棚橋弘至&有田哲平がアイアンクロー 愛すれば呪われるプロレスという沼
28日、A24製作『アイアンクロー』先行上映会がキノシネマ新宿にて行われた。上映前にはプロレスラー棚橋弘至(新日本プロレス社長)とお笑いタレント有田哲平さん(くりぃむしちゅー)がトークで登壇した。進行は清野茂樹アナウンサー。
プロレス界の伝説にして“呪われた一家”と呼ばれた1980年初頭フォン・エリック・ファミリーの実話『アイアンクロー』はスクリーンで4月5日に公開される。
(トーク全文)棚橋「みなさんの目で、本当にそれが悲劇かどうかっていうのは判断してほしい」
清野 本日はA24製作『アイアンクロー』先行上映会にご来場を誠にありがとうございます。本日はこの上映会の前に行います。トークショーの進行を担当します。私、実況アナウンサーの清野茂樹と申します。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
はい普段はね。プロレスの実況を本業にしてるわけなんですけども、実はラジオ日本で『真夜中のハーリー&レイス』という番組もやってんですよ。毎週毎週まあいろんなゲストをお迎えしてプロレスの話をしてるわけなんです。
NWAのチャンピオンベルトっていうのをダンボールでこしらえて、そのベルトを守るためにこれを防衛戦だってことを言って、70 年代の古き良きアメリカンプロレスの世界を、まあラジオで表現してるつもりなんですけども、この映画がまさに我々でやってることと同じ 70 年代のアメリカンプロレスの、もろに忠実に描いてる世界なんですね。
今日はしかしパッと見たところ、やっぱり男性がほとんどですかね。多いですね。だから私と同じような世代の方たくさんいらっしゃってると思います。ちょっとあのリサーチさせてください。エリック一家ですからね。昭和のプロレスファンだ、僕は私は昭和のプロレスファンだという自覚のある方はちょっと手あげてもらっていいですか?
ありがとうございます。じゃあ僕は私は平成のプロレスファンだという方はどれくらいいますか? あ多い、けっこういらっしゃいます。いちおう聞きますけど、令和のプロレスラーだって方は? ああいらっしゃる、そうですか。じゃあ本当に幅広いね。プロレスファンの方が今日はお集まりということなんですね。
よくわかりました。今日は満員で札止めと聞いております。さあ、それではですね。これからトークショーを行いますけども、念のためみなさんも大人だから十分おわかりだと思いますけども注意事項があります。
写真撮影、そして録音禁止となっております。そしてだいたいこういうね。あの上映の前のトークショーというのは必ずフォトセッションというのがちゃんとございますんで、マスコミの方は最後フォトセッションの時間を使ってしっかりと撮影していただきたいと思います。
以上、注意事項でございました。さあ、それではお呼びしましょうか。本日のトークショーに登壇するお二人、新日本プロレスの棚橋弘至選手、そして大のプロレスファンとして知られております、くりぃむしちゅー有田哲平さんのお二人です。どうぞ。
(映画のテーマ曲で入場、拍手発生)あらためて大きな拍手でお迎えください。お二人登場いただきました。じゃあまずはね一言ずつ、ちょっと今日ご来場の皆様にご挨拶をいただきましょうかね。まずは棚橋さんからお願いします。
棚橋 はい、新日本プロレス100年に1人の逸材、そして代表取締役社長、棚橋です。よろしくお願いします。(拍手)
清野 言えた、よかった!!
