金沢克彦氏が恒例の毒舌生解説 新日本・ノア・スターダムの2023年とは
11月26日、大阪プロレスBARカウント2.99にて『金沢克彦ガチンコトーク2023』が開催された。金沢さんは『週刊ゴング』編集長、テレビ朝日『ワールドプロレスリング』解説者を経て、新日本プロレス公式スマホでの大会レポートをはじめとする取材記事、サムライTV『速報!バトル☆メン』での解説などに携わっている。
3時間1本勝負ながらノーツイートイベントのため、トークの一部を主催者許可を得て記事化した。渦中にあった2023年プロレス界の金沢さんの見立て、プロレス界との向き合い方における金沢さんのメッセージとは? 限られた内容にはなるが、渾身トークに目を通していただきたい。
アントニオ猪木をさがして…最後にね、海野翔太が答えをくれたんですよ
金沢さんはザ・グレート・カブキの忍者マスクのお面(紙製)をかぶって登場。3日間特訓したというヌンチャク捌きを披露した。
金沢 今日は(米大リーグでホームラン王を獲得した)大谷翔平の1年を振り返るということで!!
マスター ブーイングOKにしますよ(笑)。
金沢 存亡の危機に瀕していたガチンコトークが、なんとか実施にこぎつけました(当初2週間で参加応募が15名だったが当日を目前にして完売)。そして、カウント2.99もコロナ禍を挟んで苦しい中、無事に13周年を迎えることができました(当トーク開催も13年連続)。あとはみなさんのご健康を祈って…乾杯!!
【映画「アントニオ猪木をさがして」に関しての論評】
金沢 映画「アントニオ猪木をさがして」ですか。あの大好評の!?
<アントニオ猪木没1年で上映された映画「アントニオ猪木をさがして」については、金沢さんの見方は厳しめだった。映画を見ている人としては、トーク参加者から3分の1の手が上がる>
金沢 (バッサリと斬った後に)アントニオ猪木をさがして…最後には見つかるだろうと思ってさがしてたんですけど、出てこなかったんですけど、最後にね、海野翔太が答えをくれたんですよ。「僕は棚橋(弘至)さんのこと、猪木さんを知らないんで、棚橋さんを尊敬してる。国立競技場でプロレスをやりたい」と。その前に棚橋が「翔太、お前怒ってるか」と聞いたら「いや怒ってません」と。それで「あ、アントニオ猪木はもう“いない”んだ」という答えが見つかりました。
<試写会で宣伝担当者から感想を聞かれて、正直に答えたのだという>
金沢 なんでスタン・ハンセン、タイガー・ジェット・シン、藤田和之にインタビューしないの? そう伝えましたけど…ただ棚橋にはプロレス初心者にもわかりやすく説明しようという意図はあったようで。あと(後日に)猛烈批判したのは高田延彦ですよね。多分でもね、高田って人は猪木が好きで好きでたまんなくて、アントニオ猪木への思いってのはすごいんだと思うんだよね。そういう人にとって、やっぱりちょっと不満があったんじゃないかなと思うんですよね。
<そんな金沢さんも、猪木がブラジル時代に働いていた農場、青果市場などをまわっている映像には一目置いたという>
金沢 映画の感想は人それぞれでもいいんじゃないですか。そうだケンドー・カシンが便乗して「アントニオ猪木のガウンをさがして」という映画をつくりましょうと(笑)僕に提案してきて。藤田和之が2着持ってるということで、本当なのかLINEで聞いたらいまは(娘さんの)寛子さんに預けてありますと。カシンは最近になってまた「アントニオ猪木のベルトをさがして」をやりましょうと。なぜかカシンはグレーテスト18クラブのベルトを保管してるみたいなんですよ。ただNWFのベルトが行方不明らしいですね。初代IWGPのベルトも。だからアントニオ猪木のベルトをさがしてだと。
元日のグレート・ムタvs.中邑真輔戦…もう今年が終わってもいいと思いました
【武藤敬司(グレート・ムタ)引退試合までのエピソード】
