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闘魂同行記

叶わなかった北村克哉「INOKI ISM」大会参戦 猪木と新日本の雪解け/中

闘魂同行記

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 2017年6月から2022年7月までの5年間にアントニオ猪木マネージャーを務めた甘井もとゆき氏がツイッター(@motoyukiamai)で猪木関連秘話を公開している。ファン注目の話題に切り込んでおり、追悼の気持ちを込めつつ複数回にわたって「闘魂同行記」としてご紹介していく(引用による記事作成は甘井氏にもご許可いただいております)。

 2017年時点で根強い猪木アレルギーが残っていた新日本プロレス。いかにして“回帰”が実現したかを全3回で取り上げる。
プロレス総選挙が生んだオカダとの初対面 猪木と新日本の雪解け/前
中 叶わなかった北村克哉「INOKI ISM」大会参戦 猪木と新日本の雪解け/中
「猪木」発言のオカダと甘井氏がこじ開けた 猪木と新日本の雪解け/後

2017年にセッティングされた木谷高明オーナーと猪木会長の対面

もう時効かと思いますので書きます。
2017年の中頃、新日本プロレスが軟化して来たと思った私は、人を介して木谷高明オーナーと猪木会長の対面をセッテイングしました。じっくり話すのは初めてとの事ですが、お二方はフランクに話されておりました。私はズバリ木谷オーナーにお願いしました。

INOKI ISM大会に新日本プロレスからの選手を出場させて欲しいと。木谷さんはちょっと考え、ある選手の名を口にしました。この選手なら格闘色の強い猪木さんのリングに合う、いや、猪木さんのリングだからその輝けるのではないか? その選手の名は「北村克哉」でした。

だから猪木会長葬儀の直後、北村克哉選手の急死を知ったとき、私は誰よりも驚きました。
北村選手の出場は、一度、木谷オーナーが持ち帰り、新日本プロレスの役員会に掛けて返事をするとの事でした。私は大いに期待しましたが、私の予想に反して未だ新日本のフロントの大部分には猪木アレルギーがあり、この提案は否決され、木谷オーナーからは、こちらが恐縮する位に丁寧に謝して頂きました。

アントニオ猪木会長も、北村克哉選手も亡くなった今、この事を知っている私が書くのは今しかないと思い、書きました。

今でももし2017年の猪木会長のリングに北村選手が上がっていたら、いったいどうなっていたのかな、と想像してしまいます。

回帰ムードの一方で、木谷オーナーが調整しても前に進まない猪木アレルギー

 ここからはカクトウログによる補足。

 アントニオ猪木の逝去から約2週間後に北村は若くして永眠した。

 近い命日となってしまったが、猪木と北村が(実現はしなかったが)接近する可能性もあったというのだから興味深い。上がっていれば「INOKI ISM」が活性化した可能性は十分であるが、新日本サイドとしてはそれが嫌だったのだろう。

 前後して2017年6月13日に猪木とオカダ・カズチカが初対面となる食事会。2017年7月28日のカール・ゴッチ法要がテレビ朝日で放映。回帰ムードが見られる一方で、木谷オーナーが調整しても前に進まない猪木アレルギーは確かに新日本にあったのだ。(「猪木と新日本の雪解け/後」へと続く)

《猪木と新日本プロレスの関係》

 国会議員としての最初の任期を1995年で終えた猪木は、1996年に「世界格闘技連合」を発足させる。1998年4月には「U.F.O.(世界格闘技連盟)」へ名称を変更。自身はレスラー生活を引退した。

 このU.F.O.を母体としながら、猪木は新日本プロレスとの対抗戦などを行う。いわゆる猪木の介入(U.F.O.陣営には小川直也らが入る)となったが、プロレスと総合格闘技が枝分かれした時代ではファンの反応が芳しくなく、むしろ路線混迷が信頼失墜につながってしまう。1990年代後半の新日本はnWo JAPANが一大ムーブメントを起こしていた時期でもあり、坂口征二・長州力体制との対立がエスカレートした。