棚橋 (噛まずに)言えましたねぇ。練習しといてよかった。
清野 いやー幸先いいスタートです。そしてさあ、有田さんお願いします。
有田 はい、くりぃむしちゅーの有田哲平でございます。きょうは棚橋さんと僕なので若い人がたくさん来るのかなと思う、若い女の子の声が聞こえてくるかと思ったらこんなですね。男ばっかりですねこれ。そうでしょう。
清野 さっきリサーチしたら令和のプロレスファンがですね。2人しかいません。
有田 ハハハ。本当じゃもう、コアなもうまさにこのエリックの、もうど真ん中の方たちがいっぱい来たんですね。きょうはよろしくお願いします。(拍手)
清野 じゃあここからトークスタートになりますが、もうね。あの配給会社の方がまずこれを聞いてほしいと。映画をお二人ともご覧になってますんで、映画を見た。その感想、これをまず聞いてくれってことなんでちょっと聞かせていただきます。
有田 みなさんはまだこれからですよね。
清野 ネタバレにならない程度に。
有田 ネタバレもクソも(実話なので)もうネタバレはしてるんでしょうからね。プロレスファンだったらね。
清野 まあ…棚橋さんからお願いします。
棚橋 えー、ザック・エフロンがひたすらかっこいいです。
有田 内容に関しましては、先ほども言いましたけど、まあエリック一家は悲劇のエリック一家と言われて呪われた一家と言われてるやつを描いてますので、みなさんがなんとなく入ってる知識、それのこうストーリーになるとは思うんですね。だけど、やっぱ所々にやっぱプロレスファンだったらこう唸ってしまうような、あれ、これこの人あれだよね。とか。この選手は間違いなく、あの選手のことじゃないみたいな。ニヤニヤしちゃう瞬間がたくさん出てきますので、そういうところをよく楽しんでいただくといいなと。あんまネタバレ言いたくないですけど、ハリー・レイスは似てましたね。
棚橋 めっちゃ似てました。
清野 いやー、そうなんです。もうね。あの有田さんを私も本当同世代ですから、あのやっぱ古き良きというか、80 年代初頭のアメリカンプロレスの世界っていうのを見ると、ちょっと懐かしい気持ちになる。
有田 いわゆる世界のプロレスみたいな感じでやってましたけど、いわゆるテキサスの方でやってたWCCW、ワールドクラス・チャンピオンシップ・レスリング、フリッツ・フォン・エリックが主宰してるリングなんですけど、まぁ試合のシーンもたくさん出てくるんですよ。実際ね。それがまあよくあるこう“引き”のプロレスの映像というよりは映画なので割と近めでやるので。その当時のアメリカンプロレスですよね、今の最先端のプロレスというよりは。懐かしくていいですね。
棚橋 (一般的な映画での)プロレスラー役となると、俳優さんだと若干“細い”かなと。細マッチョなイメージがあるんですけど。この映画に出られてる俳優さん、筋肉量が十分ついてます。もともといい体はしてたんですけど、たぶん役づくりのために相当トレーニングとか食事を気をつけてワンサイズ大きくしたんじゃないかなぁと。
有田 ケビン・フォン・エリックっていう選手はみなさん知ってます? ザック・エフロンさんは役づくりしようと頑張ったと思うんですけど、ちょっとやりすぎてますよね。
棚橋 ハハハ。
有田 体つくりすぎてますよね。僕らが知ってるケビンの方が細い。俳優の方が越えてましたよね(笑)。
清野 珍しいケースですよね。
棚橋 珍しい。
有田 デビッドやケリーはね。
棚橋 ちょうどいい感じですけど。
清野 じゃあ、もう棚橋さんの目からご覧になっても相当なこれは準備期間を経て。
棚橋 そうですね。
清野 体づくりをちゃんとしてるっていうのは、プロレス映画としては非常に嬉しいですよね。
棚橋 いや嬉しいですね。この映画の本当にプロレスを真正面から練習、試合への精神的な負担だったりとか、そのストレスをレスラーがどう感じているかとか。すごくね細かいところまで描いてくれてるんで、なんかこう現役レスラーとしては、レスラーとしての気持ちがみなさんに少しシェアできるんじゃないかなっていうのは思います。
清野 有田さんなんかもう過去にねいろんなプロレス映画ご覧になってると思うんで、だいたいこのプロレス映画を見るときのなんかこう視点みたいなものがご自身の中であるんじゃないですか。
