
「引退ロードなき引退試合」という答え 中野vs.上谷敗者即引退4・27横アリ
3日、スターダム『STARDOM NIGHTER 2025 in KORAKUEN Mar.』後楽園ホールにて「中野たむ vs.上谷沙弥」敗者スターダム退団スペシャルシングルマッチが行われた。
中野vs.上谷ワンモア。中野「あんたを倒すチャンスが得られるなら、全部捧げてもいい」
<第8試合/敗者スターダム退団スペシャルシングルマッチ>
●中野たむ(COSMIC ANGELS)
25分39秒、カミゴェ式ビッグブーツ→片エビ固め
〇上谷沙弥(H.A.T.E.)
20時39分にゴングが鳴る。オープニングでは「たむ」コール優勢。早々に上谷サイドのH.A.T.E.勢が介入し、観客がブーイングを浴びせる。上谷がチェーン絞首刑を見せると、観客からは「こんな試合でいいのか」との怒号も飛んだ。上谷は落差ありのフランケン(エプロンから&コーナーから)。中野は場外ダイブで舞う。エルボーのラリーから両者ダウン。フィニッシュ級の技が重ねられても決まらないエンドレスラリーに突入。H.A.T.E.をCOSMIC ANGELSが排除するが、上谷は椅子攻撃からフィニッシュへ。25分39秒、カミゴェ式ビッグブーツが勝敗を決す。無料配信のYouTube視聴者は最高6.2万人を記録した。
中野のリングインをコズエンが見守る。
中野のボムか上谷のフランケンか…譲らない。
場外への宇宙旅行。羽根がついたかのように中野が飛んだ。
エルボー、張り手がラリーとなって感情がぶつかる。顔がゆがむ。
上谷が憧れの飯伏幸太流のカミゴェの構えから…
25分39秒、カミゴェ式ビッグブーツ。
コズエンに支えられながら引き上げる中野。
上谷「(リング上から)おい。おい中野たむ。本当にこれで終わりか?」
【観客「オオッ?」「お前が言うな」「たむ!!」「たむさん!!」】
うつむいて震え泣きながらしばらく躊躇する中野。たむコール、手拍子発生。「どけ!!」と声を出し、走ってリングに戻る中野。上谷にエルボーを見舞う。
中野「こんなんで納得できるわけねぇだろ。上谷、あんたはこれで、こんなんで、本当に満足なのかよ!!」
上谷「みじめだなぁ。お前さぁ、本当に退団するつもりだったの?(中野は頷く) こんな哀れなやつ見たことない。私はまだやり足りないけどなぁ~(拍手)。じゃあ最後に1つだけチャンスをやろうか。次は何を懸ける?」
【観客「上から言うなよ」「お前が言うな」「うるせぇ」】
中野「(野次を制するように)黙って」
上谷は観客にアッカンベー。
中野「(震えながら)もうどうなってもいい。全てを失ってもいい。あんたを倒すチャンスが得られるなら、全部捧げてもいい」
上谷「じゃあ、この世界から消えるってこと?」
中野「『引退』を懸ける」
上谷「あ~、本当にコイツ面白れぇな。わかったよ。お前が引退を懸けるなら、私だって引退を懸ける。そして赤いベルトも。場所はもちろん、4・27横浜アリーナ。泣いても笑ってもこれが最後。負けたら即引退。ラストダンスだ~!!」
4・27横浜アリーナでの最終決着戦へ。敗者即引退&ワールド戦が決定となった。
■スターダム
カードファイト!! ヴァンガード Divinez presents ALL STAR GRAND QUEENDOM 2025
日時:4月27日(日)15:00
会場:神奈川・横浜アリーナ
<ワールド・オブ・スターダム選手権試合/敗者即引退マッチ>
[第20代王者]上谷沙弥
vs.
