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里村明衣子「ウナギにもそういう匂いを感じた」 堅物とカブキのクロスロード
追っかけ大会レポート。16日、後楽園ホールにて『ワンマッチ興行 ウナギ・サヤカ 殿はご乱心 我が名は』が開催された。
●ウナギ・サヤカ(24分21秒 スコーピオ・ライジング→片エビ固め)〇里村明衣子
■ワンマッチ興行 ウナギ・サヤカ 殿はご乱心 我が名は
日 時:2月16日(日) 16:00開演(15:00開場)
会 場:東京・後楽園ホール 観衆1603人(札止め/主催者発表)
※アーカイブPPV視聴可
https://unagisayaka.com/store/11440
※録画中継
CSサムライTV2月23日(日)22:00
<時間無制限1本勝負>
●ウナギ・サヤカ
24分21秒 スコーピオ・ライジング→片エビ固め
〇里村明衣子
里村の握手を拒否、ウナギが蹴りを繰り出してゴング。冷静にさばいた里村は、ヘッドロック地獄でじっくり料理にかかる。場外戦ではウナギが「みんな里村が食らうところを見たがっている」と観客を味方につけて、里村にゴムパッチン攻撃。さらにウナギ&里村に縁のあるレスラー(中島安里紗、南月たいよう、永島千佳世)が潜伏しており、観客席から里村に攻撃を加える。リングに戻ると里村はSTF、キックのバリエーション。ウナギも松風と共にあらん!、拙者、蒲焼き者で候。、雪崩式ブレーンバスター、グラウンドフロントネックで反撃する。里村は強烈なバックドロップからスコーピオ・ライジングを発射。しかしブロックしたウナギは体重を乗せるアームブリーカーからグラウンド羽根折り固め。さらに、これより我は修羅に入る!、城門突破につなぐ。つづくウナギのスライディングTANAKAは里村がブロック。里村デスバレー→ウナギスリーパー→里村デスバレー→里村ローキック連打→里村スコーピオ・ライジングで決着となった。
真逆な2人の関係はワンマッチにあらず…里村「これで終わりじゃない」ウナギ「夢を叶え続けると、お前に誓うよ」
スターダムを“クビ”になった後に、複数団体に参戦して引っ掻き回す。ウナギ・サヤカはフリーランス活動“ギャン期”によってファンを動員し続けてきた。認めてしまうと他選手は自身の否定にもなるわけで、妬みも当然のように感じているだろう。
そんな中で“堅物”里村が試合後にぶっ放す。「私はな、引退した後も死ぬまでプロレスに人生懸ける。何があってもプロレスに人生を懸けるって決まってるんですよ」とマイク。とどまらずに「ウナギにもそういう(プロレスに自身を懸ける)匂いを感じたな!! 私はな、できる限りウナギの夢を一緒に見たい!!」と先頭を切るカッコよさ。
堅物の心をも動かしたのか。あるいは堅物だからこそ言わずにいられなかったのか。引退を前にしたレジェンドがウナギを称えたとき、ギャン期にこれまでにはない追い風さえも感じられた。
南側スタンドで縁ある選手からの加勢を得た際には、お祭りムードに持ち込むのがウナギのせいいっぱいとなる可能性も漂う。実際にリング戻ると、里村の攻撃でウナギはKO寸前に。それでいてウナギは里村の攻撃を果敢にブロック。テコの原理で里村の腕を破壊しようと、グラウンドでの羽根折りへ。スタンドではスリーパーに持ち込む。
傾奇者とは「勝手な振る舞いをする。奇抜な身なりをする」という意味だが、そもそも闘っていること自体が勝手であり奇抜なのだ。躍動感のある技が必ずしも有効なわけじゃない。痛みを伝えられるわけじゃない。これが特訓の成果や作戦だったのかは定かではないが、ウナギは自身の引き出しにより対抗し、敗れこそすれ24分21秒を完走した。
ワンマッチ興行で後楽園ホールを満員にする。その尊さは里村もウナギも身に染みている。ならば今回の満員は、お互いに自身の歩みの継続を決意させ、お互いに足りないものを自覚する機会になったのではないか。真逆な2人の関係は“ワンマッチ”にあらず。里村が「これで終わりじゃない」とすれば、ウナギは「夢を叶え続けると、お前に誓うよ」とした。
ギャン期が持つ意味。里村がセンダイガールズのプロデュースにまわる意味。それは、まわりが感じているよりも深いものがあるのかもしれないと思わされた。とてつもないドキュメントをリアルタイムで追いかけることができる。プロレスとはどれほどまでに贅沢なものなのだろうか。
バックステージで最後にウナギは「堅物ロードとカブキロードでプロレスを盛り上げたいと思いますので、その他のプロレス団体の皆さんもどうか負けないように頑張ってください」とコメント。聖地での堅物とカブキのクロスロードを経て、プロレス界は新たなる道を行く。
(マイク)
