本当の自分の強さに気づくために 王座戦ではなく「私闘」いや「死闘」
必勝を期して決意に溢れた表情のなつぽい。
中野のセコンドとしてウナギ・白川・月山が備える。
中野たむがガウンを羽織って後楽園に現れた。
セコンドにロープを開けられ入場した中野は、、、
いきなりなつぽいと視殺戦。このあと乱闘寸前となりセコンドに分けられる。
中野は6・26名古屋で新調したコスチュームで戦闘体制。
なつぽいが中野を場外に出し、コーナーからダイビングボディアタックで先制。
場外でお互いを投げ合った両者だが、そのあと場外マットを剥がす。中野の投げにウナギ「ヤバッ!!」リアクション。乾いた音が場内に響いた。
中野はさらに絞首刑スリーパー、エプロンでのバイオレットシューティングで攻勢。
再びの場外戦では、なつぽいがエプロンからフェアリアルギフト。表情で白川「痛ッ!!」。
中野がバイオレットシューティングから、、、
なんと掟破りの逆フェアリアルギフトを中野が発射する。
中野の得意ムーヴ、顔面蹴飛ばしも特別な感情がまじって放たれていった。
するとなつぽいが覚醒するように中野に蹴りを入れて、、、
フェアリアルギフトを途中でカウントに入ることなくなんと5連発。
中野がスピンキックから、、、
独特の高さのあるタイガースープレックス。
なつぽいがジャーマン、タイガーなどで返す。泣きそうなくらいの悲壮な勝利への執念を感じさせると、、、
月山も泣きそうな表情に。
20分経過。なつぽいは一線を越えて・・・コーナーからなんとニードロップ式フェアリアルギフト。
続けてフェアリーストレインを放つと、中野は3カウントを喫した。
両者のセコンドが入り、異常がないかを念のため確認。
2人の世界が再開する。
なつぽい「勝ったぁ…、勝ったぁぁぁ…。(仰向けになったままの中野を見ながら)たむちゃん、眉毛ないよ? たむちゃんってやっぱり凄いね」
中野「えっ?」
なつぽい「たむちゃんって、やっぱり凄いね」
中野「気持ちワルッ。ねぇ、なっちゃん。たむはさ、引退なんか絶対しないし、なっちゃんのことも絶対、引退なんかさせないから」
握手を求める中野を張って拒否したなつぽい「私は今日1回勝ったくらいで、たむちゃんを越えたなんて思ってないよ。これで、今日で1勝1敗。次は7・9立川、ユニット対抗戦で最終決着しよ。今度は私がたむちゃんに引導わたしてやるよ」
中野「そっちがその気なら、COSMIC ANGELSは、この手で徹底的にアンタを叩きのめしてやるから、覚悟しとけ…」
セコンドに肩を借りて引き揚げる中野。いざコズエンとして7・9立川へ。
なつぽいはドンナデルモンドに勝利を祝福された。
天使の表情とはこのことを言うのだ。
なつぽい「やっと勝てました(涙)。私のプロレスラー人生、中野たむに出会えてよかった。でも、こんな最高なストーリー、終わらせるつもりないから。7・9、ユニットととしてもたむちゃんに勝ちます。引導、渡してやるよ(笑顔)。なつぽい、次のステージへ突っ走ります。ありがとうございました」
中野「たむはなっちゃんのことをホントになんでもわかってると思ってた。性格悪いとこ、口悪いの、不器用なとこ、八方美人なとこ。でも今日、こんな強いなっちゃんをたむは知らなかった。みんなね、本当の自分の強さに気づいてないと思うんです。その強さのリミッターを解除するのは人それぞれで、それがたむにとってはジュリアだったし、なっちゃんにとっては、そのリミッターを解除するのはたむしかいないと思ってました。なっちゃんはたむじゃなきゃダメでしょ。まあ今日はこれで1勝1敗。次、7・9立川で完全決着。もうこれで本当に終わりにしよう」
中野たむとなつぽいという主力同士のシングルでありながらノンタイトル2連戦。2日前の名古屋大会に続いてとんでもない「私闘」であり「死闘」となった。この2人には関係性もあるし、王座戦での積み重ねもある。今回もまた会見やSNSでおおいにやりあった。お互いの人生をかけた果たし合い。
いやはやとんでもない企画である。確かに岩谷、ジュリア、中野、林下という顔ぶれは王座戦でなくともメイン級を感じさせるわけだが、実際に「中野vs.なつぽい」を名古屋の目玉と後楽園のメインにしたのだ。動員としても結果を出し、内容がまたとんでもなかった。
2人の勝利というだけではない。常識破りのスターダムのストーリーがファンを動かした。いやタイトルマッチをもっと名古屋でやるべしと思ったファンもいたかもなのだが、乱発しては価値がなくなる。ビッグマッチのフォーマットを自ら崩し、関連興行を後楽園でもぶっ放す。これぞスターダムである。
メイン後の中野ののコメントを紹介したツイートには多くのいいねをいただいた。
破れるもコメントを出した中野。
「みんなね、本当の自分の強さに気づいてないんですよ。リミッターの解除方法は人それぞれ。私にとってジュリアで、なっちゃんにはたむしかいない。今日はこれで1勝1敗」#中野たむ #なつぽい #stardom pic.twitter.com/Glk2sipVBO
— KAKUTOLOG📶プロレス/ボクシング/MMA/格闘技カクトウログ (@kakutolog) June 28, 2022
いつから中野は闘いの語り部になったのか。「みんなね、本当の自分の強さに気づいてない」「リミッターの解除」というアプローチは独特だ。だがボクは別のことを考えていた。かつて前田日明がよく「感情の針をレッドゾーンの向こう側に振る」という比喩をつかっていた。どうして中野は、そんな表現ができるのか。
ファンを揺さぶるプロレスを言語化する中野の恐ろしさ。敗れてもなお価値が上がった中野に、またしてもわれわれは魔法をかけられてしまうのである。