[挑戦者]中野たむ
※上谷が2度目の防衛戦(この日までに同タイトル戦が行われなかった場合)
他団体引退ラッシュへのアンチテーゼ。仕掛けは移籍シーズンを連想させるところから
2月24日、「敗者退団マッチ」が決定。スターダムでは1年前に5人の退団があったばかり。移籍シーズンと結び付けた発想を誘うアプローチであることは明らかだった。“1年前の移籍先”マリーゴールドをネタにした記事も予見できたし、後日、実際にそういう記事も出る。
ジョインするのもメディアとしては望ましいのかもしれないが、中野・上谷の「移籍」「独立」は考えにくい。横浜アリーナ大会も2か月後に迫っているのだ。当サイトとしては「敗者退団マッチ」決定日の2月24日、「どちらかがスターダムからいなくなる!? 退団の意味合いは「移籍」「独立」「引退」が考えられるが…」と整理させていただいた。
2025年は4月に里村明衣子(センダイガールズ)、5月に高橋奈七永(マリーゴールド)が引退。年明け1月には棚橋弘至(新日本プロレス)が引退となる。
スターダムによる「敗者即引退マッチ」実施は、いわば他団体引退ラッシュへのアンチテーゼともなった。「あらかじめ引退試合が告知され、おのずと当日までが引退ロードとなる」形式とは一線を画す。一定割合のファンから反発を食らうであろう方法を、選手と団体がチョイスした。
プロレスにおける退団や引退は、よくも悪くも一歩引いて受け止められる。約束を守るのも覚悟なら、約束を破るのも覚悟。摩訶不思議なジャンルである。
「敗者退団マッチ」決定の1日前、2月23日。上谷はテレビ画面の中で『千鳥の鬼レンチャン』女子300m走サバイバルに出場していた。「プロレスを色んな人に見てもらいたい」という涙の訴えと激走がSNSでもバズり、凶器や介入などの表層に隠れたところこそが、プロレスファン以外にもぶっ刺さるんだと思えた。
対戦した中野も「宇宙一かわいいアイドルレスラー」と名乗り、「100年に1人の逸材」と自らを称す棚橋弘至の覚悟を彷彿させる。「チャンピオンベルトを目指さなくなったときが、引退するとき」が棚橋の主張なら、加えて中野には「世間を巻き込む仕掛けができなくなったときが、引退するとき」くらいの気概が感じられる(もちろん棚橋の気概も言うまでもない)。
ぶっちゃけると、記者は「横浜アリーナが誰かの引退試合になるならば、棚橋ばりの各所挨拶ツアーを経るのが幸せではないか」と考えていた。だけれども、後楽園に足を運んで試合とマイクを目・耳にし、それがプロレスを広めるための2人の決断であれば“貫く”のが幸せかもしれないと思えた。
中野が「黙って」と叫び、上谷がアッカンベーを出す。まるで踏ん切りをつけているようだった。退団マッチという約束を破り、生き様という約束を守る。2人を追おうとしているファンは、退団マッチや引退マッチという表層の向こう側にこだわり続けたいのかもしれない。
【3/5 08:45追記】
4日の夜、中野がスターダム会見に出席し、「フリーの中野たむです。昨日、敗者退団マッチで敗北して、このたびスターダムを退団させていただく運びとなりました」とコメントした。4・27横浜アリーナ大会まではフリー参戦(参戦大会は今後発表)、以降は横浜アリーナの結果次第(中野勝利なら再契約を含む検討が見込まれる)となる。
もちろん退団マッチに込められていた両者の文脈は「3・3後楽園で負けた方がスターダムからいなくなる」こと。それが3・3後楽園ではなくワンモア4・27横浜となったことは変わりがない。
(大会結果)スターダム STARDOM NIGHTER 2025 in KORAKUEN Mar. 3月3日(月)後楽園ホール
メイン(中野たむvs.上谷沙弥)のYouTubeアーカイブ
■スターダム STARDOM NIGHTER 2025 in KORAKUEN Mar.
日時:3月3日(月)18:30
会場:東京・後楽園ホール 観衆1635人(札止め/主催者発表)
<第1試合/タッグマッチ>
HANAKO(E neXus V)&●姫ゆりあ(-)
6分33秒、桜花爛漫→体固め
〇さくらあや(COSMIC ANGELS)&鉄アキラ(-)
<第2試合/6人タッグマッチ>
鈴季すず(NEO GENESIS)&〇ジュビア&タバタ(CMLL)
6分51秒、変形ゴリーボム→片エビ固め
葉月&コグマ&●向後桃(STARS)
<第3試合/8人タッグマッチ>
なつぽい&安納サオリ&水森由菜&●玖麗さやか(COSMIC ANGELS)
9分34秒、pink??devil→片エビ固め
小波&琉悪夏&〇吏南&稲葉あずさ(H.A.T.E.)
<第4試合/6人タッグマッチ>
朱里&●鹿島沙希&妃南(God’s Eye)
0分35秒、起死回生
岩谷麻優&●羽南&飯田沙耶(STARS)
<第5試合/6人タッグマッチ>
舞華&月山和香&●梨杏(E neXus V)
11分0秒、毒グモ・デス・ドロップ→片エビ固め
刀羅ナツコ&渡辺桃&〇テクラ(H.A.T.E.)
<第6試合/ハイスピード選手権試合>
〇《王者》星来芽依(NEO GENESIS)
(2-1)
●《挑戦者》フキゲンです★(H.A.T.E.)
1本目:星来、0分47秒、流れ星
2本目:フキゲン、0分41秒、後方回転エビ固め
3本目:星来、1分47秒、さよなら✌→エビ固め
※星来芽依が5度目の防衛に成功
<第7試合/アーティスト・オブ・スターダム選手権試合>
《王者組》スターライト・キッド&〇AZM&天咲光由(NEO GENESIS)
19分50秒、ヌメロ・ウノ
《挑戦者組》●レディ・C&稲葉ともか&八神蘭奈(God’s Eye)
<第8試合/敗者スターダム退団スペシャルシングルマッチ>
●中野たむ(COSMIC ANGELS)
25分39秒、カミゴェ式ビッグブーツ→片エビ固め
〇上谷沙弥(H.A.T.E.)