高橋奈七永「対戦相手と“同じ目線”にいくんです」 パッションとは何か
女子プロレス界の人間国宝と称される高橋奈七永が5月に引退となる(5・24代々木競技場第二体育館)。とはいえ、頂点獲りの炎はますます燃え盛るばかりだ。9日のマリーゴールド記者会見ではツインスター選手権試合に向けての意気込みを表明。会見後にはカクトウログの独自インタビューに応じた。
(記者会見)2025年は、私は5か月で、マリーゴールドにパッションをもっともっと刻んでいきたい
■マリーゴールド New Years Golden Garden 2025
1月19日(日)後楽園ホール 11:30AM
<ツインスター選手権試合>
[第3代王者組]ボジラ&タンク
vs.
[挑戦者組]高橋奈七永&山岡聖怜
※ボジラ&タンクは初防衛戦
ボジラ「みんな知ってると思うけど、私はシングルプレイヤーだ。なぜなら私は最強で最大で最も危険な人間だからだ。タッグタイトルなんてどうでもいいけど、自分が一番だと思ってる無名のルーキーや、もうすぐ引退するババアには負けない。奈七永、私は以前アンタを倒したことがある。また同じ目に遭わせてやる」
タンク「私が一人でもやれるようにボジラもパートナーが必要ないかもしれない。でも、1月3日のタイトルマッチでみんなに見せたように、私たちはここで一番強いし、長く王者で君臨できると思っている。だって奈七永、彼女のパートナーを見ればわかるでしょ」
奈七永「何笑ってるのよ。笑うな。こんにちパッション!! 高橋奈七永です。正直、2024年の高橋奈七永はどこか迷いがある中で闘っていた部分もあるのかもしれません。ですが、2025年の高橋奈七永はひと味違う!! なぜならば、私には時間が限られているから。悩んでる暇などないし、立ち止まってる暇もありません。2025年は、私は5か月で、マリーゴールドにパッションをもっともっと刻んでいきたいと思ってます。まず狙うのは、このタッグのベルト!! タッグっていうのはお前な、1人でできないんだよ。君たちさ、なんかパートナーいらないみたいなこと言ってるから、もうそこがもうダメ。ダメダメダメ…ダメだと思います。私はプロレスのタッグが大好きです。数々のパートナーとタッグのベルトも獲ってきました。今回タッグのベルト、狙いに行くのは、パートナーは(マリーゴールドでデビューしたばかりの)一番若い山岡聖怜。笑ってんじゃねーよ、てめえほら。ドントラフ!! 聖怜には可能性しかないと思います。まだ何色にも染まってないですし、これからどんなプロレスを身につけていくのかわかりません。可能性しかありません。私が英才教育でパッションを伝えるとともに、私にもまだまだ可能性があるってものを見せていきたいと思いますし。ボジラ、お前にもっとプロレス教えてやるよ」
ボジラ「ティーチミー!?」
奈七永「おう!!」
(言い合いになる)
山岡「背番号18番、山岡聖怜です。まず、奈七永さんにご指名いただいて、本当に本当に嬉しかったです。でもこのチャンス絶対に逃す気ないんで。私は奈七永さんと絶対にベルト獲ります」
(王者組が嘲笑したことから乱闘に。挑戦者組が攻撃を食らう)
奈七永「試合でやり返すぞ、パッショ~ン!!」
山岡「パッション!!」
(奈七永インタビュー)プロレスの格闘技と違う最大のところが“技を受ける”ところ、“受け止める力”なので
カクトウログ ちょっと今日、いきなり乱闘になってしまいました。タイトル戦、警戒しないといけないところはどこにあるとお考えですか。
奈七永 警戒は…やっぱりパワーが桁違い。ボジラとは何試合もしてる、わかってる部分があるんですけど。
カク はい。
奈七永 タンクが本当に来日したばっかりで、私はまだ対戦もしてないですし、全然未知数なので。そこはやっぱり警戒すべきところかなと思います。
カク そんな中でベルトを狙っていくわけですが、高橋奈七永選手の試合で、マリーゴールドで言うなら12・13新宿大会でのSareee戦もそうなんですが。
奈七永 はい。
カク 9・28名古屋での青野未来戦。
奈七永 はいはい。
カク 凄い試合だなと思っていて(前のめりに)。
奈七永 ありがとうございます。
カク いえいえ、こう結構…極限まで“受ける”じゃないですか!! 相手の攻撃を。
奈七永 はい。
カク あれだけ受けるっていうのはすごい覚悟がいることだと思うんです。その、他のレスラーにはない覚悟のほどっていうのは、どういうところから生まれてくるのかってのが、すごい知りたくってですね。
奈七永 ハハハッ。
