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怪獣大戦争とウルトラマンをめぐるサイコロジー ノア4・29名古屋感想

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 ゴールデンウイークの幕開け決戦。ABEMA配信となった4月29日のノア名古屋国際大会の感想を。

大会結果 ノア NOAH the GLORY 2021 4・29愛知・名古屋国際会議場イベントホール

■ プロレスリング・ノア NOAH the GLORY 2021
日時:4月29日(木祝)15:00
会場:愛知・名古屋国際会議場イベントホール 観衆718人(超満員=主催者発表)
ABEMA見逃し配信]※大会終了から3日間
ベストバウト&大会評価投票アンケート]※5月7日24時まで

<第1試合>
〇YO-HEY
吉岡世起
大原はじめ
 11分54秒 顔面G→片エビ固め
●矢野安崇
原田大輔
小峠篤司

<第2試合>
●宮脇純太
齋藤彰俊
 11分49秒 ヴァーティカルスパイク→体固め
仁王
〇中嶋勝彦

<第3試合>
△進祐哉
 11分02秒 ダブルフォール
△鈴木鼓太郎

<第4試合>
●井上雅央
谷口周平
モハメド ヨネ
 10分48秒 サソリ固め
ケンドー・カシン
村上和成
〇桜庭和志

<第5試合/GHCジュニアヘビー級タッグ選手権試合>
[挑戦者] ●NOSAWA論外
日高郁人
 18分36秒 超高校級ラ・マヒストラルを切り返して→エビ固め
HAYATA
〇小川良成
[第42代選手権者] ※小川&HAYATAが5度目の防衛に成功
【吉岡&YO-HEYが挑戦表明】

<第6試合>
●岡田欣也
稲村愛輝
清宮海斗
 17分36秒 新型虎王(仮)→片エビ固め
田中将斗
望月成晃
〇丸藤正道

<第7試合/GHCナショナル選手権試合>
[挑戦者] 〇杉浦貴
 18分08秒 オリンピック予選スラム→体固め
●藤田和之
[第4代選手権者] ※藤田が初防衛に失敗。杉浦が第5代王者に
【桜庭が挑戦表明】

<第8試合/GHCヘビー級選手権試合>
[挑戦者] ●マサ北宮
 22分53秒 シャイニングウィザード→体固め
〇武藤敬司
[第34代選手権者] ※武藤が2度目の防衛に成功
【丸藤が挑戦表明】

出たぞ第三者踏み台式シャイニング・ウィザード 武藤敬司20年越しの思い出

 「フジタvs.スギウラ」ナショナル戦。

 一時期の藤田は相手とスイングしないことで、プロレスファンから「プロレスができない」レッテルを貼られた。それがどうだ。ベルト奪取した拳王戦、ベルト陥落となったもののこの日の杉浦戦、大興奮ではないか。むしろ「本物のプロレスが藤田にある」感さえ漂う。前哨戦段階で藤田が杉浦を沈めた後楽園も凄かったが、しっかりと上回ってビッグマッチのセミを務めてみせた。

 前哨戦もこの日も両者「怪獣大戦争」Tシャツ着用でリングイン。コンセプトでも迷いなし、究極のフィジカル戦は歴の長短を問わないファンを酔わせた。「目をそむけたくなるほど」とも「笑っちゃうくらい」とも表現できるエルボーの打ち合い。後楽園では藤田のサッカーボールキックが決め手となったが、本戦は杉浦による同じ技が決定打。こねくり過ぎない、シンプルイズザベストである。

 ノアとの相性も藤田は良かったんだと心から思う。黙々と闘いを積み重ねてきたノアのレスラーズは逃げませんよと。その象徴が杉浦なんだと。

 ジーンとするコメント。杉浦も苦しいノアを支え続け、今は“荒くれ者をまとめる”ボスを楽しんでいる。

 「ムトウvs.キタミヤ」GHCヘビー戦。

 何度か当サイトでも書いた気がするが、武藤のコメント力が凄い。後楽園での前哨戦で北宮の監獄固めに沈んだ武藤は「免疫ができた」としていた。その文脈でのサイコロジーとなり、ファンは“その先”を期待する。北宮の監獄固めをロープエスケープした武藤。

 武藤が“第三者踏み台式シャイニング・ウィザード”を披露したのは2001年。レフェリーを踏み台にした安田忠夫戦、ノーザンライトスープレックスを放った馳浩(タッグパートナー)のブリッジを踏み台にした東京ドームでのタッグマッチ。まさに20年越しの武藤の思い出。

 ボクなんかは、20年前の披露時に「ここまでプロレスを持ってきたか」という衝撃を受けたことを覚えている。閃きとも段取りとも取れるアプローチにはザワつきがあってしかるべきだが、「いやはや、ここまで格闘芸術を突き詰めるのか」というやつだ。広いプロレス界で誰かがやっているということは多々あるわけだが、常にプロレス界の中心にいる武藤がやることというのは業界に大きな影響を与える。