有田 いやーですから、なんだかんだこう都合よく監督さんもあんまプロレスのこと知らないのかなとか。なんかいい加減に描いてるなって(他のプロレス映画では一部)あるんですけど、なんかねこの映画ってけっこう監督さんも含めて細かいディティールにこだわってて。だから選手も特に紹介がなくても、この選手はあの選手だなとか、ちゃんとその時代がしっかりしてるんですよね。あの別にこっち側のそういわゆるエリック一家だけでなんとかやっとけば、相手がなんかざっくりしたレスラーでもいいのに、ちょっとちゃんと見せてるじゃないですか。これがこれみたいな。ベルトの形とか。すごい多分こだわってらっしゃる。聞いたら、会場(ダラスの名物会場スポルタトリアムを再現)もそっくりらしいですもんね。だからそういうのもなんかよく細かくやってますよね。
清野 なんかね今 42 歳の監督で。カナダ生まれでロンドン育ちの方で、ものすごいなんかプロレスマニアで、エリック一家、まあケリー・フォン・エリック大好きだったみたいなことをね。
(ショーン・ダーキン監督・脚本。1981年12月9日生まれ、カナダ出身)
有田 はーなるほどなるほど。
棚橋 もし見てたとしたら相当小さいころからってことですよね。
清野 たぶんビデオで見た世代。
棚橋 なるほど。
清野 でも当時リアルタイムを知ってる、その有田さんとしては、当時の日本に来てたのは 3 強でありますけども、印象としてはどの選手に一番思い入れありますか?
有田 僕がちょうど見始めたときには細かい話ですけど、アジアタッグというものを全日本のね、佐藤昭雄選手と石川孝志選手と持ってたんですよ。そのときの、誰から獲ったんだろうって小学生ながら調べたら、それがたぶんケビン&デビッド。だから生で見れてなかったんですよ、そのときは。だから早く次、来日してほしいなほしいななんて思ってたら、まあ天龍(源一郎)選手がとうとうUNヘビー級を獲るか獲らないかみたいな。それをたまたま持ってた方がデビッド・フォン・エリックという選手だったので、おっ、とうとう来日するということで見れる、しかも天龍との一騎打ちで…って思ってたらまあ例の悲劇があったので見れずじまい。ああ見れなかったってなってからなので。やっぱりそれ以降のケリー・フォン・エリックですね。
清野 はいはい。
有田 だからちょっとこの映画の中のネタバレですか? どこかがわかんないけど(笑)。ここで描かれてないんですが、来るんですよ。その…日本に来てやるんですよ(ジャンボ)鶴田さんと。そこはちょっとカットされてるんですけどね。そういうのもだから見てると、これたぶん詳しい方見てると、あー。このあと確かこれがあったなとか、こうパーって流されてるけど、これこうじゃなかったっけななんて言ってこうなんか、そういう見方も面白いと思うんですよ。
清野 ちょっと記憶の補完とか。
有田 もう一回…あ、やっぱこうだったとか。
清野 84 年あたり、ケリー・フォン・エリックすごいこう期待されてましたよね。
有田 でしたね。カッコよかった、(テーマ曲が)アイ・オブ・ザ・タイガーで、馬に乗ったね。
清野 NWAのベルトの権威が、あのころはまだすっごい高かったですよね。
有田 これは今のちょっとプロレスファンってわかるのかな。いわゆる今って一つの団体の中に象徴的なベルトが 1 個あるじゃないですか? その当時って、いろんな団体で、まあ、あの 1 個の大きなベルトを象徴的なベルトをつくって、そのチャンピオンがこっち行ってこっち行って何周も回りながら、誰が次獲るかみたいな。そういう面白さがあったんですよね。だから、一番の、ナンバーワンのタイトルは NWA の世界ヘビー級ベルトみたいな。当然日本だとジャイアント馬場さんしか獲ったことがないとか、次誰獲るんだみたいな。それが中心となってこれはたぶん出てきますんで。
清野 棚橋さんはいかがですか? このなんかちょっと古いその 80 年代の、しかも初期のアメリカンプロレスっていうのは棚橋さんの目から見たらどう見えました。
棚橋 僕もその入門して、どんどん時代とともにプロレス技が厳しくなって激しくなっていった時代をファンの頃から見てたので。レスリングに戻していきたいなっていうスタイルだったんで、若々しくないファイトスタイルをずっと続けてたらブーイングが来ます。