里村「今日、ウナギの企画で、こうして超満員のお客様に来ていただいた意味、よくわかってます。私は、ただ引退するだけじゃないよ。終わりの立場じゃないんだよ。おいウナギ、まだまだ続きがある気がするなぁ(大歓声)。私はな、引退した後も死ぬまでプロレスに人生懸ける(拍手)。何があってもプロレスに人生を懸けるって決まってるんですよ。今日試合して、なんかウナギにもそういう匂いを感じたな!!(拍手) 1人で何かを背負ってんだろうが!! 私は今日こうやって満員のお客様を集めていただいて、こうやって試合できたことに、ウナギに感謝します(拍手) でも、これで終わりじゃないんだよ。4月だってあるだろ。もっと目指してるものあんだろう!! 私はな、できる限りウナギの夢を一緒に見たい!!(拍手)」
大ウナギコール。
ウナギ「あのさ、試合に勝ってさ、いい感じでマイクしてさ。全部持っていこうとする(観客笑い)。あなたが引退を決めた日、絶対に何かで、里村明衣子にとっての一番になりたいと思った。おいめいめい、引退する前にウナギ・サヤカとシングルできてよかったな!!(拍手) 私は、今でもたくさんの人が『昔のプロレスはよかった』って言ってる・・・確かにそうです、昔のプロレスラーはプロレスをつくり上げてきて、後楽園も当たり前にパンパンにして、マジでかっこいいしめっちゃすごいし。でもさ、今こうやって、リングの上で生きて、プロレスをしているのは、今の現役レスラーなんですよ(拍手、「そうだ」の声) だから絶対に何があっても、大きい夢を見て、大口叩いて先頭で実際に行動して、夢を叶え続けると、お前に誓うよ(拍手)。里村明衣子の血はな、仙女のやつらだけが継ぐんじゃねぇよ。今生きてる、プロレスラー全員でつないで、全員で上に上がっていくんだ。せいぜいお前も、3月の代々木、パンパンにしてみろよ。私も必ず両国パンパンにして東京ドーム自主興行、絶対やるから。今が一番すごいプロレスを、これからも、ずっと一緒につくらせてください(拍手)」
ウナギ「というわけで、みんなでいったんね。いったん大きい声で『ありがとうめいめい』で締めたいと思います。いきますよ、せーの!!」
観客と『ありがとうめいめい』!!
(バックステージ)
里村「やっぱ彼女が本当にフリーランスとしてこうやって、ここまでできるってマジですごいなと思いますね。この勢いで(ウナギ自主興行の)両国も東京ドームもマジでやれよ。私は私でやりますよ。私はね、経験上、女の決意ってあんまり信じないんですよ。コロコロ変わるんで。全く信用してないですけど、ウナギ・サヤカに関して信じる。言ったことをちゃんとやるし、なんか色々犠牲にしてるし、やっぱすごいし。だからね、私は今日の試合で、(4月に)引退はするけど、プロレス道は終わりじゃない。辞めた後、もっと大きくしてやる。もっと里村明衣子を広げていきますよ。これを今日、来てくださった皆様に、覚悟としてお伝えします。やっぱり初めてなんで。全くの初対面なんで。ちょっとね、全然合わないところありましたけど、それでいいんじゃないですか? 手の合うプロレスってつまんないんだよ。やっぱこうやって最後の最後で、超満員の中で、初めての対決で、これだけのお客様に集まってくれてるというところはウナギ・サヤカと里村明衣子の価値だと思います。ウナギ!!(と呼び寄せる)」
カクトウログ記者の前。バックステージ後方で聞いていたウナギが呼び出される。
里村「すごいね。すごいでしょ。すごいよ」
ウナギ「私も里村明衣子のすごさ、最後に直接こうやって感じて、しかも、このパンパンのお客さんの前でやった選手他にいる? いないよ。最後にあなたと最高の場所で、しかも後楽園でできて、本当にまじで嬉しかったし。あなたとは本当にここで、本当に初めて闘ったけど、初めて闘った気がしない。そんなすごい、素晴らしい前哨戦(対談)も組んでもらって、あそこで話聞いて、里村明衣子という人間の大きさを知れて、この一戦を迎えたことを本当に誇りに思ってるし。あの時点で、あなたとこれからも最高のプロレス界を一緒につくっていける気がしました。だから引退するまでは『堅物めいめい』だけど、引退したら『マブダチのめいめい』として」
里村「いや…」
ウナギ「なんでだよ」
里村「あのね、私はね、ずっと堅物でいきますよ。堅物でいくから、ウナギ・サヤカにしか出せないものをつくって。私は堅物にしかできないものをつくっていくんです。で、いつか絶対つながるんだよ」
ウナギ「わかった。でもマブダチのめいめいでいい? (里村はノー)もうなんで。なんで。ほら、みんな(記者会見場は)いいじゃんと思ってるよ。もう友達でいいじゃん。こんなにお客さん・・・だってさぁ、デビュー戦の場所も一緒。なんなら去年の誕生日も 9月2日後楽園でやって、ほら乗り込んだ日を、誕生日やって、こうやって一緒にやって。もうこれマブダチ以外ある?」
