【記憶の懸け橋】幻の「安生vs.ヒクソン」横浜興行 ゴングが主催断る マスコミ編
小佐野 夢の懸け橋は前の年の年末からチラホラと話は聞いてました。ウチはどうしたもんかなぁ・・・公正な報道ということでは、東スポのオールスター戦のようなものならば盛り上げなきゃ筋としておかしいかなぁなんて(考えてた)。
山本 年始のゴング(1月19日号)表紙にも『夢の掛橋』と出てて、被ってる。(偶然だったが)やられたと思ってねぇ。
小佐野 出場を打診された複数の団体が「いや山本さんが・・・(打診してくることには断れない)」ってボクの前で言うんですよ。なめんなよ!! 主義主張があるから、団体が分かれていったんでしょ。それがマスコミの顔色を気にするなんて、何のための多団体時代なんだと。(この点は『週プロ黄金期 熱狂とその正体』(双葉社)の中でも言及していた。)
山本 4月2日は日曜日でしょ。どこかが東京ドームの隣の後楽園で大会を予定していた可能性があったんだけど、関係の悪い団体・・・WARだという予感がした。やはり・・・。これが運の尽きですよっ!!
小佐野 11月半ばの会議でゴングはどう報道するかを話し合ったんだけど、(編集長である)小佐野くんはどうしたい?って。要するに丸投げなんですよ。だったら「反対」でいこうと。自分に失うものはなかったし、売れなければ降りればいいし、自分の独断ですね。それが編集長ということなんで。
ゴングにも反感すごかったですよ。当時はFAXとかですけど。ここから自分の意見として記事を書きたいということで、署名記事が始まりましたよね、(週プロに続いて)ゴングでも。この出来事があったおかげです。
なぜ反対したか? 山本さんが力を持ち過ぎているのがシャクというのもあったけど、マスコミが主催していいのかっていうことですよね。あのころ「ヒクソン・グレイシーvs.安生洋二」を横浜アリーナでゴングさんで(主催)やってという話がUインターから来ましたよ。でもウチは「主催できない」んでって・・・。
山本 週プロはマイナーパワーであるはずが、メジャーになってしまった。(ゴングに攻められる存在になって)終わったと思ったよねぇ。
でも、長州(力)はどうしようもない。「ウチは(こういうオールスター戦は)できない。第三者がやるしかないから喜ばしいことだ」って言ってたのに、WARが自団体興行をやることになって流れが変わると、あっちとやる(WAR大会に出場)。
小佐野 「山本は間違ってる」と長州さんは言ってました。でも、(ドームと後楽園の)両大会メインを新日本で取ってるのはすごい。業界を考えても両方が超満員になったというのはよかった。
山本 MVPはゴングですよぉ!!
小佐野 お互いに盛り上げになった。
山本 小佐野さんと口をきいたことはあまりないですけど。
小佐野 そうですかね? 対談の記事もやりましたよ、20年前くらい?
山本 (収支の話に)ドームを借りるのに1億円。支払ったギャラ9000万円。収支は・・・見なかったですね。それを見てしまったら、もうプロレスをそういう目で見てしまうようになって書けなくなると思ったから。パンフと増刊号では儲かったことはわかってるんだけど。
会長には「社史最高のことをやった。でも報酬の規定がないから」ってことで茶封筒をもらった。その中身がたった10万円ですよぉ!! 編集部に配っても数万円ずつだから悲しくてね。競馬に使ったけど。
鈴木 くださいよぉ!!
小佐野 WARの天龍(源一郎)さんと武井(正智)さんは、このことで結束しましたよね。ドームで山本さんにブーイングが起きたこと? 聞いてカチンときました。ブーイングするくらいなら(ファンは)行くなよって。
山本 まぁ、ブーイングは大衆としては間違ってないから。
小佐野 反応がないよりいいか。あの時代は他団体を「本当に潰してやろう」という気概がありましたよねぇ。
山本 25年経ったらみんな和解しててねぇ・・・ショックだよっ!!
【長州力がKAMINOGE編集長の井上崇宏氏を山本と呼んでいることについて。】
山本 “山本”は俺から来てるんだよ。
小佐野 そうだろうなと思います。
山本 (天龍番のイメージの)小佐野さんがあんな分厚い鶴田本(『永遠の最強王者 ジャンボ鶴田』ワニブックス)を書くのは意外だった。
小佐野 SWSと全日本を両方取材したかったんですよ。この記者はこっちというように色分けされるようになってしまいましたよね。
夢の懸け橋は「青春」でした。力いっぱい闘える場があったし、命を懸けてた。
山本 敵(ゴング)を本気にさせたことが、ボクの敗北ですよぉ!!