カク それはやっぱり長く続けてきたものがあってのことなのか、何かこう心がけていることがあるのか、その辺が。
奈七永 まず、原点を…今お話し言われて思い出したのは、私、全女(全日本女子プロレス)の出身なんですけど。
カク はい。
奈七永 全女でたくさんの先輩に揉まれてきたんです。そのとき豊田真奈美さんが、すごい技を受けて受けて受けて、それで倍以上の力でお客さんを盛り上げて満足させて。
カク はい。
奈七永 家に返すみたいなスタイルだったんですけど、「豊田みたいになんなきゃだめだよ」っててて、松永高司会長に言われてたんです。
カク そうだったんですね。
奈七永 言われてて、だから、割と若い頃からその意識はあって。
カク はい。
奈七永 人よりやっぱり技を…受けたい。受けたいし、それは私の力を誇示するためでもある。私はあなたの技を受けても負けない。
カク うーむ。
奈七永 まだ立ち上がるという姿を見せるためにも“相手よりも技を受ける”だし、私プロレスの魅力って一番そこだと思う。格闘技と違う最大のところが“技を受ける”ところ、“受け止める力”なので。やっぱそれがなんか、いわゆる人間力にもつながると思ってて(笑)。
カク うーむ。
奈七永 プロレスラーは受け止める強さがないとダメだと私は思っている。
カク なるほど、なるほど。
奈七永 そういうものを1試合の中にも凝縮して見せていきたいっていうのは、もう常に心がけていることではあります。
カク 大変よくわかりました。
奈七永 ハハッ。
カク マリーゴールドの選手に当てはまるかはわかりませんが、自分が早く第一線に行こうとしたときに、どうしてもこう“攻撃”の方を見せたいっていうふうに思う(受けへの意識がおろそかになる)選手もプロレス界に多かったりするんですけど。
奈七永 はい。
カク そういう選手の主張に接したりもしますか。
奈七永 ああー、まあ、なくはないですね。
カク そういうときアドバイスされたりするんですか。
奈七永 私はあんまり…アドバイスしないですね。
カク そうなんですか。
奈七永 なんか求められればしますけど、なんだろな、その子が求めてないことを言っても響かないですし。
カク うーむ。
奈七永 だから、アドバイスするときは相当(言葉を)選んでいますし、何よりやっぱ“試合で対戦”するのが一番だと思ってるんで。
カク はい。
奈七永 試合で伝えたいっていうのが一番にあります。
カク ご自身のプロレスのスタンスはあるけれど、必ずしも誰かに言葉にするわけではない。
奈七永 ないですねぇ(しみじみと)。盗んでくれよと。
カク うーむ。
奈七永 思いますし。でもそれぞれ今みんな“自分はこうしたい”っていうのを持って試合してると思うので、そういうのも、それぞれいいところもあると思うから。
カク うんうん。
奈七永 その背中を押してあげれたらいいなと思ってはいます。
(奈七永インタビュー)里村は的確な重さがある攻撃。これだわ、これだわっていう…なんか目が覚めました、マジで
カク なるほど。先ほど会見で「2024年の高橋奈七永はどこか迷いがある中で闘っていた部分も」というコメントがあって。
奈七永 はい。
カク もちろん引退を表明されたっていう節目が大きかったとは思うんですけれど、今やっぱり結構スイッチが入った感じですかね。
奈七永 そうですね。1月3日から、初っ端から里村明衣子選手と試合、タッグですけど、試合できたっていうのもめちゃくちゃ大きくて。
カク はい。
奈七永 里村選手も4月に引退決まってて、私は5月で、まあ1つの時代を引っ張ってきた選手だと思うんですけど…私も里村選手も。
カク はい。
奈七永 その終焉っていうものを思いっきりみんなの心に刻み込みたい気持ちがあるので。後悔しても取り戻せないし、かなりギアをガッと上げていきたいなと思ってます。
カク 先ほどその言葉にまではしないけれども、その試合をもって伝えたいって言葉がありましたけど、その格好の相手の1人にはなってきますかね。
奈七永 ああ、もう、もう、もう(笑)。
カク (笑)
奈七永 もうキャリアのほとんどやっぱ、私は里村選手を意識してきたので。
カク はい。
奈七永 里村選手のおかげで今があると言っても過言ではない選手で。1月末にシングルも決まってますし。最後まで進化していきたいですね。
【「ジャイアント馬場没25年追善」興行1・31後楽園にて奈七永vs.里村】
カク 大田区で手を合わせたときは、何か感触はありましたか。
