【追っかけ現地レポート】挑戦者不在のアフタードーム埋めた KENTAの大合唱も成功
正月三が日の自分に言ってやりたい。1か月後の2冠王者の初防衛戦で挑戦するのはKENTAだよと! 4強が2冠を争うことで、内藤哲也以外の主力総後退となったアフタードーム。思ってもみなかったアプローチでKENTAが挑戦権を得て、9日、大阪城ホールのメインに立った。
大会結果より。
■ 新日本プロレス THE NEW BEGINNING in OSAKA
日時:2月9日(日)16:00
会場:大阪・大阪城ホール 観衆11,411人(札止め=主催者発表)
[公式サイトより大会結果]<第1試合>
田口隆祐
トーア・ヘナーレ
●本間朋晃
真壁刀義
(7分09秒 ラリアット→片エビ固め)
永田裕志
〇小島聡
天山広吉
中西学<第2試合/IWGPジュニアタッグ選手権試合>
[挑戦者組] ●金丸義信
エル・デスペラード
(16分22秒 STRONG X→エビ固め)
〇SHO
YOH
[第61代王者組] ※SHO&YOHが初防衛に成功<第3試合>
チェーズ・オーエンズ
高橋裕二郎
●タンガ・ロア
タマ・トンガ
(10分50秒 横入り式エビ固め)
飯伏幸太
〇棚橋弘至
デビッド・フィンレー
ジュース・ロビンソン<第4試合>
ザック・セイバーJr.
●タイチ
(11分50秒 レインメーカー→片エビ固め)
ウィル・オスプレイ
〇オカダ・カズチカ<第5試合>
〇ジェイ・ホワイト
(21分52秒 ブレードランナー→片エビ固め)
●SANADA<第6試合/IWGPジュニアヘビー級選手権試合>
[挑戦者] ●リュウ・リー
(23分54秒 TIME BOMB→片エビ固め)
〇高橋ヒロム
[第85代王者] ※ヒロムが初防衛に成功<第7試合/IWGP USヘビー級選手権試合>
[挑戦者] ●鈴木みのる
(17分16秒 デスライダー→エビ固め)
〇ジョン・モクスリー
[第7代王者] ※モクスリーが2度目の防衛に成功<第8試合/IWGPヘビー級・IWGPインターコンチネンタル ダブル選手権試合>
[挑戦者] ●KENTA
(35分50秒 デスティーノ→片エビ固め)
〇内藤哲也
[第70代IWGPヘビー級王者/第24代王者IWGPインターコンチネンタル王者] ※内藤がIWGPヘビー級王座初防衛ならびにインターコンチネンタル王座2度目防衛に成功
東京ドーム大会では、内藤の悲願が叶ったのは半分だけだった。史上初のIWGPヘビー級&インターコンチ2冠は達成したものの、ファンと分かち合うデハポン大合唱ならず。5日のドーム大会メイン後、大合唱に差しかかった内藤をKENTAが襲撃する。ファンをどん底に落としたKENTAが大ヒール化。挑戦決定への疑問の方が大合唱となる逆風を、KENTAは尋常ではない発信力で追い風に変えた。
◆はたして「いい試合」が見たいのか? プロレス永遠の問い
みなさん帰路で口々に「今日よかったわ〜」「最高やな」。大阪城ホール🏯は大爆発!
ボクも名古屋出張から足を伸ばして、遅刻しながらも現地で見届けましたー#njnbg #njpw #新日本プロレス pic.twitter.com/EsiWZ6xU4n
— カクトウログ_プロレス/格闘技 (@kakutolog) 2020年2月9日
とんでもないハッピーエンド興行を見れた大阪ファン。シンプル過ぎる言葉なので照れ臭いけれど、いやはやボクらとしても大いに「楽しかった」んじゃないかと!
前哨戦となったシリーズ期間のこと。公式サイト経由で伝わってくる内藤とKENTAのバックステージ舌戦。SNS時代ならではのファンからのTwitter攻撃を絶妙に切り返していくKENTA。このKENTAのTwitterがいちいちファンの生き様を問う級のもので、実に面白かった。もう「KENTAが勝ったら勝ったで面白い」くらいにファンは傾くほどだったのだ。大阪城でのKENTAへのブーイング大合唱が成功の証となる。
冒頭の5分間はKENTAの“逆トランキーロ”殺法が炸裂。「試合の緊張感が・・・」といった声も出ているが、内藤がこれをやっていたときも、今回のKENTAのそれも最高だよ。それでいて、残り30分は見どころがしっかりある試合に。内藤とKENTAのやりとりをボクらは確かに見ることができた。
昨今のプロレスでは、ずっとドッカンドッカンすることを目指したり求めたりしがち。いつしかアスリートプロレスやハードバンププロレスだけが「いい試合」であるかのようにインプットされつつある。だが、見たいのは闘いであり感情であって、レスラーが背負っている人生観を問いたいわけだ。
◆柴田とオーバーラップした!? KENTA“頂点への1か月”
1月5日から昨日までの1ヶ月間楽しかったよ。お前らも盛大に俺の手のひらで転がってたな。しばらく休戦だ。俺に使う時間があるならそれを大切な人、大切な事に使ってくれ。俺もオフの間までアンチの相手するほど良い人ではない。じゃーまたな。
— KENTA (@KENTAG2S) 2020年2月10日
IWGPヘビー級という頂点に“触れられる”のは、ごくわずかなレスラーだ。2度目があるかもわからない。この1か月のKENTAの発信力は、一世一代の“頂点への1か月”を感じさせた。
2017年にオカダ・カズチカに挑戦した柴田勝頼を思い出す。柴田の場合はレスラー人生初ではなかったが、ブシロード新日本では初だった。前哨戦シリーズでのマイク、バックステージ、各種インタビューでも一世一代を感じさせたものだ。「柴田はこんなことを考えていたのか」「柴田はこんなに喋るのか」サプライズの連続で株を大いに上げた。
柴田とKENTA。かつてソウルメイトとしての絆があった2人だが、共に頻繁に頂点に触れられるポジションではない。だからこその生き様に惹かれもする。アプローチ手法は全く違ったわけだが、ここにきて柴田とKENTAが“頂点への1か月”でオーバーラップするとは思いもよらなかったことだ。
バックステージで内藤は「行動を起こさなきゃ、誰にも伝わらないんだよ。そういう意味では、KENTA選手以上に相応しい選手は今回いなかったのかもしれないですね。そのへん! そのへん他の選手は危機感持ったほうがいいよ。別に褒めるわけじゃないけどさ、ああやって世界を経験したレスラーってやっぱり、ハングリー精神が旺盛なんでしょ。ちょっとでもチャンスがあれば入り込んでやろうっていうね。そういう姿勢、俺は好きだよ。KENTAのそういう姿勢俺は好きだよ。他の新日本の選手は危機感持ったほうが良いよ」と口にする。
KENTAが走り抜けた1か月。いい方向に行ったかどうかの感想は人それぞれだろうが、プロレスが少しだけ広がったことは間違いない。
春のNJCからサクラジェネシス。6月のドミニオン。夏のMSG。秋のG1。2021年のイッテンヨン。それぞれの局面で誰が名乗り出て、どういう道筋ができていくのか。2020年もプロレスは進んでいく。