清野 ハハハ。
棚橋 80 年代とかアメリカンプロレスけっこう激しい試合というよりは、突然こうねクルッと3カウント入ったりとか。
有田 はいはい。
棚橋 そういうのもあったんで、僕はフライングフォーアームって使うんですけども、あれはティト・サンタナ選手が。
清野 レッスルマニア 1 でいきなり出てきた選手ですよ。
棚橋 そういうオールドスクールなレスリングも勉強して勉強して、なぜかこうなってしまった。
清野 ハハハ。アイアンクローというのは、これタイトルにもありますけどもね。この技に関しては、棚橋さん実際に食らったことってあります。
棚橋 あります。
有田 誰に食らうんですか。
棚橋 中西(中西学)さん。
有田 あー(笑)やってた、やってた。
棚橋 一時期やたら多用してて。
清野 マナブ・フォン・エリックが(笑)。新日本プロレスにいましたね。
棚橋 そう、中西さん手がめちゃくちゃでかいんで、顔面が隠れてしまうほどなんで。技にはすごく合ってるんですけど、アレンジし始めて。アイアンクローしながら大外刈りするっていう。
有田 変形でしたよね。ただのクローじゃなくて。
棚橋 中西さんには使い続けないっていう悪いところがあって。
有田 ハハハ。
棚橋 飽きちゃった。
清野 確かに定着はしませんでしたね。
棚橋 覚えられてるってことはすごい。
有田 たぶんエリックの、ファミリーの方とは闘ってないですもんね。
清野 有田さん、どうでした? あの当時見ててこのアイアンクローっていう技は。
有田 いやアイアンクローっていうのはなんせ一番真似しやすい技じゃないですか?
清野 小学生でもできる。
有田 だからもう兄貴だ、しょっちゅうやられてましたし。やっぱり地味だけど痛いんですよ。だからやっぱもうプロレスごっこといえばアイアンクローみたいな感じでしたよね。
清野 だいたい食らう側だったんですね。
有田 もう食らう側もありましたし、(食らうばかりだと)悔しくてやっぱり学校だと後輩とかにやってたりもしてましたけどね。はい。
清野 いや、でもああいうこうね。なんか一家を象徴する技というか。もうその代名詞があるっていうのは、棚橋さん、レスラーとしてはやっぱ強みになりますよね。
棚橋 そうですねはい。ただ、そのお父さんがやっぱり偉大だと、息子たちはとても苦労すると思うんですけどね。どうしてもお父さんが始めた技っていうイメージが拭えないので。プロレスラーでも二世レスラーっているんですけど、柴田(勝頼)選手もお父さんがプロレスラーで、ああやってお父さんのポジションを越えていくっていうのはなかなか少ないなって。
清野 当時のレスラーで有田さん、エリック兄弟以外に思い入れのあるレスラーというと。
有田 まあやっぱり僕がちょうど見てるときの、そのまあ世界最強のベルトっていう、その当時象徴だったそのNWA世界ヘビー級のベルトを持ってたリック・フレアー。やっぱりリック・フレアーが全世界を周って、まあ地方地方の一番強いのをおちょくって、勝ったか負けたかわかんない感じ、でもベルトは死守して帰ってくるみたいな。
清野 NWAルールってよくできてますよね。
有田 もう相手のその場、土地土地のヒーローは勝つんだけど、まあ反則勝ちだから防衛とか。リングアウトだから防衛みたいなんで、なんか腹立つ存在でしたよね。逆にプロだったんですよ、すごく。
棚橋 テリトリーが多いじゃないですか。そしたらそこにはそこのファンがいて、うちのテリトリーのチャンピオンが一番だと思ってるから、それをこううまくこう回し、「あのヤロー、反則で勝ったけどウチのチャンピオンが強いんだ」っていう、その土地のファンの溜飲をぐっと下げて。
有田 そうですよね。
清野 当時はテリトリー制っていうのがね、アメリカありましたから。
棚橋 WWE とかの前ですもんね。
清野 そうなんです、テレビがもうその土地しかやってないから、他の地区でどんな試合やってたかって知らないわけですよね。今ね、現役で棚橋さん試合やってて、全部その筒抜けじゃないですか? 映像が。
棚橋 もう本当にプライベートがない感じで。
有田 ハハハ。
棚橋 自分から発信してるところがある。
清野 でも、その地方の大会まで全部、完全に生中継されるのはレスラーとしてはどういう気持ちなんですか?
