髪切りとジュリアを超えてゆけ 中野たむ白の武道館から赤の横アリへ
女子プロレス20年ぶりとなる横浜アリーナ大会が23日に近づいた。言うまでもなくスターダム史上最大決戦である。ジュリアとの赤ベルト戦を前にした中野たむがすべてを語る。
(4・15『REALIVE360 presents CINDERELLA TOURNAMENT 2023~優勝決定戦~』国立代々木競技場第二体育館大会直後に収録)
【当サイト音声配信番組の中でリスナーより中野選手への質問案を多数いただき、実施分インタビューに盛り込んでおります。感謝いたします】
コズエン再編…「みなにとっていいこと」と「私はホントは離れたくない」の間ですごく引き裂かれそうな思い
白川未奈が「今日でコズエン(COSMIC ANGELS)をやめます。仲間ができました。クラブヴィーナスはコズエンから独立します」とすると、月山和香も「コズエン大好きです。たむさんが大好き。今までありがとうございました」と追随する。コズエンが2派に分かれる衝撃が走ったが、中野たむの前に「私じゃダメかな。私が支えるから」と現れたのが安納サオリだ。
15日、コズエン大再編と史上最大決戦1週間前がクロスしたタイミング。延期になっていた中野インタビューをノーカットでお届けする。
カクトウログ すごく聞きたいこといっぱいあったんですけど…(スマホメモをチラ見せしながら)。
中野たむ わぁ、いっぱい!!
カク 気になる状態としては・・・オデコ(ジュリアとの会見乱闘で流血、試合で狙われ膨れて悪化)は完治したんでしょうか。
第三の目が開こうとしてる pic.twitter.com/9GYmVbc7F5
— 中野たむ Tam Nakano (@tmtmtmx) April 8, 2023
中野 痛いんですよ。傷はかなり塞がっていて、ココはシコリになっちゃっていて、コブがけっこう(下に)降りてくるんですよ。血がたまって。このへんがバーッと腫れてすこしメイクで青タン隠してるんですど。
カク サムライTVで「鏡を見ても気分が晴れないと」。
中野 そう(笑)。
カク 横浜アリーナに弾みをつけたいところだったんですが、今日は悔しい結果に(8人タッグ戦3本勝負で敗戦)。
中野 (沈黙のあと)・・・悔しいですね。ジュリアとは個人的に1対1で負けたくないという気持ちなんですけど、DDMを率いるリーダー、コズエン率いるリーダーとして。ユニット抗争で負けちゃったっていうのはふがいないというか、(思いつめたように)メンバーに申し訳ないなぁって気持ちでいっぱいだし…今日負けなければ…みな(白川未奈)も、今日コズエンから独立するってこと言わなかったのかなと、ちょっと頭が混乱してますね、今は。
カク …。
中野 でもホント、みなはいつか、みながたどってきた道は私がたどってきた道と全く同じだから。
カク かつてSTARSから独立したということですよね。
中野 STARSでコズエンをつくって、独立して…ってやってきたことだから、すごくみなの気持ちは手に取るようにわかって、そばにいるからこそみなの気持ちはわかっていて。私はみなにはそばにはホントいてほしいと思ってたけど。みなにとって、いちばん輝ける、いちばんみなが輝く未来をつかめる道を進んでほしいと思ってたから、いつかこういうときが来るというのはわかってました。わかってたし、その決断を…きっとみなもいろんな葛藤があったと思う。
カクトウログ はい。
中野 でもいろんな迷いとかを振り払って、覚悟を決めてほしいという気持ちもあったから、「みなにとっていいこと」と「私はホントは離れたくない」という気持ちとの間で・・・初勝利への思いでコズエンがホントに団結してたところでの月山(和香)まで・・・すごく引き裂かれそうな思いです(言葉が詰まる)。
赤ベルトの意味・・・コズエンメンバーにもっと最高の景色を。じゃあ最高峰のベルトをリーダーが獲らなきゃ
カク 白川選手は横浜アリーナで白のベルト(ワンダー・オブ・スターダム選手権)に挑戦しますが、中野選手も白いベルトのイメージが強いじゃないですか。
中野 ありがとうございます。