奈七永 いやあもう、ありまくりです。ありまくりっていうか、やっぱ攻撃の一つひとつが近年では感じない重さ。なんかこのボジラとかのでかいパワーとまた違うんですよ。
カク うーん、そうですか。
奈七永 的確な重さがある攻撃だったんですよね、全部。これだわ、これだわっていう…なんか目が覚めました、マジで。
カク そうだったんですね。
奈七永 はい。
カク 気迫だったり、技の重さだったり。
奈七永 そうです、そうです。里村明衣子の目力とか、オーラとか、凄いですからね。同じリングにいたら、もう蹴りがビシバシ来るんで、その刺激ってもう最高で(笑)。
カク シングルではもっと味わうことに。
奈七永 はい、楽しみですし、私のパッションを思いっきり焼き付けに、肌にパッションって残っちゃうぐらいのパッションを里村明衣子に刻みたいと思います。
(奈七永インタビュー)“対戦”するから(現実には)違うんだけど、“肩組みにいく”のが私は得意なんだろうなと
カク 先ほどあんまり言葉にしないところもあるっていう話はあったんですけれども、ボクは奈七永選手の試合を見ていて。
奈七永 はい。
カク 若手からメイン級の選手まで、どの選手とやってもなんかこう…熱さを生むっていうのが凄い特殊だなと思っていて。
奈七永 はいはい。
カク そうするために…これも本当に教えてほしいことばっかりなんですけど。
奈七永 ハハハハハッ。
カク 心がけていることとかありますか。
奈七永 ああ…誰のことも“上から見ない”っていうか、対戦相手と“同じ目線”にいくんです。
カク うーむ。
奈七永 で…“対戦”するから(現実には)なんか違うんだけど、なんか“肩組みにいく”イメージ。
カク はい。
奈七永 肩組みに行って「よしやろうぜ」みたいな。というのがたぶん私は得意なんだろうなと。けっこうキャリアがあったりすると「私はここにいるからお前やってこいよ」みたいな(選手も他にはいるとは思うんですが)。
カク うーむ。
奈七永 それも私はかっこいいと思うんですけど、その闘い方も。私は、なんだろ、例えばデビュー戦の相手もこの間にしたんですけど(12・26後楽園、咲村良子デビュー戦)、その子の持ってる少ない技とかも知ってますし、私は何でもできるし、もっといっぱい技あるし。(というところで)「お前どんだけできんの」っていう会話の仕方しても面白くないと思うんですよ。
カク うーむ。
奈七永 (その試合を)見てる人が。なので、なんか技の数なんか私も出さなくていいし、それよりも気持ちをぶつけ合うことの方がプロレスにおいては絶対に必要なことなので。技に頼らないことですかね。
カク うーむ。単にやったやられたっていう技のやり取りをするんじゃなくて、もっとこう、その人の中心にあるところに問いかけるような?
奈七永 そ、そ、そ、そ、そう。
カク そういうところを心がけている。
奈七永 そうですね。なんか(イメージとして)肩組んだり、その子の心の扉を何かトントントンと叩いてみたり。
カク へぇ~。
奈七永 「おーい」って開けてみたり。様子を見ながら問いかけるように。それをキャリアがあろうがなかろうが、それに合わせていく引き出しをとても多くするように増やしてきた。いろんなスタイルの選手ともできるようにいろんな練習もしてきたし、やっぱ場数を踏んできたので、それができるのかなと思ってます。
カク 12月30日の大会で奈七永選手が紹介されるとき山岡選手が涙ぐむ場面があって。奈七永選手への信頼が感じられました。山岡選手には特別にこうアドバイス的なことも言ったりすることあるんですか。
奈七永 聖怜は…もちろんデビューまでの練習でちょいちょい教えたりすることも多かったですし、この前も悩みを聞いたりとか。
カク そうでしたか。
奈七永 そういう機会もあったりしたんで。だから“心と心”で会話ができるんじゃないかなと思ってます。
カク 先ほどの会見の言葉でも「可能性しかない」と。やり取りをしてて感度の良さを感じるところは。
奈七永 そうですね。やっぱりアマレスを経験してて、(道のりは)一緒ではないんですけど、本人がプロレスを吸収したいっていう気持ちが本当に高いので。“何でも吸収したいです”みたいな。
カク うーむ。
奈七永 すごい意欲を感じるし、言ったらすぐできちゃったりとか。とにかく目指すところが高いんだなぁというふうに感じてます。
カク この前の大田区でのデビュー戦も、デビューした方が「延長」要求なんて見たことない(笑)。
奈七永 前代未聞で(笑)。
カク ちょっと心臓が違うなって。
奈七永 違いますね!!
