生き方は「人から教わる問題じゃなくて」 アントニオ猪木がNHKに降臨
6日、NHK音楽特番「ライブ・エール」夜8時台にアントニオ猪木がVTR出演を果たした。番宣上のタイトルには「~氷川猪木!」とあり、目玉の一つでもあった。対談・演奏トータル7分間を振り返る。
(記事アイコン写真は2020年2月20日アントニオ猪木の喜寿を祝う会、カクトウログ撮影)
【因縁の猪木アリから46年。NHKで流れる #炎のファイター フルオーケストラ!!】
📺8月6日(土)18:05~20:50 ※中断時間あり
NHK総合 #ライブ・エール2022#アントニオ猪木 が出演🎻東京フィルハーモニー交響楽団がアレンジ、珠玉の試合映像とともに届けて猪木にエール✊https://t.co/IaZW1SZ52a
— KAKUTOLOG📶プロレス/ボクシング/MMA/格闘技カクトウログ (@kakutolog) August 5, 2022
車椅子で登場の猪木「1年足らずの間に3回も死にかけて」
猪木のコーナーは「1、2、3、ダー!!」合唱シーン映像とともに始まる。「やる前に負けること考える馬鹿がいるかよ」という張り手シーンとビッグバン・ベイダーとの試合(ジャーマンを食らうも、ボディスラムで投げてからの腕十字)。
猪木が医療機関に搬送される映像とともに、2018年「全身性トランスサイレチン アミロイドーシス」発症をナレーションが伝えた。何度も死の渕をさまよいながら闘病生活を送る猪木は、つつみかくさずSNSで発信を続けている。
番組司会を務める内村光良さん、同局・桑子真帆アナウンサーがロケ取材(録画)。アントニオ猪木が車椅子に乗って登場した。
内村・桑子 今日はよろしくお願いします。
猪木 元気ですか~!!
内村 さすがです。僕は小学校の時から猪木さんがヒーローなんで。
猪木 今ならリングに上がっても勝てますよ。
内村・桑子 (笑い)
猪木 1年足らずの間に3回も死にかけて。
内村 (闘病の)動画見ました。
猪木 お迎えが今回来たかなと思ったら、あの世からも嫌われて。
内村 生き様を見せてもらってわれわれはやっぱり勇気をもらいますし、それこそ本当に元気が出ますしね。
猪木 今日一日こうやってまた生きているわ、っていうので。尊厳という、いったい何のために生まれてきたの、そういうテーマはいっぱいあるけど、カッコ悪いか、いいかはわかりません。このカッコ悪い猪木もさらけ出して、あるがままでいいよって(思う)、今は。難しいけど、いかに生きる元気というような、そういうものは個人が人から教わる問題じゃなくて、個人がどういうふうに考え、それを実行するか。
桑子 それをまさに体現してらっしゃるなぁと感じます。
猪木 そう思ってもらえるとありがたい。いまはぶざまに(なってるとも思うから)。
桑子 いまみなさんにこう届けたいメッセージってありますか。
猪木 ひと言しかないです。元気だよ~。元気があればなんでもできるって。いくぞ!! 1、2、3、ダー!!
炎のファイター演奏は正調とオーケストラバージョンのMIX
内村 (ロケ映像が終わりスタジオへ)このロケ、俺、本当に行って良かった、もうカッコ良くて。ずっとヒーローなんだなって、猪木さんは。本当に闘う姿がカッコ良かったです。
桑子 私たちへのまなざしがすごくやさしかったですよね。言葉にはとても熱いものを感じました。
内村 猪木さんは闘病する姿を見せることでね、今も私たちにエールを送ってくれているんだと思います。これまでたくさんの元気をくださった猪木さんに、今夜はですね、僭越ながらですね、私たちから音楽でエールを届けたいと思っております。
桑子 それではお聞きください。『炎のファイター ~INOKI BOM-BA-YE~』
https://twitter.com/nhk_liveyell/status/1555871847807434752
東京フィルハーモニー交響楽団(指揮は栗田博文さん) の演奏は、リングが設置されたスタジオから。「イノキボンバイエ」「ファイト」の声もかぶせられてスタートする。ひとくちに炎のファイターと言っても、何を持ってきてどう料理するかで印象は左右されるものだ。正調の『炎のファイター』であったが、途中からオーケストラ・ヴァージョン(猪木のテーマのバリエーションとしてCD化され、ノア藤田和之が現在のテーマ曲としても使用)にスイッチした。
するとスタジオ内の5台のビジョンに猪木の試合VTRが再生される。ガウンの紐を解いてゴングが鳴り、タイガー・ジェット・シンへの腕降り、ブルーザー・ブロディへの蹴り、マサ斎藤との巌流島決戦、ラッシャー木村との張り手合戦、グレート・アントニオへの打撃などで彩られた。『キラー猪木』のクレジットが出て、このDVDからの再編集であることも共有される。
序盤からクライマックスまでの流れを想起させる複数試合からの編成だ。猪木の試合を見ているかのような展開は、馳浩への卍固めへと続く。NHK的に大丈夫なのかと気になる顔面大流血の猪木の姿もあった。
両手を突き上げるシーンが重ねられ、視聴者に“猪木勝利”が届けられる。ガウンを振りほどく背中のシーンと「1、2、3、ダー!!」の声で演奏タイムが締められた。
夜8時台のNHKに、いつもの猪木が炸裂する。「今なら勝てる」「お迎えが来た」「あの世からも嫌われた」という猪木流言いまわしのオンパレードだ。対戦相手とスイングする鉄板攻防を経ると、「カッコ悪い猪木もさらけ出して、あるがまま」との言葉で現在時点を説明する。
それでいてプロレスというジャンルの新境地を切り拓き、総合格闘技という世界観を先導し、世界との会話は国会議員としても繰り広げたことが猪木の真骨頂だ。「難しいけど、いかに生きる元気というような、そういうものは個人が人から教わる問題じゃなくて、個人がどういうふうに考え、それを実行するか」としたところがクライマックス。
どこかで自分を信じ、自分で決断するしかない。実に短い言葉ながら、猪木流の全てが込められており、誰しもに届くエールとなった。胸を熱くしたのは猪木ファンだけではなかっただろう。
その足跡を映像MIXと生演奏で振り返りつつ、猪木にエールを送るかのようなオーケストラ編成はNHKの力作だった。制作者のみなさん、東京フィルハーモニー交響楽団のみなさんに感謝である。
NHKスタジオに設置されたリング リングスタッフ貸し出し
NHKスタジオに設置されたリングは本物で、興行備品をレンタルするリングスタッフさんによる貸し出しだった。
今日は"動くリング"を作ったよ。
答えは明日!#リング pic.twitter.com/fTRRr60ua8
— パンチ田原 PunchTahara (@punchtahara) August 5, 2022
長いことやってますが「リングを使わない」どころか「リングに誰も上がらない」貸し出しは初めてです。贅沢。#リング #ライブエール
— リングスタッフ (@punchringstaff) August 6, 2022
猪木さんなので円柱のコーナーマットです! https://t.co/aQ5GXvwB5x
— パンチ田原 PunchTahara (@punchtahara) August 6, 2022
新日本プロレスのリングというわけではなかったが、新日本仕様のコーナーマットのものが使われた。