棚橋 あー、僕は一人でも多くの人にプロレスを見てほしいので、すごく嬉しい。
清野 じゃあ、もうそのNWAとはもう逆の世界というか。
棚橋 そうですね。やっぱり場所変わって、見てるお客さん変わって、対戦相手に変化があれば、絶対違う試合になるっていうのがあるので。毎回楽しい。ワクワクしてます。
清野 有田さんはもうね。あの熱狂的なもうマニアですけどね。いろんなこう映像をご覧になるわけじゃないですか。もういま映像がもう世界中にポンポンたくさんあってチェックするの大変じゃないですか?
有田 大変ですよ。本業なんてやってらんないから(笑)。ここに来る前も棚橋さんとDDTとノアの(オールトゥギャザー)記者会見を見て来ましたから。
棚橋 ありがとうございます。
清野 おとといの。見逃し視聴もできますからね。もう常に追っかけてくるというか。いや、もう時代がずいぶんね。
棚橋 ずーっと2000年代、プロレスがね、ずっとこう、なんとかお客さんに入ってほしくてプロモーションしてっていう…やりながら、テレビでいう著名な方が「プロレス好きだよ」って言ってくれたらすごく助かるなと思ってて実現したという。本当に嬉しいんですよ。
有田 『アメトーーク!』とか特集もしてくれましたからね。
清野 ありがたいですよね、そうなんです。いやー。でもね。本当にこういうそのまあ、アイアンクローという技はある、とってもこう恵まれた一家なんだけど、なんかこう次々にね、襲ってくる不幸っていうのがあって。有田さん、あの当時やっぱりあのファンの側から見ててもね。なんでだろう? みたいなとこありましたよね。
有田 ですよね。なんか子供ながらにいわゆる呪われた一家なんて言って、プロレスの外国人のレスラーが特につくじゃないですか? その「人間発電所」とか。そういういろんな称号がつくから、まあ、それと同じような感じの呪われた一家エリックファミリーみたいな感じで思ってたんですけど。やっぱ 1 個 1 個がね、本当にやっぱり悲劇が続くので、なんかなんとなく子供ながらになんか流してましたけど、やっぱりこの映画を見たことによって、その深みというか重みがズシッときますよね。あ、こういうことだったんだっていう。
清野 我々が当時知らなかった部分とか、それから何て言うんですかね。当時さっき話に出ましたけど、試合の映像ってなかなかの見られなかったじゃないですか? それがこの映画によってなんか補完されるというか、試合映像こんな感じだったのかなっていうのを再現してくれてますからね。これやっぱありがたいです。
有田 ありがたいですね。テレビのマイクアピールのシーンみたいなのは撮影のシーンもありますからね。あの辺、ちょっとここリアルですよね。あれ、映像の荒さとかね。
清野 あと、なんかこの背後のロゴマークの感じとかねえ。あと試合シーンもけっこうふんだんに盛り込まれていまして、これがあのチャボ・ゲレロ・ジュニアが監修(プロレスシーンコーディネーター)をしたということなんですね。ぜひあのちょっとプロの目からご意見聞きたいんですけど。
棚橋 受け身がしっかり取れてて、本当に新日本プロレスに引き抜きたいぐらいの。
有田 ハハハ。
清野 ザック・エフロンを(笑)。
棚橋 いくらかかるんスか(笑)。
清野 すごいことになりそうですね、そしたらまた。プロレス映画ってなると、棚橋さんも本業だから試合を見るところ、試合シーンはちょっと厳しく見るんじゃないですか?