カク レスリング出身者が感情を出すのも苦手だったとしてもしょうがないんですが、山岡選手はまた違うようにも思います。
奈七永 そうですね。すぐ泣くし。
カク (笑)
奈七永 フフフッ。感情豊かで。だからプロレスに向いてるんじゃないですかね。
カク 引き出しがいがある。
奈七永 そうですね。隣に立つっていうのも勉強になってくれるだろうって思いますし、私も聖怜の若さを、エキスを(笑)。もらって若返ってですね。
カク はい。
奈七永 元気にパッションしていきたいなと。
カク ちょっと先ほどの里村選手の話で言うと、お互いがこう女子プロレス大賞を受けたことがあって、そういう中でご自身のプロレス人生のハイライトをもう1回出していくような意欲も。
奈七永 そうですね…ハイライト。
カク もちろん「上回っていくぞ」と思われているんでしょうけれど。
奈七永 フフフフッ。はい、なんか思い出づくりみたいにはしたくないので。今の高橋奈七永と今の里村明衣子の純粋なシバき合いをして、その闘いでお客さんの心を魅了できる試合ができるんじゃないかと思うので。そんな闘いがしたいです。
カク 里村選手だけじゃなくて、これからも、より多方面に喧嘩を売っていくという決意もあるんでしょうか。
奈七永 そうですね…。
カク まだ秘密?(笑)
奈七永 そうです。楽しみにしてもらいたい(笑)。
カク 考えてることはいろいろあると。
奈七永 はい。
カク それはちょっと、ぜひ楽しみに。
奈七永 はい。
カク したいと思います。あと5か月になってしまいましたけど、言葉にできる範囲で、こういうことを伝えたい、残したいみたいなことはありますか。
奈七永 …プロレスへの愛ですかね。すべては愛だと思う。
カク おー。
奈七永 最終的に行きつくところは。なので、愛があるから相手の技も受け止めたいし、お客さんに伝えたいし。愛があるからプロレス界に恥ずかしくないように自分がしっかり存在しようと努力できるし。そういう愛を持ってプロレスに取り組める選手をもっともっ増やしていくことが、プロレス界にとってもマリーゴールドにとってもいい作用が生まれていくと思うんで。
カク はい。
奈七永 そういうところを伝えていかなければいけないなと思います。
カク ツインスターの試合、期待しております。
奈七永 はい、ありがとうごどいます!!
カク 貴重な話が聞けてよかったです。
♯7 高橋奈七永
女子プロレス界の人間国宝
◆生年月日:1978年12月23日
◆出身地:埼玉県川口市
◆身長:165㎝
◆体重:65㎏
◆デビュー戦:1996年7月14日、後楽園ホール(vs中西百重)
◆得意技:冷蔵庫爆弾、ワンセコンドEX、ナナ☆ラッカ、ラリアット
◆タイトル歴:初代ワールド・オブ・スターダム、第5代&7代&25代ゴッデス・オブ・スターダム、5★STAR GP2013優勝、2010年度女子プロレス大賞
◆アニマル浜口ジム出身で全日本女子プロレスに入門。中西百重とのナナ☆モモで倒産後の全女の救世主となり、最後のWWWA世界シングル王者に君臨。全女解散後はプロレスリングSUNに参画。フリー転向後はパッション・レッドを結成し各団体の王座を総なめし大活躍。スターダムの旗揚げに参加し初代ワールド王座を奪取。V7を達成し団体の礎を築いた。2015年5月にスターダムを離れSEAdLINNNGを設立し代表に収まるが2021年12月をもって退団。2022年8月に朱里の持つ赤いベルトへの挑戦は、ザ・ヒストリーと題された。スターダムのご意見番として若手にその熱いエネルギーを注入し、新しいファンから大喝采を受けた。2024年5月旗揚げのマリーゴールドでは所属選手となり、“最後のリング”とすることを決意。2024年12月13日には“2025年5月マリーゴールド1周年大会での引退”を発表した。合言葉は「パッション!」だ。
1月13日(月祝)中日ホール、1月19日(日)後楽園でタイトルマッチ開催
9日の記者会見では、天麗皇希が1・3大田区大会での負傷について左膝前十字靭帯断裂と報告した。松葉杖で現れ、「今後は治療に専念し、医師と相談しながら(5月・代々木大会での)復帰を目指す」とした。
MARIGOLD NEWYEARS GOLDEN GARDEN
1月13日(祝・月)中日ホール 2:00PM
◆マリーゴールド・ワールド選手権試合
〈王者〉林下詩美vs 〈挑戦者〉タンク
※林下詩美は初防衛戦。
New Years Golden Garden 2025
1月19日(日)後楽園ホール 11:30AM
◆ツインスター選手権試合
〈王者チーム〉ボジラ&タンク vs
〈挑戦者チーム〉高橋奈七永&山岡聖怜
※ボジラ&タンクは初防衛戦。
◆ユナイテッド・ナショナル選手権試合
〈王者〉桜井麻衣vs 〈挑戦者〉野崎渚
※桜井麻衣は初防衛戦。
◆スーパーフライ級選手権試合
〈王者〉ビクトリア弓月vs 〈挑戦者〉真白優希
※ビクトリア弓月は初防衛戦。