ覚悟でやらないと立ち上がらない」 – スズキオンライン
Q 新日本プロレスのレスラーがWWEなどに引き抜かれることの対策をどうしてるか。新日本プロレスリング社長のメイさんに聞きたい
メイ:自由競争なので、引き抜きの可能性はもちろんある。いろんな対策はとっている
新日本プロレスのリングこそが世界一」と自負しており、選手もそこに上がって戦えるすごさを感じているはず。WWEの元スターも上がっている。それを選手に訴えかけることが一番大事。
また、投資でもあるが、選手契約を長期化することで引き抜かれる可能性をおさえている
選手と会社のコミュニケーションを増やすことも大事。いち早く選手の希望や悩み、要望が、経営の耳に届くようにすることが、引き抜かれるリスクをおさえることにつながる。四半期会議や年度方針会議にも選手を呼んでいる。常に選手と会話して、引き抜かれないようにしている
Q 規模が違うのに元タカラトミー社長のメイさんを新日本プロレスリング社長へと引き抜いたことに驚いている。どういう経緯で引き抜いたのか。メイさん自体の引き抜き対策はしているのか
橋本:メイの選任にあたっては木谷が深く関与している
木谷:メイさんとはタカラトミー時代から何回もお会いしていて、食事した時に「プロレスがすごく好きだ」と聞いていた。会う前からマネくまというプロレスのぬいぐるみを作っていて、「プロレスファンだな」と最初から親近感があった。話すと、どこまでプロレスファンか分かるので
そういう親交をかわさせていただいたが、ある日突然、タカラトミー社長を退任するというニュースを見て、すぐに電話した。新社長紹介PVでも紹介したように、若干創作も入っているがほぼ事実
しばらくして「やってもいいです」とお返事をいただいて、昨年からブシロード取締役と新日本プロレスリング社長を務めてもらっている。継続雇用については詳しくお話しできないが、実績に見合った、これからの期待値に見合ったものを提案させていただく
新日本プロレスの成長を継続してほしい。メイさんは6カ国語を話せるので、国際展開でも力を借りれると考えている。可能な限り、居ていただきたい。メイさんは負けず嫌いだと思うので、ある程度、新日本プロレスが世界で輝くまでは自ら退くことはないのでは
メイ:今の話の通り。本当にプロレスが好き。サラリーマンとして好きな仕事に携われると不思議なパワーがわいてきて、ちょっとやそっとではへこたれなくなる。ビジネスマンとしても新日本プロレスの可能性を信じていて、何とか貢献したい
プロレスは世界に通じるスポーツコンテンツだと信じている。会社がある一定以上の大きさになろうとすると、マクロ的な視点とか多言語とか、相手と同じ土俵で交渉するスキルが必要になってくるので、そこで貢献できると思った
マクロ的にみると、日本のGDPは世界3位だが全体の6%でしかない。日本市場で新日本プロレスは1位だが、94%の市場が残っている。独特のビジネスをやっているので、残りの94%に持っていける
世の中的にも、モノからコトにシフトしている。今までモノを作っていたが、これからはコト体験が大事。モノ作りから得た経験が役立つと思って、毎日励んでいる。非常に楽しんでいるので、これからもよろしくお願いします
Q 先日、新日本プロレスが米国に新会社を設立した。「国内を軽視するのでは」という声もある。「海外展開し、お互い高め合うことで国内にもメリットがある」と発表していたがピンと来ない。国内ファンは具体的にどういうメリットを享受できるのか
メイ:我々は決してそういう風(国内軽視)に思ってないし、そういうことがないようにスケジュールを組んでいる。年間157試合のうち海外は7試合。選手の移動日程も考えてスケジュールを組んでいる。日本でもいろんな場所で開催している
日本を軽視していないし、今後も軽視しない。同時に海外では、まだまだ大きな市場がある。日本は人口減&高齢化で、数十年先を考えるとファン層の基盤が衰退する危険性がある。海外にいって新しいファンを取り入れる必要がある
作戦としては入り口を増やす。テレビ放映したり、SNSで好きになるキッカケを作る。生で見てもらわないと、長期のファンは獲得できない。海外の試合数は限られるので、映像配信などにIPビジネスを載せていく
Q 海外展開することで、海外団体との提携関係は変化するのか
メイ:もちろんどの業界も明日は分からない。今の段階では米国のROH、メキシコのCMLL、英国のRPWとの提携関係は継続しつつも、他団体との関係もオープンに、フレキシブルに考えていきたい
Q 来年1月4、5日に東京ドーム大会があるが、それ以降の展開は。東京オリンピックとG1 CLIMAXとかぶってしまうが、どうするのか
メイ:日本がスポーツの中心となる1年だと思うので、東京ドーム大会を2日連続で行い、新日本プロレスもスポーツ団体のひとつだと発信していきたい