金沢 (元日のグレート・ムタvs.中邑真輔戦は)もう今年が終わってもいいと思いました。今年のベストバウト決まったと思ったでしょ? ものすごいインパクトでしたね。あれぐらい日本武道館満員になったのも久しぶりに見たし、やっぱりシチュエーションですよね。試合内容は武藤の動きが落ちているところがあるのでそれほど期待してなかったんですよ。武藤じゃないやムタさん。もっとも武藤敬司vs.中邑真輔だったら成立しないと思います。グレート・ムタは何でもありだから、グレート・ムタvs.中邑真輔だからいいんであって。
マスター なるほど。
金沢 あのカードが有明アリーナで発表されて、バーッと話題になりました。ノアの武田有弘さんが何度も交渉してOKをもらったんですけど、あれがいまのABEMAとの関係につながっているところもあるのかなって気がしないでもないですよ。まあ簡単なお金じゃ呼べないですよね。
試合内容は正直期待してなかった。入場だけでいいと思ったでしょ、入場だけで。で入場もメッチャ素晴らしかった。グレート・ムタはあっさり入場して真輔に100%好きなようにしてくれっていう。神々しいまでの入場。カッコよかったですね、ゴング鳴る前で満腹ですよ。
それで試合やったらこれまた、いい試合になっちゃったんですよね(笑)。真輔が過去のグレート・ムタオマージュで花道ラリアット。僕は上から見てたんで細かいところまでは見れなかったんですけど、腕ひしぎ十字固めのとき「指ひしぎ」をやったみたいですね。ムタが小川直也とやったときの。
マスター はいはいはい。そうだったんですね。
金沢 僕はふだんバックステージの囲み会見で質問はしないんだけど、聞きたいことがあればいつも直接聞くから。でもこの日は聞いたんですね。「ムタのオマージュをしたように見えましたが」って。そしたら涙をボロッと真輔が流して「ガキの頃大好きだったんですよ」って。いやー…こっちまで感極まりましたよね。元日に今年のベストバウトが決まってしまいました。
金沢 これ、東スポのベストバウトじゃなかったらどうするんでしょうね。それで新日本の1・4東京ドーム、試合後の武藤にバックステージで「真輔戦、今年のベストバウトってみんな言ってるよ」って。武藤は「えっ、そうなの? でも俺、まだ引退試合(内藤哲也戦)あるし」って。いや、さすがに及ばなかったですけどね。でも、それぐらい武藤敬司ってのは野心と向上心ありますね。
マスター そしていまお話にあった通り、2月の東京ドーム大会で選手としては引退を迎えるわけであって、最後の選手にはなった。
金沢 これはもうね、集客のためには、内藤哲也しかいなかったと思います。ノアの選手では無理です。別にノアの悪口言ってないよ。ノアの選手とはもうひと通りやっているというのもあるし。じゃあ新日本、オカダ・カズチカ。タッグでやりましたよね。で、オカダも当たり前すぎるし、武藤の中に天龍源一郎の二番煎じは嫌だというのもあったと思います。じゃあ内藤じゃねえか。今一番人気のある。これ。自然な成り行きですよ。当然東京ドームでやる以上は、一番人気があって、動員する人間を呼ばないと。マスコミ間では予想通りです。
<武藤引退大会、ドームではこんなエピソードも>
金沢 テレビ朝日の吉野真治アナウンサーが大会の2日前くらいに電話してきて、「金沢さん相談あるんですけど、セミファイナルのオカダvs.清宮海斗の実況をするんですけど、どんな感じでいったらいいですかね。いくらテレ朝とはいえ、オカダを引っ張り出した清宮の視点でいった方がいいんじゃないかと思ったんですが、どう思います?」って。僕も「それは賛成。試合はフラットに見るべきだけど、清宮の執念は伝えた方がいいと思いますよ」って。吉野アナは「ありがとうございます。その方向でいきたいと思います」って。
<トークイベントとしての休憩に入る前に>