有田 見るところが違うかもしれないですね。
清野 どういったところを。
棚橋 例えばプロレスがね、組むのはロックアップって言うんですけど、そういったところの足の運びとか腕の取り方、右腕を取るのか左手を取るのか、そういうとこですね。
有田 あの映画でそういうの見てたんですか?
棚橋 ヘッドロックのときの足の開きとか?
有田 全然見てなかった(笑)。
棚橋 ヘッドロックやるってなるとこうやるんですけど、こうやったらバックドロップで投げられやすいんで、僕らはヘッドロックを取るんですけど、相手と向かい合うんですね、こうやって。
有田 あー。
棚橋 そうするとバック取られないで、うまく頬骨を絞れる。ぜんぜん不自然な感じはしなかったんで、チャボはやりますよ。
有田 細かいところで指導があったんですね。
清野 足の運びを見るってのがやっぱさすがね。プロの視点ですよね。
棚橋 足の運び、見ます。
有田 (観客に)みなさん見なくても大丈夫ですよ(一同笑い)。顔と演技を見てれば。
棚橋 肉体とね。
清野 試合のシーンがあって、でご存知だと思うんですけど、そのねWCCWというダラス地区というのはお父さんのフリッツ・フォン・エリックが、まあプロモーターもやっていたんですよね。で、棚橋さんはいま社長もやってるわけじゃないですか? ある意味、このフリッツ・フォン・エリックと近い立場になってますか? この興行主としてプロモーターとして何かこう、今後、新日本プロレス考えてることっていうのは。
棚橋 そうですね。いますごいね、人気選手が多いんですけども。やっぱりこう、その横並びのね、感があるんですね。ちょっと内藤(哲也)が抜けてますけど、やっぱり内藤・SANADAあたりは抜けてますけど、この令和の海野(翔太)・辻(陽太)・成田(蓮)、上村(優也)このへんから誰かポーンと抜けてほしいなっていう。希望としては。
清野 それは内藤さんより上に行ってほしい?
棚橋 そうですね。で、内藤より(誰かが)上に行ったところに僕はバッといきます(観客笑い)。
有田 いつもおいしいところを(笑)。
清野 いまプロモーターとしてどうですかって質問ですよ(笑)。
棚橋 レスラーの目が出すぎちゃった。
清野 社長に去年の 12 月になられてから、けっこう出社されてますよね?
棚橋 僕、あの、試合がない日は出社します。
有田 そうなんですか? どんなことがあるんですか?
棚橋 基本的には各部署との会議。あとはこう、親会社のブシロードさんとの役員会議。あと何かこう発注とか案件があるときに承認印がいるんで、ハンコを。
有田 社長業だ。紙を見てボンってハンコ押してるんですね。
棚橋 見ずに押してます(観客笑い)。
有田 見なさい、ちゃんと。
清野 見てください、ちゃんと。新日本プロレスの事務所いくと、けっこう棚橋さんいらっしゃるんですよ。ID カードを首からかけて。
棚橋 そうですね。
清野 誰がどう見ても棚橋弘至ってわかるのに、ID カードを首から。
有田 ハハハハ。
棚橋 IDカードがないと事務所入れないんで。ピッてやる最先端の。
清野 セキュリティで。社長がその締め出されるってちょっと嫌ですね(笑)。いやでもね。本当にあのいろいろとお仕事を広がって、新日本プロレス、またね、恒例のねドーム大会なんかもきっとありますから。
棚橋 そうですね。やはり僕が社長になったときに思ったのは、やはりこうグーッとね、すごくプロレスを楽しんでもらう状況ができた中でのコロナ禍だったので、もう 1 回“上げたい”なっていう。そういういま野心がありますね。もう 1 回みなさんにプロレスを楽しんでもらう状況をつくる。それが、レスラーでやるとか社長でやるのかっていうところですけど、どっちもやります。
清野 頼もしい言葉が聞けました。有田さん、せっかくの機会ですから、ファン代表としてこう、新日本プロレスの社長に要望、何かありましたら?