カク 『白を赤よりも上に』という中野選手の意志にファンも肩入れしてきたところもある中で、タイミングもあると思うんですが、赤(ワールド・オブ・スターダム選手権)の意味合いというのはご自身でどういうふうにとらえていらっしゃいますか。
中野 やっぱり、変わらず『最高峰』のベルトだとは思います。
カク なるほど。
中野 私はどんなに頑張っても白を最高峰には…できなかった。ただスターダムの象徴的なベルトには持っていけたと思います。ずっとずっと林下(詩美)が長期政権を築いて、今はジュリアが持ってて、やっぱり赤っていうのは強さの象徴なんです。強さにおいては最高峰のベルト。ナンバーワンはきっと、ベルトができたときから赤なんです。
カク それをどこかのタイミングで獲りたい。
中野 今しかないと思ってます。なんか…ずっと白にこだわってきたんですけど、私は。白いベルトを落としてからも赤いベルトにはやっぱり、白いベルトほどの魅力は感じなかった。『また白いベルトを獲り返したい』とか。上谷(沙弥)に挑戦したりとか。白いベルトへの思いが強かったけど…コズエンという仲間ができたことで、コズエンをナンバーワンにしたかったんです。いつも『人気ばっかり』(との指摘もあって)…すごくありがたいことなんですよ、それは。
カク (聞き入る)
中野 嬉しいけど、やっぱ実績がないというか、ぜんぜん勝てなかったりベルトを獲れなかったり、一緒に頑張って闘ってくれてるメンバーにもっともっと最高の景色を見せてあげたいなっていう。そう思い始めて、じゃあ最高峰のベルトをリーダーが獲らなきゃと…みんなで最高峰の景色が見たい。自分だけじゃなくなったというか、けっこう中野たむって自分勝手で自分のことしか考えてなかったと思うんですけど、ホントに守るものができたし、愛するものがたくさんあるから今は…正直…カラダも心もボロボロだけど…それがあるから頑張れてます。
カク ご自身のグレードも上げたいし、コズエン自体のランク上げという。
中野 はい。
ジュリア戦の必然・・・いちばんの黄金カード。でも、あの試合を超えなきゃという思いがずっとあるんです
カク 3か月前にジュリア選手の試練の10人掛け(1・21高田馬場)という試合があって、ジュリア選手から月山(和香)選手にエールを送る場面があって、月山選手に「月山、オマエに中野たむ味を感じたよ。オマエの師匠もドン底から這い上がった」と。そこで中野選手には「中野たむ、私にはお前が必要だし、お前もそうだろ。2人とも落ち込んでないで元気にやっていこうや。あーだこーだいう人なんてくそくらえ。プロレス楽しもうぜ」っていう、(口論に終始しがちな)SNSとは違う言い回しもあったんですけど、ジュリア選手ならではの独特の人の気持ちの読み方を感じるものですか。
中野 …えーと、難しい!! これ(「あーだこーだいう人」)はたぶん(月山に3か月で勝てなければコズエン脱退を)最後通告した後とかで、自分は月山に対して(してあげれることが尽きて)苦しい思いがあったし、月山もまた勝てなきゃコズエン脱退でっていうふうにナーバスになってた時期。そのときSNSでいろいろ書かれたんですよ。それを指してるんだと思います。
カク ジュリア選手なりのエールはあったんじゃないかと。
中野 でも、これはもう…元気出せよということだとは思うんですけど、わかんないけど、私はジュリア自身も(2021年3月3日・日本武道館)髪切り(マッチ)くらいに燃え上がる何かを欲しているからこういうことを言ったのかなと。だからあのときみたいに『私はお前が必要だし』(という意味)…『ホントに命を燃やして、ホントに命を懸けるような闘いをしたい』っていう、ジュリアからのヘルプ(要請)でもあったのかなと私はとらえていますけど。
カク 横浜アリーナが20年ぶりの女子プロレスなので、スターダムで最高のものをまわりも、ジュリア選手・中野選手本人も考えると思うんですけど、流れの中でジュリアvs.中野たむというカードを切りにいったところはあるんですかね。ボクの印象深いところで、日本武道館だけじゃなく5☆STAR GP 2022決勝(2022年10月1日・武蔵野の森総合スポーツプラザ)。5スターの舞台セットが電飾扉とゴンドラで豪華だったんですよ。
中野 はい。
カク あの決勝の舞台に見合った選手にジュリア戦・中野選手が見えて…。
