木谷高明「なんでもアリ、おおらかなところがプロレス」 2週連続で失言
20日、都内で日本プロレスリング連盟(UJPW)の法人化について記者会見が行われた。いっそうプロレス界の環境を整えていく意味で大事な会見だったが、質疑応答で思わぬ展開に。理事を務める木谷高明オーナーによる失言が、発表を台無しにした。
1週前の失言にはプロレス媒体が全スルー、ファンの数%が擁護したが…
そもそも13日、ブシロードが新春発表会を開催した際に、木谷高明社長が「水着の女性見れる」と発言して波紋となっていた。グループが運営する女子プロレス団体「スターダム」の選手が登場した際のことだった。
笑えねぇ
— EL DESPERADO (@ElDesperado5) January 13, 2025
【1・13ブシロード新春発表会】
木谷高明社長「水着の女性見れる」 女子プロレスラー登場時の発言が波紋#木谷高明 #ブシ新春2025 #stardom
観戦規約は「性的目的での画像又は動画の撮影・投稿、その他のハラスメント行為」を許容せず pic.twitter.com/2byYY0ZTOp
— KAKUTOLOG📶プロレス/ボクシング/MMA/格闘技カクトウログ (@kakutolog) January 13, 2025
木谷オーナー(新日本プロレス&スターダムの親会社であるブシロード社長、13日)「今日このイベントに来ているみなさんは、アニメとカードゲームとゲームのイベントだと思って来てますよね。そのイベントでコスチュームではありますが水着の女性(が)見れるってことは、なかなかないと思うんですよね(会場では笑いも。選手がポーズを決める)。サービスありがとうございます。だからこのエンタメ業界でも、かなり貴重な存在だと思います。なので、しっかりと目に焼きつけてですね、スターダムに行ってください」
プロレスというコンテンツの送り手として誇るべき魅力を語るべきところ、「水着の女性(が)見れる」と説明してしまう。「コスチュームではありますが水着の女性」とのくだりもあり、SNS上では性的な文脈への指摘が見られ、「悲しい」「そうした偏見から守るべき側なのに」「ファンもそう見られてたのか」という落胆の声が相次いだ。
翌日(14日)には、スターダムの中野たむが“誇るべき魅力”を朝にツイート。岡田太郎スターダム社長、棚橋弘至新日本プロレス社長が“木谷オーナーへの厳重注意”を報告する。この事態にもかかわらず、当サイト以外のプロレス媒体は記事化せず。もちろん大半のファンは批判したが、書き込んだファンの数%は「それでもお金を出した立役者」「女子プロレスのコスチュームはもともと水着であり、発表会発言は盛り上げ」などと木谷オーナーを擁護する。媒体と一部ファンは実は“おおらかさ”を見せていた。
木谷オーナー「ご迷惑をおかけしたことは非常に申し訳ないと思っています。ただ、一つだけ言わせてください」
いったんの決着がついたように思われ、ファンによるSNSも鎮火。ところがちょうど1週間後に、まさかの2週連続となる失言が発生する。
【日本プロレスリング連盟(UJPW)記者会見】
新日本プロレスから海野翔太、真壁刀義!
スターダムから舞華、HANAKOらが出席!「質疑応答」の模様も掲載【1.20会見02】
⇒https://t.co/HigOfjnC5c#日本プロレスリング連盟 #njpw #STARDOM pic.twitter.com/gFdwNycu5H— 新日本プロレスリング株式会社 (@njpw1972) January 20, 2025
ーー高木代表理事、木谷理事に聞きたいんですが、法人化の経緯の目的の中でガバナンス強化、会員資格ではコンプライアンス重視、スタッフ、選手の人権尊重、これはいまの時代、当然かと思いますが、先週、木谷さんから非常に残念な発言がありまして、SNS上でファンから問題視されている状況があると思います。こうした発言が、今後、会員の団体の幹部の中から出た場合、理事会に図って何かの対応、処分を検討されることになるんでしょうか?
松本 すみません。事務局からまず回答します。いまコンプライアンスを重視するという部分に関しては、当然、連盟で基準等を作って、そういった発言もそうですけど、SNSの発言の仕方、あるいは受け取ってリアクションの仕方。もちろん普段のお行儀の悪さを直すとか、いろんなことがございます。
そういった方向に向けて、統一したコンプライアンス基準を設けて、各連盟の団体に伝えたうえで、とくにレスラーのみなさんに、セミナー的な感じで、このプロレス界全体を綺麗にしていくと。世の中からよく認められる団体にしていくということが目的であり、やることですので。何か処分とか、そういったことをやる団体では、現状ではないと思っています。それは各会社、各団体で検討頂ければと思います。
ーー処分というか、会員資格というものがあるので、資格に反するものがあった場合、対応がどうなるのかが伺いたいです。
松本 そうですね。これから、まさにそういったところも決めていかないといけないのかもしれませんが、現状では団体さん全体として、どういうふうな取り組みでやるのかというところ。一個一個の取り組みがどうということは、あまり議題にすることはないんじゃないかと思いますが。何かあった場合には、その方向のプロレスリング連盟の中で、また新たにそういったことがないように、防止策とかガバナンスの強化とかそういったことをレスラー、あるいは団体のみなさんに広めていくという啓蒙作業は必要だと思ってます。
ーーいま松本さんがおっしゃったように、統一したコンプライアンス基準は、いま策定されているんでしょうか?