夏は東京中心とした会場はおさえられないが、オリンピック&パラリンピックは数週間と限定的。知った上でスケジュールを組んでいるので、最小限の影響でとどまるようにしている。G1 CLIMAXはもちろんやるが、具体的な発表は後日
木谷:僕も石川県金沢市と地方出身なので、地方の人の気持ちが分かる。2カ月前くらいの『週刊プロレス』で「これからの重点は地方と米国」と言った。いろんなライブイベントが採算性を考えて、地方開催を減らしている
プロレスは町から町へという独自の巡業システムで、地方に行くことによる採算性が他より良い。鹿児島でも4000人以上動員できた。これからは自治体や地方新聞と組み、「プロレスが来てくれた」と盛り上げ、政令都市でない地方でも1万人以上を動員したいというのが夢
米国のマディソン・スクエア・ガーデンを満員にしたいというのも海外の夢としてある。東京発のエンタテインメントが地方に行かなくなっている中、プロレスはあえて行くべきかなと。よりクオリティの高いもの、地元に密着したものを、と
オリンピックの関係で、会場によっては5月から使えないが、新日本プロレスや音楽ライブ、カードゲーム大会などの場所の問題は解決済み。心配しないでほしい。交通や宿泊の問題はあるが、これから対処していきたい
(中略)
木谷:2014年ごろ、シンガポールに行ったあたりから「上場すべきだろう」と考え始めた。エンタメ環境の変化や、業界も煮詰まったことがあって、「デカくなるしかない」という結論に至った。それなら「上場して、成長を目指します」とオープンにした方がいいと
結論としては「成長するしかこの業界では生き残れない、勝ち残れない。成長すれば新しい作品を出したり、磨いたりできる」、そう考えて上場した。上場したからには成長を目指す
(中略)
木谷:中国と米国を重点地域としているが、英語圏と中国語圏という意味。新日本プロレスの東京ドーム大会は3万8000人来場したが、6000人が海外。米国人と同じくらい英国人も来た。世界中がネットでつながっていて、日本からアニメを発信できるので、エンタメは地続きになっている
(中略)
棚橋:東京ドームイベントは何回も出たが、人生で初の株主総会。棚橋が株主総会に出るという事実こそが新日本プロレスが上がってきた証だと思っている。2012年からブシロードグループに入って、一般層に大きくアピールできて、2012年以降、右肩上がりに来れている
海外の試合も増えていて、新日本プロレスワールドの加入者の4割が海外。私の英語力も飛躍的に上がってきている。まさか自分が株主総会の場で話をするとは思っていませんでした。2006年に初めてIWGPチャンピオンになった時は、大きな体育館でもお客さんが200~300人
一番少なかったときは138人、選手やスタッフの方が多かった。そういう時でも良いものを見せようと努力してきて、今、プロレスが市民権を得ている。いろんな企業さんにも好きな方がいて、プロレスに絡めた企画が通りやすくなっているのではないか
新日本プロレスの選手を起用した仕事がこれからも広がっていく気がします。うれしいですね。ありがとうございます。新日本プロレスとしては1月4、5日と東京ドーム2連戦があるので、しっかり成功させてブシロードグループを飛躍させられるようにしたい
会場のみなさん、愛してまーす!
米国への新会社設立に関連して、メイ社長が「国内軽視」という声への回答を行っている。国内軽視を改めて否定しつつ海外市場の可能性に言及した。「テレビ放映したり、SNSで好きになるキッカケを作る。生で見てもらわないと、長期のファンは獲得できない」と観戦の重要性を強調する言い回しも。「(ROH・CMLL・RPW以外の)他団体との関係もオープンに、フレキシブルに」とのコメントもあったが、どういう団体を視野にしているかは明かされなかった。
木谷オーナーもこの件に触れ、週刊プロレス誌での見方「これからの重点は地方と米国」を再紹介している。この「地方と米国」という見方はまだまだオーナーレベルにとどまっている感があるが、プロモーションがハマってある程度の集客があった際の採算性のよさという見解は興味深い。
業界を越えた大物経営者であるメイ社長の「サラリーマンとして好きな仕事に携われると不思議なパワーがわいてきて、ちょっとやそっとではへこたれなくなる」といった前向きなコメントが嬉しい。木谷オーナーの「成長するしかこの業界では生き残れない。上場したからには成長を目指す」という言葉も力強く、今後への期待感が高まる株主総会となった。
そして、ここまでこぎつける上昇カーブへの貢献者といえば棚橋弘至ということになる。最後に登壇した棚橋が「2006年に初めてIWGPチャンピオンになった時は、大きな体育館でもお客さんが200~300人。一番少なかったときは138人」と振り返った。ボクらもウルッとくるし、貢献できているかどうかはわからないけれども、ずっと足を運んでいるファン視点からも発信を続けていきたいと思うのだ。