金沢 そうそう、いま引退したレスラーがなぜこんなにクローズアップされてるかというと、これは僕、ぜんぶブシロードのおかげだと思ってる。ブシロードが新日本を買収して、そしてプロレス人気を取り戻そうとして、何千万と宣伝費をかけて、若い新規のファンを取り込んだじゃないですか? それでプロレス人気が復活したでしょ。プロレスが盛り返したからこそ、あの人たちもああいう風に認められてるって。単なる元プロレスラーじゃなくタレントとして成功している。これは僕の中では絶対間違いないと思う。
もしプロレス人気が停滞したままだったら。だって、ブシロードが買収しなければ、新日本プロレスもしかしたらヤバかったと思うんだよね。プロレス界を救ったのは、ブシロードであり木谷(高明)さんだと思う。レジェンド勢は気づいてるかどうかわからないけども、僕はやっぱりブシロード、木谷さんには感謝すべきだと思います。
ただ、各団体が全部を出して、配信をする、マスコミはそれを書くだけ、論評もなくなってきたところがあるんじゃないかな。僕は新日本プロレス公式の大会レポートコラムを担当してるけど、引き続き機会を見つけて(活字プロレスに?)取り組んでいきますよ。
令和闘魂三銃士に上村。この4人がいれば新日本プロレス10年は安泰ですよ
【新日本プロレス、令和闘魂三銃士+上村の将来性】
マスター はい、ということでございまして、今年の新日本プロレスも新しいIWGPのチャンピオンが誕生しまして。
金沢 SANAやん!! 彼はお世話になった人に対する恩は絶対忘れないし、めっちゃいい人だから、武藤ちゃんが膝悪くて入院してるときもちゃんとお見舞いに行ってるしね。でも本当に時間かかりましたね。新日本に来たときはそんなに時間かからなくて、インターコンチのベルトぐらいすぐ巻くと思いましたよ。彼の実力からすれば。すごい身体能力と実力でルックスもいいしね。
金沢 ところが時間かかりましたね。あのSANADAが戴冠した試合を見て思ったのは、オカダの中にSANADAを同年代のライバルとしてみる気持ちが強かったんじゃないかと。お互いが認めあっていたように見えました。言い方を変えると、オカダが「SANADAに負けるならしょうがない」くらいに思わせるものも内容としてあったかと。
マスター チャンピオン像としてのSANADA選手はいかがですか?
金沢 ちょっと発信力が弱いから、今の時代ってやっぱり。強い・うまい・かっこいいだけじゃダメですよね。喋りができないと、言葉を持ってないとなかなか。だからそこが唯一、彼のやっぱり欠点なんでしょうね。めちゃくちゃいい奴よ、言っとくけど。もう一つやっぱりインパクト、なんかこう剥き出しにするようなね。これ(ギフト)だけじゃどうかなと。一生懸命頑張ってんですけど、プロレスでそういうのってのがすごく必要になってきちゃいましたよね。大会をマイクでしっかり締めなきゃいけないと。
時代はどんどんWWEを追いかけ始めて、まだ全然追いついてないですよ。でもやっぱりWWEというものがあれだけね。世界で成功してる、日本以外では大成功してるわけだから。やっぱりそういうものが全て含めてできなきゃいけないわけであって。WWEで喋れなくてもチャンピオンになったのなんてクリス・ベノワぐらいですからね。
マスター 確かに。
金沢 実力だけでね。
マスター この1・4ではですね。ポスターでもあります通り、もう発信力とともにナンバーワンの内藤哲也選手が今年G1優勝を久しぶりにされてましたね。このカード、SANADAvs.内藤が出ました。
金沢 いやー哲ちゃんの人気、やっぱすごいですよ。会場行って感じるのは、内藤哲也の人気の絶大さは、これは際立ってますね。意外とオカダは強すぎるせいか声援がすくない。勝って当たり前みたいな。会場エネルギーは内藤とウィル・オスプレイ、これが飛びぬけてる。だから僕、ファンは正直だなと思いますよ。やっぱり内藤に関しては、彼の試合プラス発信力ね。コメントのうまさ。オスプレイは圧倒的なパフォーマンス。ファンは本当に正直にそれに声援を送ってますよね。ハウスオブトーチャーはどうなんですか?
