頬で涙が雪になる中野たむの白い炎 ベルトとコズエンを守るための攻め
中野「でも、私にも守りたいものがたくさんできました」
<バックステージ>
彩羽「5★STAR、ちょっと出遅れまして、いま3戦目です。2戦目でまさか黒星となりまして、焦ってる状態で。この3戦目、中野たむ選手、自分初めてだったんですけど、まあよくツイッターに出てくるし、よくメディアでも見るなっていう思いがあったので。でも、あの選手を気にしないわけないですよね。なので、2戦目で1本取られたので、3戦目中野たむ選手かって思いがあったんですけど、いま2冠王者なんですかね。2冠王者なだけあるなと思いますけど、自分も覚悟が違いますので。いまの状況はさすがに負けて、すみません負けましたというわけにはいかないので。それじゃ帰れないので。いやあ、なかなかキツい闘いでしたね」
――お互いの持ち味が出ていたが、たむ選手の感情を引き出してやろうという気持ちは?
彩羽「本人が言われたら嬉しくないかもしれないですけど、岩谷麻優を見てるような、そんな…一瞬そんな感情が自分も出ましたね。やっても立ち上がってるので。なんで効いてないの、みたいな。そういう心が揺れるところはありましたけど、プロレスって技の華麗さとかそういうのもあると思うんですけど、女子プロレスの一番いいところって自分は感情だと思うんですよ。なので、今日の中野たむ選手がいつもと違う中野たむ選手が見られたなら、勝負はこうやって勝ちましたけど、内容でも勝てたのかなという感じはしますね」
中野「いや、星が…。目がチカチカして。彩羽匠、強い。やっぱり守るものがある人間って、めちゃくちゃ強いんだなって身をもって感じました。マーベラスを背負って、守り抜こうっていう強さ、目がギラギラしてて、打撃も全部強くて、その強さを身をもって感じました。でも、私にも守りたいものがたくさんできました。COSMIC ANGELSをスターダムで一番のユニットにしたいし、中野たむとして、白いベルトの聖なる王者として、白いベルトをしっかり守り抜いていきたい。私は守り抜くために、これから攻めの中野たむでいきます。見ててください!」
中野がコメントを出すときの、汗か涙か判別できない頬がいつも胸を打つ。白い炎を燃やす中野にかかれば、頬のうえで雪に変わるのだろう。チカチカじゃなくキラキラ。
珍しく多くのメディア勢がなかなかバックステージから引き揚げなかった。余韻に浸るように、大会を口々に語り合う。この“試合に夢中にさせる”感覚はいったい何なのか。イベント制限の21時ギリギリまで、全10試合でいつも以上に試合があったというのに。コメント取材しても、もっと答え合わせをしたくなる。
簡単に答えが出ないからこそプロレスは面白い。ひとつ大きいのは、彩羽の言う「女子プロレスの一番いいところって自分は感情だと思う」なのだろう。写真振り返りでもその一端を感じていただけたかと思う。彩羽が口にした「いつもと違う中野たむ」だったのか、これが本当の中野たむだったのかはわからない。それでいて中野たむを彩羽が引き出したことも間違いない。
劣勢に陥っては跳ね返していく中野の姿には、手に汗を握り、声が出せないことを忘れさせ、ズッポリと感情移入させられた。中野はかねてから、「白いベルトは感情のベルト」とも「自分は弱い」とも「自分はコミュ障」とも言う。ゆえに「弱さから立ち上がりたいファン」は導かれるわけだが、試合を通じての中野とファンの間の良好過ぎるコミュニケーションからは「コミュ障」という言葉は断固として似合わない。
「彩羽選手と白ベルトをかけて闘わなければいけないんじゃないですか」と問いかけてみた。中野は「(力強く)もちろん!! 負けた選手全員と白ベルト戦をやりたい」と主張を改めて繰り返していた。
入場直前の謎の儀式再び!? 中野とコズエンのやりとりに密着
交代でセコンドにつくコズエン。
桜井まいはチャレンジマッチで舞華にSTFを仕掛ける。
ウナギ・サヤカはフューチャー戦で月山和香を相手に防衛を果たした。
白川未奈は公式戦でジュリアを相手に「ちゃんす~」!!
※以下のセリフはフィクションです※
大御所カメラマンX氏のお供をさせていただいて、メイン入場直前のショットを収めさせていただく。
中野「精神統一しようとしているのにじゃましないでよ」
ウナギ「ほうら力がみなぎる。リラックスできる~」中野「だから笑わせないで」
中野「ようやく静かになったようね。ホッ」
中野「なんでじゃい!! 人数が増えとる」
気持ちと表情を和らげた中野。“一番のユニット”めざすコズエンメンバーと気持ちをひとつにし、中野は今日も前に進み続ける。