有田 言うまでもないですけども、とんでもない痛手があったわけじゃないですか。棚橋さんが社長になった途端にエースであるオカダ(・カズチカ)選手がいなくなったり。
棚橋 エースは僕ですけど。
有田 すみません(笑)。レインメーカーがいなくなったり。オスプレイがいなくなったり。いわゆる、とんでもない看板がいなくなっての社長なわけで、どうしていきます、これほんと。
棚橋 やはりね、ここ何か月かの数字っていうのは下がるかもしれないんですけど、新日本プロレスの歴史としてこう上が抜けたら。
有田 誰かがね。
棚橋 (闘魂)三銃士が出て、三銃士が抜けたら第三世代、で、棚橋・中邑(真輔)来て、内藤来てオカダ来てっていう、こう歴史がちゃんと証明してますんで。オカダ・オスプレイのポジションがいま空いてる状態なんですよ。ここに誰がポーンと入ってくるのかっていうのが楽しみにして見てもらったらいいかなと思います。
有田 棚橋さんがやっぱり社長になって、新日本プロレスをちょっと変えていこうかって言って、いま頑張ってると思うんですが、やっぱりそのいまはまだちょっと引き継ぎもありますからね。もう全部俺のステージにするよというわけでいかないと思いますが、いつごろから「棚橋新日本プロレス」が見れるんですかね?
棚橋 いま社長も全力勉強中で。
有田 社長ってなってから勉強する(笑)。
棚橋 今は自分なりの社長像を見つけようと思って、外部の渉外とかに自分から行こうかなと。日本一動く、プロモーションする社長になろうと思って。その方がやっぱりこうね、いろいろと契約が成立する可能性も増えますんで。
有田 G1あたりの夏から本領発揮ですかね?
棚橋 そうですね。
有田 まだですか? 秋ですか?
棚橋 あのう、肉体が整えば。
有田 早く棚橋カラーの、新日本プロレス変わったなぁって。
棚橋 ありがとうございます。それが何かを、まず僕の中で見つけて、しっかりみなさんに見てもらいたいと思います。
清野 1回それは持ち帰っていただいて。
棚橋 宿題です。
清野 持ち帰っていただきましょう。さあ、そんな感じでね。いろいろとお話し盛り上がってまいりましたけども、そろそろ上映の時間が近づいてまいりました。新日本プロレスは本当ね、フリッツ・フォン・エリックみたいにね、どんどんどんどん王国にしていただきたいという話になったんですけども、もう 1 回また映画の方に話を戻しますと、最後これからねご覧になる皆様に向けて、こういう気持ちで見てもらいたい、こういう覚悟で見てもらいたいっていうのをですね。一言ずついただいて締めとさせていただきたいと思います。じゃあまずは棚橋さん。
棚橋 エリック一家が悲劇の一家だってね、この映画のやつで謳われてますけど、みなさんの目で、本当にそれが悲劇かどうかっていうのは判断してほしいなと思います。最後まで楽しんでください。
清野 はい、ありがとうございます。では、有田さん。
有田 お笑い芸人の僕が言うわけではない、言っちゃいけないかもしれませんけど、本当に笑ってキャッキャ言ってる楽しい映画かどうかはわかりません。まあ、みなさんが知ってる通りのストーリーだし、まあ本当にいろんなことを考えて…プロレスファンなら絶対見てほしいと思いますし。そうじゃない方もいらっしゃるかもしれませんが、こんなことが実際に現実にあるんだなっていうそういう話でもいいと思いますし、何よりも僕は、話を全部なんとなくわかった上で見てもたくさんの発見があるし、あと「あれここってこうだったよな」とか「これ俺の思った記憶と違うな」とかそういう細かい楽しみ方もできると思いますので、最高の最後、あのクレジットが全部終わるまで見逃さないようにしていただきたいと思います。
清野 はい、ありがとうございます。じゃあフォトセッションに参りましょうか?