松本 これからです。
ーーそれは我々マスコミ、ファンに対して公表されるんですよね?
松本 決定ではありませんけども、それはこれから、もちろん理事会等は定期的に開きますし。それからホームページもちょっといつとはお約束できませんけども、近々に立ち上げます。そういったところで必要なところは、必要に応じて公表していくと考えています」
木谷理事 ……私にも(質問が)あったようなので、まずはご迷惑をおかけしたことは非常に申し訳ないと思っています。ただ、一つだけ言わせてください。プロレスのいいところは、おおらかなところです。おおらかなところを自ら殺すようなことは絶対にしちゃダメです。これ以上語るとまた問題になるので、これ以上、言いませんけども。
オープンに開かれて、なんでもアリ、おおらかなところがプロレスの一番いいところなんですよ。それがドンドンドンドン狭められている。私のところに来るには来ましたけど、音楽とかゲームとかアニメのファンからはまったく来なかったです。プロレスファンだけです。
プロレスファンがおおらかさがだんだんなくなっていってるんです。そのことが業界を狭くしていってるんですよ。他の分野から見ると、入りずらい業界だと思われるんですよ。ま、そういう業界になっていってもいいんだったら、ボクはそれでもいいと思いますよ。ただ、それはプロレスの一番のよさをなくすことになると思ってます。
木谷オーナーの目に“おおらかさ”は伝わらなかったようだ。さすがにこの不満表明発言(2回目失言)を受けて、東スポをはじめとするプロレス媒体が報道する。木谷オーナーも即座に撤回に相当するツイートを行った。
※同じ会見です。
木谷高明オーナー(『水着の女性見れる』発言で批判浴びたが)「プロレスのいいところはおおらかなところです」
風城ハル(東京女子)「私は16歳です。皆さんに支えられて続けています。もっとプロレスが子供達に憧れられる職業であって欲しい」#UJPW #日本プロレスリング連盟 https://t.co/75nVsFOOjZ
— KAKUTOLOG📶プロレス/ボクシング/MMA/格闘技カクトウログ (@kakutolog) January 20, 2025
ご指摘のとおりかもしれません。私の認識違いでした。すみません。 https://t.co/uc2u7xn0gw
— 木谷高明 (@kidanit) January 20, 2025
いやもーほんとなんなの恥ずかしい
— EL DESPERADO (@ElDesperado5) January 20, 2025
謝罪とか処分とかもうどうでもいいので黙っててください🙇♂️ https://t.co/O3ssDJrGCE
— 青柳優馬《Yuma Aoyagi》 (@attack_on_yuma) January 20, 2025
見えるところ、見えないところで発生していたハラスメント的発言との闘い
13日(1回目失言)の当サイト記事は、実は違う主旨で出すことを考えていた。夕方に失言があったわけで、数時間内に有力メディアの報道、当事者の謝罪が当然あるものだろうと想定していた。その謝罪までの顛末を伝えようと。ところがいっこうに発信されず、当サイトは当日23:05に記事化する。すると木谷オーナーが23:58に「不適切な発言をしてしまいました」と、ギリギリ日付がまたがる前にツイートをした(当サイト報道前に発信を用意していたものと信じたい)。
弱小メディアであるから正直恥ずかしい限りだが、カクトウログが何かを伝えてもプロレス界へのインパクトは極小だ。むしろ独自で何かをやれば「正義感を振りかざしやがって」「アクセスを稼ぎやがって」という目で見られる。サイト読者は新日本、スターダムファンの割合も大きく、沈黙こそ価値がある可能性もある。
一方でYahoo!媒体ではない当サイトを定期的に見てくださっているファンからは、独自の姿勢への期待をくださっている面がある。横のつながりで教えてくれるのだ。当サイトが書く前のこと。スターダムの複数選手・関係者が、いくつかの“木谷オーナー発言への意見ツイート”にいいねをつけていると。そして、まさに団体に申し入れをしようとしているファンがいるなど、いくつもの連絡が集まった。
だから、書いた。ファンから、自身が安心してプロレスを楽しめる環境を守りたいという声が聞こえる。選手から、自身の誇りを傷つけられたくないという叫びが聞こえる。
ここ数年の女子プロレスラー撮影問題で性的目的が問題視されたが、この2週間でブシロードグループの対応が形式だけだったことが露呈した。複数業種で安心して働けることが重要視されているのに、強烈なまでに否定された。水着かどうかという言葉尻を追っているのではない。ハラスメント問題は、文脈と受け手の感情を見なければいけない。
エル・デスペラードのツイートもそうだが、まわりも当事者も、まさにリスクを背負って闘っているのだ。闘いは見えるところ、見えないところで発生していた。そんな中で媒体が書かないわけにはいかないのではないか。できることはなかなかないが、できる範囲で選手・ファンに寄り添った発信をしていきたいと思う。