マスター ニーズはあると思いますよ。
金沢 悪いこといっぱいしてますからね。
マスター SANADAvs.内藤の注目ポイントはいかがでしょうか。
金沢 やっぱりまず身体能力の高さにかけては新日本において一、二を争う2人。そしてロスインゴで一緒にやってきた。因縁遡れば入門テストまで…いろいろありますよね。袂を分けた本当に長いストーリーを紡いできて1・4東京ドームのメインで当たる。おそらく最高の試合を見せてくれると思います。内容的には100%保証付きですよ。
あとは…ノスオトロス、ロス・インゴベルナブレス・デ!! と言ったときに誰が襲いかかるか(笑)。高橋裕二郎だったらびっくりします(笑)。
マスター 今回もし内藤選手が勝ったときにはね、さすがにパレハのみなさんは4コーナーを監視するんじゃないですか。
金沢 ハウスオブトーチャーは平気で入ってきます。ディック東郷がスポイラーズチョーカーで首絞めたら最悪ですね(笑)。かと言って、東京ドームのギフトってやってないでしょ? それ(SANADAの締め)もちょっと見てみたいかなと。だからどっちが勝ってもいいですよ(笑)。試合が良ければいいんじゃないかと。できれば最後はやっぱり、ハッピーエンドで締めてほしいなって。新年早々に最後ストレス残すのはどうかなと思いますよね。
マスター オスプレイ選手がまあ 1・4で辞めるんじゃないかぐらいな噂が立っていたところにAEWへの移籍を発表しました。
金沢 本人はね、まだ新日本に残ってるから、来年から皆さんに会いましょうってね。初のケースですよね。WWEからだって絶対誘われたと思うけど、何で行かなかったんでしょうね。もしかしたら新日本にまだ来たいっていう気持ちがあったんでしょうかね。AEWなら可能性があるだろうし。WWEの方がマネーはいいと思うんですよ。ただし契約したら縛られるでしょうね。WWEと合う合わないは人それぞれですよね。中邑真輔はずっと第一線でやってるんだから素晴らしい。
マスター 令和闘魂三銃士に上村優也が加わって台頭してきましたが。
金沢 成田蓮はどう変わるのかと思いきや地味な路線のままで帰ってきましたね。でもいいと思いますよ、今の時代。海野翔太は化けましたね。こんなできるんだと、いきなりオスプレイともやって。
辻は…これまた化けたねぇ。俺いま、辻イチオシだから。リングですごい大きく見えるんだよね。まず、それが彼の特徴です。細マッチョ的なアスリートボディとはちょっと違う。そして、やることがやっぱり面白い、オリジナルで。だからセンスがあるんですよね。
聞いたら「イギリスのプロレスは大雑把さと細かいのが両極端なんです。両方のいいところを学んできました。メキシコではイチからルチャに取り組んできました」と。そこにちょっとオリジナルを加えてやってみようかなという。すごい研究熱心ですよね。あいつアメフトやってたけど、日体大でしょ。日体大の体育学部でしょ。器械体操もやってたんですよね。本当はいくらでも飛べるんだって、やらなかっただけで。
<省略するが、この時間帯では辻と上村のプロレス的センスの良さが力説される>
金沢 上村ってレスリングの実力者で、ヤングライオンのときに鈴木みのるにも弟子入りしてた。いわゆる藤原教室の筋が継承されている。上村ってストロングスタイル的に帰って来るんじゃないかなと思ったし、もしかしたら黒タイツで。そしたら…あいつ 1970年代、80年代のアメプロが大好きだったっていうね。
マスター なるほど。なるほど。
金沢 凱旋試合では180度違いました(笑)。スタイル的にサイクロンホイップやクロスボディも使ったりで「リッキー・スティムボートじゃねぇか!!」って思ったんだけど、そう評しても今のファンには伝わらないと思ったんでコラムでは「ひとりタナケン(棚橋+鈴木健三)」って書いたんですけど、実はリッキー・スティムボートの大ファンだったらしくて。あとはショーン・マイケルズとか。
ということは、棚橋と同じじゃないかと。古き良きアメリカンプロレスの追究というのが、逆に新しいんじゃないかと。上村はレスリングになっても強い。海野はジョン・モクスリーを師匠に持つので、上村と似たところも感じさせつつバイオレンスなところがありますね。
令和闘魂三銃士にプラス上村。この4人がいれば10年は安泰ですよ。大きいですよ、未来はしっかりある。先日の後楽園でのタッグリーグを取材したんだけど、気がついたらオカダ、内藤、SANADAが出てない。オスプレイもザックもいない、それでも成立してるしおもしろかった。