 グロッキー状態にある相手を、武藤は自身のフレームに入れていく得意アクション。正調のシャイニング・ウィザードを連発してフィニッシュした。

 20年前との違いで言えば、SNS時代の功罪もあるだろう。レスラー側もライター陣も含めてプロレスが自由に語られる時代に入っている。

 サイコロジーとは「心理学」という意味。WWEのレスラーは、このサイコロジーという言葉をよく使うという。そしてWWEにおいてこの言葉は「こうなれば、ああするはずだから、こうしていくべきである」という文脈で用いられる。プロレスという大きな枠組みで例を挙げると、「イイ者vs悪者という構図はわかりやすくてノレる」といったことだそうだ。

 試合の流れで言うと、例えば「胸元へのチョップと、胸元へのミドルキックが得意な選手がいる場合、その2つの技を繰り出す順番は①チョップ②ミドルキックであるべきだ」ということらしい(チョップよりもミドルキックのほうが相手に与えるダメージが大きいので、この順番が逆になると、大砲を打ち込んでも死ななかった相手に小型拳銃で大砲以上のダメージを与えようとする無意味な行為となる)。

(文=尾崎ムギ子 2020/2/11 「リングを支配するのはサイコロジー」世界的レスラーTAJIRIのプロレス論がすごい! | ダ・ヴィンチニュース)

 そもそもシャイニング・ウィザードとは、サイコロジーのカタマリである。

 グラウンド状態から次のアクションを狙う、あるいは立ち上がろうとするレスラーの多くは、まず右膝から突き立てる。その瞬間を狙い、相手の右膝を自身の左足で踏み台にして二段階式に右ヒザを当てにいく。それがシャイニング・ウィザードだ。まさに「こうなれば、ああするはずだから、こうしていくべきである」の典型例となる。

 踏み台が入ることでの“注意分散で顔面ガラ空き”や“威力の増幅”も想像させる。武藤がこの日の煽りVで「(「怪獣大戦争」よりも)俺はウルトラマンとかそっちの世界だろ」と口にしたが、ヒーローの必殺技感もある。

 「閃光魔術」とは、よく言ったものだ。

 そして、シャイニング・ウィザードがあったからこそ、武藤はバージョンアップした。フィニッシュはムーンサルトプレスから移行する。

誰にだって弱点はあるだろう。俺にだってある。それはヒザだ。(中略)その弱点をしっかりと受け入れることにした。そして考えた。「このピンチを、強みに変えられないか」って。これをきっかけに、新しい武藤敬司のイメージを作り上げられないかって。いわば、見ているすべての人たちに武藤敬司のバージョンアップと捉えさせることはできないかと考えたんだ。

ヒザが悪いことは、素早く動き回れない。首のせいもあって、もうスープレックスもできない。だから、その状況でできる技を考えた。「シャイニング・ウィザード」とかね。1995年に高田延彦さんを沈めた「ドラゴンスクリューからの足四の字固め」なんて、まさに俺の選手としての寿命を延ばしてくれたよ。四の字固めは昔からある技。だけど、それにドラゴンスクリューをつけたことで、独自性が出た。同じ技でもそこまでの入り方が違えば、ファンがオリジナルとして見てくれること、俺は経験でわかっていたからね。この「型」は、俺に新たな印象を与えてくれたと思ってる。

そして、間合いも大きく取るようにした。早く動けないからこそ、普段はものすごい緩い動きを心掛けた。そして、「ここぞ!」という時だけ、ぱっぱっと動く。つまり、緩急をつけたんだ。さらに合間にはパフォーマンスを取りいれたりもした。これは、お客の目線を技の完成度に集中させない効果もある。「ラブ・ポーズ」とかね。これだってお笑い芸人とかがやってくれてるだろう?

(2016/09/04 武藤敬司流「会社の不良在庫にならないため」の発想転換法 | マイナビニュース)

 3・14福岡国際センターでの清宮海斗戦での煽りV。武藤のコメント。

「描いてるような技もできなかったりとかさ、その引き出しを開けようと思ったら錆びついて開かなかったわけであって、心のダメージおっきいですよ、ショックですよ。なんかもう“神様に逆らってでも”っていう気持ちではいますよ。ただ…プロレスってそこのフィジカルな部分だけじゃなくって、もう全て背負ったその背景、もうひっくるめて勝負しないとね。もういま“等身大の武藤敬司”で勝負するしかないかって。」

 ボクを含めての話だが、武藤の残された闘いを「思い出を武器にして勝つ」路線として見ていた。だけれども、ちょっと違うのかもとさえ思いはじめた。「“点から線”は猪木さんの教え」もよく武藤は口にする。単なる思い出じゃない。試合を破壊して想像し、自身をリボーンさせ続け、観客の目を奪ってこそプロレス。

 新日本プロレスのような大胆なキャラクター設定、細かすぎるアイテム使用、凝った反則・介入劇に対して、「そういうものは我々には無理」との思いを大抵の団体は思うだろう。ナンバーワンに追いつけ、追い越せもあるだろうが、どこかで“妥当・新日本”ではない気がする。

 最高のプロレスを追い求めること。その過程が4・29名古屋決戦にもあり、追いかけることはこんなにも面白いのだ。

カード発表 5・30大田区「杉浦vs.桜庭」ナショナル戦、6・6さいたま「武藤vs.丸藤」GHC戦

▼5月2日・3日の無観客配信情報。

▼5・30大田区「杉浦vs.桜庭」ナショナル戦。

▼6・6さいたま「武藤vs.丸藤」GHC戦。


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