中野 嬉しい。
カク …で、どこかで横浜アリーナは「ジュリアvs.中野たむ」なんじゃないのっていうのがまわりも自分たちもあったのかなと、決まってから思ったりしたんですけど。カードの特別感はありますか。
中野 すごくあると思います。スターダムでいちばんの黄金カードは「ジュリアvs.中野たむ」だっていう自負もあるし。でも、ジュリアもたむもだしみんなが思っているのが『髪切りのカード、3・3の試合』なんですよ、記憶として。あの試合でみんな「ジュリアvs.中野たむは黄金カード」って言ってる。だから私たちはそれを超えなきゃという思いがずっとあるんです。プロレスラーとして2年も3年も経って、あのときの髪切りがベストバウトだったよねって言われることほど悔しいことはない。それよりいい試合ができてないなんて成長が止まっているってこと。だから、ずっとずっと…私はですよ、ジュリアどう思っているかどうか知らないですけど、すごい試合をしなきゃいけない、そしてそれができるのがジュリアとだと思っている。そこの最高の舞台が横浜アリーナだと思った。
カク よくわかりました。
中野 それは、自分にかなりプレッシャーもかけてます。あれよりすごい試合ができなかったらここでやる意味ない。髪切りを忘れられる試合をしないと闘う意味はないと。
コズエン安納浮上・・・著書『白の聖典』から1年3か月。中野「どんな化学反応が生まれるんだろうというワクワク」
カク 質問を考えていたときと状況は変わった(大会終わりに安納が中野との合体を表明)んですが、安納サオリ選手がスターダムに来てですね(KAIRIに呼び込まれ4・2後楽園来場)…最近の安納選手の動向は把握されてたんですか?
中野 OZさんとか仙女さんとか(ユニット活動としての)正危軍とかやってますよね。
カク そうですね。
中野 アイスリボンさんのベルトを巻いてて。YouTubeとかでチラッと試合を見て…という感じですね。
カク 『白の聖典』(著書)で対談されてたじゃないですか。(対談で語られていたのは)デビュー戦で中野選手の力を引き出してもらえて、デビュー戦の評判がよかったと。
中野 はい、すっごくよかった。
カク (相手選手の持ち味を)引き出す力がすごいあるのが安納選手なんですけど、中野選手の選手としての理想像の1人にしているところはあるのでしょうか。
中野 今はまったくしてないです(笑)。
カク それは…どう書けばいいのか(笑)。
中野 なんて言うんですかね、アクトレスガールズのときはなつぽいとサオリの2枚看板で「2人を超えたい!」「勝ちたい!」という憧れがあったんですけど、正直修羅場をくぐってきた経験は私の比にならないと思ってるんです。(私は)1人になって、フリーを経てスターダムに来て、シングルのベルト巻いて、ユニットもつくって。サオリちゃんのことを全部知っているかと言われるとそうではないけど、乗り越えてきた修羅場の数は絶対負けないと。
カク (聞き入る)
中野 それくらい地獄を私は味わってきたと自負してるんで、負ける気もないですし。なんだろ…変な気持ちはまったくないです。倒してやりたいとか勝ってやりたいとか。あのころと違う私たちになったことでどんな化学反応が生まれるんだろうというワクワクの方が大きいというか、ずっと組みたかったんです、一緒にやりたくてサオリちゃんと。声かけてもああいう感じなんでかわされちゃってて(笑)。いいとこ見せあいっこしたいねぇって感じです。
カク その対談がこの言葉で締めくくられているんです。
中野 (カクトウログのスマホ内に「頂点で会おう!」の表示)すごい運命ですよね。だって私が頂点のベルトに挑戦するときに彼女が来たんですよ。まさに、頂点って…(4・23横浜アリーナ大会で)獲れなかったら頂点で会えないのかな!? アレ!? 獲ったら実現するってことですか。
カク うーん。
中野 でも、(挑戦時点で)頂点立ったと言っても過言ではない!?
カク あるいはスターダムのメインクラスで起用される前提が整ったところでお互い会おうというような?
中野 確かに。
カク 赤を懸けてやろうともとれるし、いろんな解釈はできると思うんですけど。
中野 約束は守ってくれましたね。(安納は)約束を守る女だ!!