本当に清宮を認めたのは、横浜でのオカダの顔面への奇跡の一撃
【ノアの清宮海斗、拳王、退団した中嶋勝彦について】
マスター (休憩を経て)イベントを再開させていただきたいと思います。ということでございまして、ノアの話題をね。
金沢 僕はね、いま清宮海斗が大好き。清宮って最初にベルト獲ったときは、会社にチャンスをもらった雰囲気が強かったし、まだまだ若手だと見てたんです。もちろん運動神経はよかったんだけど。過去をちょっと調べてきたんだけど(メモを取り出す)。
清宮は2015年12月9日デビューなんですよ。で、2016 年の5月19日の新宿FACEのライオンズゲート、新日本主催の若手中心の興行。いろんな団体が参加する興行で、川人拓来(現マスター・ワト)とやったときに19歳同士。これでシングル初勝利を挙げてるんです、実は。
そのライオンズゲートに3回連続で上がっているんですよ。ところが2016年暮れに、ノアに政変が起こりまして、ノアと新日本の関係が壊れたんですよね。
マスター はいはいはい。
金沢 もともとノアが非常に会社が危ないってことで新日本が鈴木軍を派遣してってことだったのに。その政変で新日本のスタッフが全員引き揚げた。その翌年ぐらいに海野、成田とデビューして、さらにその翌年2018 年に辻、上村がデビューするという。
僕が本当に清宮を認めたのは、オカダの顔面を蹴りましたよね(1月21日、横浜アリーナ)。あれは奇跡の一撃でしたね。去年の1・8横浜アリーナのタッグ(オカダ&棚橋vs武藤&清宮)でボコボコにやられて、手も足も出ないくらいにやられて、泣いてんじゃねーよとオカダに(リングから)蹴り出されて…その1年後。見事にあの靴紐の跡が付くぐらいにシューズで蹴ったらこう額が切れて、そしてオカダが切れるという奇跡ですよ。オカダが荒れ狂った。
金沢 あの一撃で清宮が大好きになっちゃいました。それでも実力的には全然及ばないかなと思ったら、武藤の引退試合大会でオカダ相手にしっかり根性を見せたじゃないですか。清宮いいなぁと思いましたよね。そしてG1に出た。みんなにさんざん揶揄されてますけどね、決勝リーグに進出できなかったと。
マスター 令和闘魂三銃士と清宮選手が集まったAブロックが話題になりました。
金沢 でも清宮の試合内容はよかった。とくにSANADA戦が素晴らしかったですよ。ベストバウト候補ですよ。残り2秒。19分58秒でしたね、シャイニングウィザードで。やっぱりルーツが同じなんですよ、師匠が武藤敬司だから。2人ともグラウンドレスリング好きだから。SANADAは「頭から落とすだけがプロレスじゃない」。清宮は小川良成から学び、小川は馬場さんから学んでる。天龍の弟子でもあった。
小川って1匹狼だから、人に教えるってことしなかったんですよ。でも清宮にはちゃんと教えたんですよ。だから清宮はふつうに1970年代の技を使いますからね。例えばヘッドロック取ってロープを駆け上がってフライングメイヤーとかやるじゃないですか。あれはザ・デストロイヤーの得意技だからね。いま、あんなの使う人いないから。あとフライング・ヘッドシザース・ホイップとか。あれも1970年代から80年代初めの技ですよね。猪木さんが得意でしたよね。で、ザ・デストロイヤーも得意にしてたんだよね。
そういうクラシックな技をいま見ると逆に新鮮だし、武藤敬司ともちゃんとグラウンドで渡り合える。グランドレスリングで試合を積み立てていて、最後ハイスパートって。武藤は「ハイスパートなんてだれでもできるんだよ」って昔から言ってる。そうじゃなくて、そこに行く過程のグラウンドレスリングこそプロレスの本質だって。そこをお客に見てほしいんだって。
なんでみんなすぐハイスパートするの? それは客がシーンとするのが怖いからだと。だからそれは武藤の持論であって、それを清宮がちゃんとやるから、武藤は清宮のことも認めてるんですよね。自分の息子と同い年だけど。
今の清宮はちょっと小休止みたいになってるけど、大岩陵平を連れてタッグを結成してる。僕は将来はやっぱりノアは清宮だと思ってるから。清宮しかいないと思ってるから。いま拳王が絶大なる支持を得てノアを引っ張ってるけど、おそらく拳王の中にも清宮の存在はずっとあると思うんですよね。拳王はプロレスに対して真面目ですよね。
マスター 拳王選手に関してもお話をお伺いしたいわけですけども。拳王選手のYouTubeチャンネルはご覧になったことありますか?