 1999年1月4日には新日本東京ドーム大会で橋本真也と小川直也が無効試合(橋本が実質敗戦)。2001年にはG1覇者・永田裕志が大晦日「INOKI BOM-BA-YE」でミルコ・クロコップにKO負け。2002年には新日本を退団した武藤敬司、小島聡、ケンドー・カシンが全日本に移籍。2000年代は暗黒時代とされ、2005年1月4日の東京ドーム大会では「アルティメット・ロワイヤル(総合格闘技のバトルロイヤル)」が開催され混迷を極める。

 業績悪化もあり2005年、猪木は自身の持つ新日本株をユークスに売却する。事実上、新日本の経営から身を引いた。

 2007年、新日本プロレス道場にあった猪木パネルが外された。これは棚橋弘至が外したともされたが、実際には他の選手が外したという話もある。一方、2019年の台風直撃後の道場清掃の際に猪木パネルが廃棄されそうになるが、棚橋が清掃局まで足を運んで救出するというトピックスがあった。

 2020年1月の獣神サンダー・ライガー引退セレモニーにてアントニオ猪木がVTR挨拶で登場。“約14年ぶりの新日本登場”とされた。同年7月にはスポーツ誌「Number」にてオカダ・カズチカとの対談が実現している。

 新日本50周年イヤーとなった2022年1月4日には、猪木がビジョンで挨拶。10月1日に猪木は永眠。新日本プロレスは永眠後、猪木が終身名誉会長9月就任を承諾していたことを発表した。

 なお、当時の状況を蝶野正洋は次のように証言している。

 新日本は2日間でプロレス史上最多記録の34万人を動員した北朝鮮大会があった95年が最も観客動員が多く、そこから4大ドームツアーなどを行っていた02年ぐらいまでが絶頂期だったと言える。だけど、内部では次第に不協和音が大きくなっていた。

 当初は現場監督の長州力さんが進めたUWFインターナショナルとの対抗戦などの国内路線、マサ斎藤さんによるアメリカのWCW路線、実質的オーナーだったアントニオ猪木さんによる北朝鮮などのアジア路線が、それぞれきれいな形で進んでいた。ドームツアーも当たり前でカードが余るぐらい。だけど、各路線が競争する中、だんだんと猪木さんは中心にいないと気が済まなくなってしまった。

 長州さん、マサさんらが、もう猪木さんが中心じゃないですよ、自分らでできますよとなって、猪木さんは、お前らふざけるなよと。そういうのが積み重なって、カードをつぶし合うような悪い流れになってしまった。そこに手を伸ばしてきたのがK-1やPRIDEなどの格闘技。アントニオ猪木を上手にアントニオ猪木として扱い、外部から新日本を切り崩してきた。

 新日本の選手は猪木さんによって相手のリングに上げられ、ダメージを受けた。第三世代と言われる自分ら闘魂三銃士の下の世代にはいい選手がそろっていたけども、猪木さんに声をかけられて、三銃士ならブロックできても、若い彼らは自分で判断できなかった。永田選手なんて、1日か2日前かに出ろと言われて出て、負けてしまった(01年12月31日・INOKI BOM-BA-YEでのミルコ・クロコップ戦)。そんなむちゃくちゃな交渉が会社で行われていたから、内部に不信感が募っていったんだ。

 そして、武藤さんと長州さんが02年に離脱。翌年5月の東京ドーム大会は、ここで新日本が飛んでしまうんじゃないかというピンチだったけども、ノアとの提携などで5万人ぐらい動員することができた。新日本の選手・フロントは離脱に次ぐ離脱で手薄の状態だったけども、長年ドーム大会で培ったいろいろな相手と絡んで何かを作り上げていく手法があったから、その後も何とか延命できていた感じだった。
(2019.03.25 “新日本暗黒時代”は何が原因だったのか/蝶野コラム/リング/デイリースポーツ online)


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