里村「1つだけ、1つだけね・・・今の女子プロレスをつくっていくのが一緒なんですよ。一緒なんだけど、堅物として、今ね、甘ったれてる世代のやつがいるんだよ。それはね、私ね、引き締めていく。これ私にしかできないから。余ってるやつさ…」
ウナギ「余ってるやつ? 余ってるやつにどうにかしろって」
里村「(言い直し)甘ったれてるやつらを引き連れて、どうにかしろよ。今度連れてこいよ」
ウナギ「私? 甘ったれてるやつ連れて? ハードル上がってんな!!」
里村「それでいつかつながるんだよ」
ウナギ「わかった。なんかちょっとこっち弱くない?」
里村「ウナギ・サヤカはウナギ・サヤカで道をつくる。里村は里村の道をつくる。いい? それが合わさったときに、でかいものが見えるよ。ありがとう。まだまだ私たちの闘いは続くってことで。マジで、死ぬまでだよ。死ぬまで、この世界にね」
ウナギ「嫌だよ!!」
里村「今日はありがとうございました」と里村は去る。
ウナギ「(ウナギの単独コメントは別記事参照)この後も東京ドーム、必ず叶えますし、両国もちょっと皆さんびっくりするカード準備する予定なんで・・・まだ何も決まってないんですけど、絶対にするんで。みんなの一番ワクワクする場所、必ず私がつくります。『堅物めいめい』と一緒に。堅物ロードとカブキロードでプロレスを盛り上げたいと思いますので、その他のプロレス団体の皆さんもどうか負けないように頑張ってください。以上、ウナギ・サヤカでした。ありがとうございました!!」
ウナギvs.里村をもっと味わいたいファンはチェック。決戦前VTRに詰め込まれた証言の行間を全力で受け止めよう
あっけなく興行が終わってしまうことを回避したこともあるだろうが、記者には試合前の煽りの一つひとつの行間にも深い意味を想像せざるを得なかった。よろしければご一緒に。
清野茂樹アナウンサー前説抜粋。
「(ラジオ番組のパートナーとして)何回か回数を重ねていくうちに、なんか人に伝わる言葉をこの人持ってるなっていうのを感じるようになりました。なんか不思議な力があるんですね。え、彼女は常に本音で会話をします。その彼女が後楽園ホールでワンマッチ興行をやりたいと言いました。里村明衣子と闘いたいと言いました。ちょっと無謀にも思えるようなことも、彼女が言えば実現するような気がするんですね。そして実際今日実現の運びとなりました。彼女が一体何を見せてくれるのか、みんなその瞬間を楽しみに、今日集まったわけですよね!?(拍手) ウナギ・サヤカは今日試合前、会ったとき、私に一言言いました。『今日、女子プロレスの歴史を変えます』と。さあ、その瞬間を一緒に見届けましょう。そしてウナギ・サヤカが言ってました。とにかく皆さん声を出して応援してほしいと。ちょっとじゃあ皆さん一声ずついただけますか!!(声出しリハへ)」
(関連VTR抜粋)
里村「一番最初にウナギ・サヤカが声かけてきたんです。私が引退会見をした日に後楽園ホールを押さえたっていう言葉が、ま、ちょっと(気持ちが)動きましたね」
ウナギ「あれが私のやり方なので。でも絶対に対戦したい相手ではあるので、こうフリーでやってきて、そこまでに、ま、いわゆるレジェンドと言われる人たちとたくさん、ま、闘ったりとか関わったりとかしていく中で、少なくともそういう人たちの気持ちももらった上でリングに立ってるつもりなので。ま、里村明衣子ってすごい人ですよ。そんな人が引退するってなったときに、ま、普通に考えたら、仙女の選手が里村明衣子の遺伝子を引き継いで闘っていくっていうのが多分普通なんでしょうけど、私はやっぱり全ての自分が関わってくれた人とか、闘ってくれた人とか、そういう人たちの気持ちも一緒に上がって、あのとき闘ってくれたあの人との試合があったから今の自分があると思ってるんで」
里村「ウナギ・サヤカのやってることって、若い選手に響くんですよ。うち(センダイガールズ)の岡優里佳もウナギ・サヤカに憧れてましたからね。対戦したいっていうことも言ってたし。すごく響くところがたくさんある選手なんですよね。実際に映像を見て判断するよりもやっぱり試合で対戦してみないとわからないことってあるんで。その先を見てみたいですね」
鈴木みのる「終わろうとしている人間と先に行こうとしている人間の力って言うのは違う。うん。これは確実に違う」
長与千種「対角(線)にいるウナギ・サヤカが教えてくれ、教えてくれって私に来てるけど、徹底して教育をさせていただいた。させていただいたので、それが今度はそこまでのエッセンスになり、そして今度は里村明衣子(と対戦)という勇気ができ、いやいやサスガだなと思ったよ。なんとも思ってなかったり刺さってなければ、触覚が動いただけでは彼女も絶対受けなかっただろうし」