金沢 撮ってるのは見たことあります。どんなところでも撮ってますよね。人が変わったように「オイッ」って言い始めてね(笑)。
マスター 拳王チャンネル自体もかなり人気で、プロレスラーの発信力を感じます。
金沢 自分自身とノアのためにっていうのは、両方あると思います。
マスター 丸藤正道選手、杉浦貴選手がポスターになかったり、“ノアの顔”がやっぱり変わってしまったのがこの1年なのかなって。やっぱりジェイク・リー選手、拳王選手がど真ん中という感じなので。
金沢 ジェイクはいい選手ですよね。ジェイクは喋りもうまい。ジェイクをもっと目立たせてほしいですよね。ベルト落としちゃったら、ただのジェイク・リーになっちゃったような…。ジェイクと清宮、拳王がもうガンガンやりあうような感じでもっといってほしいなと思います。3人とも発信力があるから。
マスター ノアの動きということでは中嶋勝彦の離脱がありました。
金沢 彼の思考では、アメリカで自分を試したい、これは本当にありました。ところが何かちゃんと決まったものがあって辞めたわけではないんですよ。とりあえずは飛び出そうと。宮原健斗との試合も素晴らしかった、あの試合も僕の中でベストバウト候補。兄弟喧嘩は兄貴が勝ちました。でも、もういちど健斗としっかりやらないと…という思いもあって全日本に行ったんじゃないかな。大晦日の代々木第二体育館で勝負できるカードというと、そのカードにもなりますよね。自然な流れだと思います。その後、中嶋勝彦がどうするかですよね。
揺れ動くスターダム。SNS には弊害もあるけども闇には葬られない
【12月から新体制となる、揺れ動くスターダムに関して】
マスター スターダムの取材でおなじみ、カクトウログさん。
カクトウログ カクトウログです(拍手)。
マスター それにしても先日のジュリア選手のインタビュー、えげつないくらいの反応があったと思います。
【7⃣0⃣0⃣0⃣字インタビュー公開】
ジュリア「フツーの試合をさせてくれ、頼む」 スターダムを取り戻すために#ジュリア #stardom
12・2愛知 AZMとの #njpwSTRONG 戦を展望しつつ…自身・会社・世間それぞれとの闘いを全告白 pic.twitter.com/xTe98H6DcY
— KAKUTOLOG📶プロレス/ボクシング/MMA/格闘技カクトウログ (@kakutolog) November 22, 2023
カク ザワザワするくらいアクセスが来ることはありますが、あんなにジュリア選手に賛同する声しか出ない、そんなインタビューが珍しい気がします。スターダムを応援していたファンも気持ちの持って生き方を失っていたところがあったんだけど、「なんとなく見に行かない」という選択肢もあった中で「ジュリア選手が頑張ってるんだから見続けようかな」という気持ちになれたんじゃないかなと。
マスター 団体側の発信が増える中でメディアが先行するというのは少なかったと思うんです。スターダム公式からは出ない切り口の記事だったというのが、ここ数年レベルでの事件だったんじゃないですかね。
金沢 東スポや週プロが踏み込めないところをいけたと思いますよ、カクトウログが(会場拍手)。
<他にもお言葉をいただきましたが、恥ずかしいので省略>
<4・23横浜アリーナでみんなが実現すると思っていた「ジュリアvs.林下詩美」のシングル初対決が“変更”されるなど、選手の思いと乖離したリング進行が行われたのではないかなどの金沢氏の見立てが語られる。とともに、バックステージで金沢氏がスターダム選手とかわした会話からの感触が語られる>
マスター (事情を確認しようとしたジュリアにスタッフが生返事したと)SNSにジュリアさんが上げないと、会社が動かなかったぐらい。
金沢 だから、今の時代っていうのはSNSには弊害もあるけども、でも瞬時に何かが伝わっている部分では、何かが起きたときに闇に葬られないっていうことがありますね。