カク 安納選手も他団体ベルトの戴冠も重ねて、より頂点に近づいた状態での参戦にはなるんじゃないですか。
中野 そうですよね。
カク シングルもたくさん防衛してましたもんね。この言葉(「頂点」)にふさわしい結果を中野選手は1週間後(4・23横浜)に残していただけるんでしょうか。
中野 もちろんです。1週間後、私が赤いベルトのチャンピオンになって、正真正銘ナンバーワンになる。女子プロレスの頂点に中野たむが君臨します。
カク わかりました。ありがとうございました、(代々木大会試合後の)お忙しいところ。
中野 いえいえすみません、(乱闘による負傷で会見後取材が延期)延び延びになっちゃって。
改めて赤いドレスを着たのは4月3日の記者会見。中野は包みからジュリアの髪の毛を取り出し、「ジュリア、私はアンタがこの世で一番大っ嫌い。これが、なんだかわかる? 2年前のアンタの髪の毛。あんときの憎しみをいままでずっと忘れないように持ってたんだよ!」と言い放った。
2021年3月3日・日本武道館がスターダム10周年史上最大決戦となり、中野が白ベルトを初戴冠した。2023年4月23日・横浜アリーナは女子プロレス20年ぶり横浜アリーナ大会となり、スターダムはまた史上最大決戦を更新する。メインカードは同一だ。
聞いてわかったのは、すべてに理由と見解があったこと。「コズエン再編」「赤ベルトの意味」「ジュリア戦の必然」「コズエン安納浮上」。それぞれへの中野の言葉を繰り返し読み込んでほしい。
いざ、白の武道館から赤の横アリへ。中野たむよ、髪切りとジュリアを超えてゆけ。
(対戦カード)スターダム ALLSTAR GRAND QUEENDOM 2023 Powered by Softbank NFT LAB 4月23日(日)横浜アリーナ
■ スターダム ALLSTAR GRAND QUEENDOM 2023 Powered by Softbank NFT LAB
日時:4月23日(日)16:00
会場:神奈川・横浜アリーナ
<横浜ランブル(第0試合)>
中西百重参戦決定
(※その他参戦選手は後日発表)
<タッグマッチ>
フワちゃん&葉月 vs. 林下詩美&天咲光由(Queen’s Quest)
<8人タッグマッチ>
テクラ(Donna del Mondo)&マライア・メイ&ジーナ&ジェシー(Club Venus)
vs. 刀羅ナツコ&渡辺桃&鹿島沙希&琉悪夏(大江戸隊)
<タッグマッチ>
駿河メイ(プロレスリング我闘雲舞)&AZM
vs. スターライト・キッド(大江戸隊)&星来芽依
※スターライト・キッドのタッグパートナーは元マーベラス星月芽依の改名・星来芽依(せいらめい)と発表
<ひめか引退試合>
ひめか(Donna del Mondo) vs. 舞華(Donna del Mondo)
<ゴッデス・オブ・スターダム選手権試合>
《第26代王者》高橋奈七永&優宇(7Upp)
vs.《挑戦者》MIRAI&壮麗亜美(THE NEW ERAS)
※奈七永&優宇が3度目の防衛戦
<アーティスト・オブ・スターダム選手権試合>
《第28代王者》世羅りさ&鈴季すず&柊くるみ(PROMINENCE)
vs.《挑戦者》KAIRI&安納サオリ&なつぽい(REstart)
※世羅&すず&くるみが3度目の防衛戦
<シングルマッチ>
朱里(God’s Eye)
vs. 橋本千紘(センダイガールズプロレスリング)
<IWGP女子選手権試合>
《第2代王者》メルセデス・モネ
vs.《挑戦者》岩谷麻優(STARS)
※モネが2度目の防衛戦
<ワンダー・オブ・スターダム選手権試合>
《第16代王者》上谷沙弥(Queen’s Quest)
vs.《挑戦者》白川未奈(Club Venus)
※上谷が16度目の防衛戦
<ワールド・オブ・スターダム選手権試合>
《第15代王者》ジュリア(Donna del Mondo)
vs.《挑戦者》中野たむ(COSMIC ANGELS)
※ジュリアが3度目の防衛戦