今夜だけでもキングオブシコク DO YOU WANNA DANCE TONIGHT?
(最初は決意するように地声で)わ~~~。
(はるぅマイク)この試合・・・棄権します。
(観客「エッ」「なんで」)
実は2人目が・・・(おなかに手をやる)できました。
(観客「わ~」「あ~」「おめでとう」)
順調にいけば来年の3月。ということはわれわれが目指している新木場、UDONの旗揚げ記念日、そのころに私は陣痛で苦しんでいるかもしれません。
本当はみんなと一緒に新木場に行きたかったです。泣かないって決めたんだけど(涙)。でも私、事実上の勝利だと思うから、必ず次郎ちゃん勝って。試合もしたかった、みんなで行きたかった。でも「今まで」も「これから」も私の夢を支えてくれてる大好きな人の夢をまず叶えてきます(拍手)。「これから」っていうことは、生み落としたら帰ってきてもいいっていうことです(拍手)。本当は次郎とも闘いたかった。勝つ自信はあった。あんたとの試合はお預け。こうなったら初代のベルトもアウトオブ眼中。復帰して私が奪ってしまえばチャンピオンだから。しばらく闘えなくなった私だけど、みなさん愛してくれますか(拍手)。モンスターの神様、すこし離れます。よろしくお願いします。
ということで今日は棄権します。次郎、つぎ必ずリベンジするから。メイン、ベルト絶対獲りなさいよ。あんたが持っといてくれんかったら、ワタシ挑戦する意味が半減するから。こないだのビンタ、もっともっと倍にして返してやる。絶対に返してやる。それでまた、一緒にやっていってくれますか。
(次郎マイク)ご懐妊、おめでとうございます。本当ははるぅと今日、しっかりバチバチやるつもりでいましたよ。でもこればっかりはしかたがない。誰を責めるものでもなくむしろめでたいことです。お前の悔しい気持ちも十分わかる。このまえ思いっきりビンタして、今日やり返されたけど、そんなビンタじゃオレは倒れないからな。お前だったら絶対に元気な赤ちゃんを産める。3月に旗揚げベイビーを生んで、また母親として強くなってUDONプロレスに帰ってこい!! 全員でUDONプロレス。お前が欠けちゃダメだ(観客拍手)。お前のその気持ちもしっかり受け止めて、決勝で藤田あかねをぶっ倒す、約束するよ。
・・・以上が2人のマイクである。何を感じていただけただろうか。
実ははるぅ、6月19日の名古屋大会時点にて“今後”を悩んでいた。大好きな人の夢とプロレスの夢。そのチョイスの仕方によっては、2度とプロレスができなくなることもある。いったいどうすればいいのか。ボクも声がかけようがなかった。本当に、自身で決めるしかないゾーン。
経緯があっただけに、この大会のはるぅマイク、ボクには「決めたんだ」という思いがあった。そして、もうひとつ。はるぅが大好きな人は「子供とプロレス継続」の両方を選んだんだと。
“将来に渡ってできなくなる”こともあるのかと思っていたら、カンバックつきのオメデタ宣言だった。素敵すぎる人生の選択肢ではないか。タイトル奪取ならずとも、彼女もまたキングオブシコクである。
唯一2試合を闘った藤田も、この大会の功労者だ。通常はUDONプロレスの第1試合はお笑いが多いが、いきなりの衝撃展開に観客は身震い。ピンチが多く試合中には「あかね!!」「あかねちゃん!!」と多くの声援を受けていた。
大会から打ち上げ会場への道中で藤田選手と会話させていただいた。
カクトウログ「UDONプロレスのことを藤田選手がツイートした際に、ファンから『○○の団体は!?』というようにUDON以外を気にしてほしいような絡まれ方がありましたね」
藤田「そんなんあったかな。もともとプロミネンスはどこにでも出ていくという精神ですし、私もこだわりをもってUDONプロレスをやってますから。それに、今日で言えばルヨシも次郎もしっかりとしたプロレスの技術を持ってますからね」
リングではなくマットで闘う団体だからこそ、ふだんリングで闘う選手にとっては“見え方”というものもつきまとう。それでも藤田はUDONの価値観を根っから理解し、ファミリーとして胸を張る。高松では打ち上げ会でファン対応をしつつも、藤田は翌日の都内プロミネンス大会に備えて早めに引き揚げるというギリギリぶり。
ここにも人生における選択肢というものを感じずにはいられない。“準優勝”でも藤田はキングオブシコクである。
高松大会。プロレスも楽しんだし、「ヨシノvs.O-遍LOW」「ポンデvs.千代」には大笑いさせてもらった。そこからの「“社会人プロレス”コンテンツが見せる、リアル過ぎるくらいの人生の交差点」までの振り幅。これを見せられたら、UDONプロレスはクセになる。
そして“やる側”である選手たち(もちろんツクダ監督や千代TENGA含めて)は仲間たちと「踊れる人生を歩いてるんだろう、とことん踊ろうぜ」と声をかけあう。全員でUDONプロレス。腰の強いエンタメコンテンツは熱いビートを鳴らしていた。もっと・もっと・もっと「Do you wanna dance tonight?」なのだ。