それは例えばの話、安倍晋三さんのあの事件に関して、一般の人が動画を撮ったわけじゃないですか? それがなかったらおそらくカメラ回ってるわけないんですよ。例えば地元の取材記者のカメラマンを見ても、動画を回してる人間なんかいないわけだから。ってことは、民間人の力がいかにすごいかを思い知らされたわけで。それが世界中に流されたし。結果的にそれによって統一教会の問題まで全部噴出したわけで。
<金沢さんから直球の指摘が続くが、その場限りの話として割愛>
マスター ジュリア選手が声を上げることでブシロードファイトが総面談になって木谷会長に声が届いたと。
金沢 ここから体制は見直しになるでしょうね。12月から新体制っていうことになってますけども、年内いっぱいかかるんじゃないかなという気はします。聞き取り調査でみんながちゃんと正直に言えば、何が根源かははっきりしてくるんで。そして選手がいい環境でやれる舞台をつくってくれれば、あれだけ選手が揃ってるわけだから、僕は絶対うまくいくと思うし。
ただひとつ、怪我人が多すぎる。これはスケジュールがハードなのもあるしエグい技が多いのもあるんだろうけど、普段しっかりと練習してるのかって、そこにも疑問を持っちゃう。やっぱり首が多い。もう少し基本的な受け身をしっかりやった方がいいんじゃないかなと思って。道場の練習どうなってるのかなっていうのはちょっと不安です。(練習頻度については、イベント翌日にミラノコレクションA.T.もサムライTVにて言及)
女子は特有で体が柔らかいから、ある程度受け身が取れるじゃないですか。でもやっぱり首は致命傷になるから、練習の方もしっかり見直してほしいなと。ミラノコーチだって1か月に1回ぐらいしか行ってないみたいだから、きっちり練習はやってほしいなと思うし。その道場のシステムをもう一回見直してほしい。
<中野たむ欠場に関しての金沢氏の見立ては、1年半くらい前から団体の方向性に疑問を持ち続けている中で試合をしていた。その影響もあったのではないかと>
金沢 でも、たむは大丈夫。必ず帰ってきてくれると思います。
いいところを探す作業をした時に、プロレスの面白いところが見えてくる
【金沢さん選定プロレス大賞予告とエンディング】
<この時代、もう男女別に賞が設けられるべきだろうということで先行発表(当記事としては略)。追っての金沢氏のブログでの発表をお楽しみに。書籍執筆のブランクについては「…死ぬまでにやります」と触れた>
金沢 最初の申込が15人でね、そろそろ店じまいかと思ったんですが、原田克彦さんや中嶋勝彦さんといったいろんなカツヒコさんのおかげでみなさんに集まっていただけました。これで来年もできますか?
マスター みんな来年もやってもいいですか!?(会場拍手)
金沢 決して老害にならないように、現代プロレスもしっかり追いかけて、来年はヌンチャク以上のパフォーマンスを用意しようと思うんです(観客「おー」)が、多分絶対思いつかないと思います(笑)。とにかく是非ね、プロレスファンも減ってきた部分もあるし、周期も早いし、つまんないなと思うところもあるかもしれないけど。プロレスってね、いいところを探す作業をした方が多分いいと思います。
確かにね。つまんない試合もあるけど、いいところを探す作業をした時に、すごくね、面白いところが見えてくるんで。だからプロレスをちゃんと向き合って楽しんでもらいたいなと。これは本当にサッカーでも野球でもない。ゴルフでもない。もっと特殊な世界にあってね。特殊な世界はやっぱりそこに楽しさが絶対あると思う。だからこそプロレスファンってさ、ちょっとしたことにすぐ炎上するでしょ。そこがまた面白いよね。
プロレスをしっかり捉えて、できるだけ会場に足を運んで、楽しんでいただきたいと思います。僕もアップデートしてまた来たいと思いますので、また皆さん来年お会いしましょう。今日は本当にありがとうございました。
<イベント後に…ビッグサプライズ。蝶野正洋が13周年お祝いでカウント2.99に来場を果たす。金沢さんは蝶野と思い出話に花を咲かせていた>