教えてよ鈴木みのるは何故探し続けるの!? 死闘から一夜明けで妥協なきトーク「(ライガーは)力が落ちてるから辞める」
15日、シネマート新宿にて映画『アイアン・シーク』が1日限定で上映され、トークゲストとして鈴木みのるが登場した。劇場には平日にもかかわらず250人のファンが足を運んだ。
前日14日の獣神サンダー・ライガー戦の衝撃から抜けられていないファンたちに、冒頭からみのるは「昨日の話する? 誰にも話してないからな」と揺さぶりをかける。ライガーへのリスペクトの中身をそんなにスムーズに聞けるものなのか! そう思わせるも、司会の問いには「オレがコーナーからバク宙したやつ?」とはぐらかし。どこまでノリツッコミしていいかわからない中で、最後の座礼については「急におなかが痛くなって、そのあとヤバイって引き揚げただけで・・・」と煙に巻く。
ライガーから要求された再戦への見解がまた辛辣だった。
「今後は(再戦は)ない。負けたヤツがだいたい言う! プロレスで結果わかってるのに見たい? アレで終わりだろう。感じたのは、さびしさ。(攻防の中で次に)こう来るだろうなっていうちょっとした反応が、一歩遅れて来なかった。力が落ちてるから辞めるんで。トップ争いをしてる人のカラダと、やめようとしている人のカラダは違う。オカダ(カズチカ)、SANADA、あのへんとやってる感覚とは全然違う。残念とかじゃなくて、そのくらいと思ってやっている」
憎まれ口だとか、強がりだと受け止めてスルーしたファンもいただろう。だけれどもボクは思うのだ。こういう着眼点で喋るレスラーって他にいるか? 誰がここまで姿勢を貫けるか? ここまで妥協なくしゃべり倒せるか? ライガーでさえ退くほどの厳しい世界へのみのるの見解に震えた。
プロレス界への回帰はライガー戦が大きなきっかけとなったことは、イベントでも繰り返された。一方で、総合格闘技に身を置きながらの以前のプロレス回帰は簡単なものではなかったことも、本人は垣間見せた。それはそうだろう、積み上げてきた自身の生き様のある種の否定であり、人脈の喪失をも伴うものだ。
みのるの悩みの深さはどれほどのものだったか。
「24時間のうち23時間くらい『もしかしてオレ、プロレスをやりたいのかな』と考え続けた。3か月くらい毎日悶々とした。最後に相談した人が誰かは言えないけど、『思った通りにいかなきゃお前じゃないよ』と言われてね」
悪役レスラーであるアイアン・シークをテーマにした映画だ。
「オレ、悪役じゃないから。鈴木ファンはわかってる。こっちから見たら、向こう(対戦相手)が悪役。『ONE PIECE』(ワンピース)だって、そうだから。向こうに応援してる人がいっぱいいるから、こちらが悪役にみえるだけで。俺から見れば俺が正しい」
通りのよいヒール論を語ることもできたかもしれない。ライガーへのリスペクトも語ることができたかもしれない。だけれども、司会者との会話が噛み合う範疇での真剣勝負を、みのるはトークで仕掛けていた。どの引き出しを開けようかな? トークでありながら、繰り広げられたみのるのプロレス。これはこれで心地いいぞ。ボクらは知っている、答えを示されるばかりがプロレスじゃないことを。
オールドファンに属するボクはブログでファッションには言及しないが、この日のみのるの姿ってどうよ!? 前に原宿パイルドライバーを訪れたとき、みのるは口にしていた。
「ウチはプロレスショップじゃないんだよね。アパレルだからそっちの関係者とばかりつながって、布地がどうとか、縫製がどうとかって見られるんだよ」
同世代のボク自身に爪の垢を煎じて飲ませたい。ベテランとなれば、身なりは崩れることもあるし、鉄板ネタだけでトークもまわせる。そうしたものと一線を引いている鈴木みのる。いつだって、自分らしさを探し続けて、アップデートしているのだ。