棚橋社長と有田さんのトークはもちろん、台本なしでガンガン喋る清野茂樹アナの進行が絶妙だった。観客向けショットタイム📸でも10カウントコールと「プロレスあるある」を挟む。
🎬3月28日(木)kino cinéma新宿 特別先行上映会#アイアンクロー #棚橋弘至 #有田哲平 ※媒体として取材 pic.twitter.com/kZvXNZOj0a
— KAKUTOLOG📶プロレス/ボクシング/MMA/格闘技カクトウログ (@kakutolog) March 28, 2024
プロレスファミリーの超絶悲話…オールドファンは検証を、ビギナーファンは覚悟を
トークでも出たが、とにかくその描き方にプロレスへのリスペクトを感じる。映画化されることのみならず、このクオリティで作品となること自体が、フォン・エリック一家の功績そのものだ。超絶悲話に違いないが、時代をつくろうとしたプロセスはオールドファンの記憶そのものである。プロレスを再検証するのにもってこいだし、ビギナーファンにとってはプロレスへの覚悟を深める素材になるかもしれない。
コロナ禍や看板選手の離脱で窮地に立つ新日本プロレス。そこから復活していく決意を棚橋は口にした。これまでも棚橋は新日本をV字回復させたことはあるし、自身のレスラー人生もブーイングを浴びた時期を経てのものである。団体規模や方向性は様々なれど、プロレスには「愛すれば呪われる」というところがあるんじゃないかと思う。ファンもまた幾度となく悲劇や離合集散を目の当たりにするジャンルだ。
そこに棚橋は「みなさんの目で、本当にそれが悲劇かどうかっていうのは判断してほしい」と投げかけた。どこかで呪われることがわかっていても、向き合い続けることで「生きている」と味わえるのがプロレス。だから「生きている」ことを限界まで貫くことは、悲劇とは真逆ではないかと言いたいのかもしれない。棚橋もまた、自らの立ち位置を確認しながら愛を叫び続ける。
ザック・エフロン主演×A24最新作『アイアンクロー』は4月5日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開!
<ストーリー>
1980年初頭、プロレス界に歴史を刻んだ“鉄の爪”フォン・エリック一家。父フリッツ(ホルト・マッキャラニー)は元AWA世界ヘビー級王者。そんな父親に育てられた息子の次男ケビン(ザック・エフロン)、三男デビッド(ハリス・ディキンソン)、四男ケリー(ジェレミー・アレン・ホワイト)、五男マイク(スタンリー・シモンズ)ら兄弟は、父の教えに従いレスラーとしてデビュー、“プロレス界の頂点”を目指す。デビッドが世界ヘビー級王座戦へ指名を受けた直後、日本でのプロレスツアー中に急死する。さらにフォン・エリック家はここから悲劇に見舞われる。すでに幼い頃に長男ジャックJr.を亡くしており、いつしか「呪われた一家」と呼ばれるようになったその真実と、ケビンの数奇な運命とは――
監督・脚本:ショーン・ダーキン
出演:ザック・エフロン、ジェレミー・アレン・ホワイト、ハリス・ディキンソン、モーラ・ティアニー、スタンリー・シモンズ、ホルト・マッキャラニー、リリー・ジェームズ
2023年/アメリカ/英語/132分/カラー・モノクロ/ビスタ/原題:THE IRON CLAW/字幕翻訳:稲田嵯裕里/G
提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ 公式サイト:ironclaw.jp 公式X(旧Twitter):@IronclawJP
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(3/26解禁)見どころは”驚異の肉体”と”ド迫力のプロレス”だけじゃない! ザック・エフロンら4兄弟インタビュー映像
“アイアンクロー=鉄の爪”を得意技とした実在のプロレスラー、フリッツ・フォン・エリック。父フリッツのもとでプロレスの高みにまで登りつめたフォン・エリック兄弟を、身近な視点から壮大に描き出した本作。プロレスにまつわる栄光と挫折を掘り下げ、植え付けられた価値観からの解放という今日的なテーマに踏み込んだ、胸の奥深くに刺さる人間ドラマに仕上がっている。
このたび物語の中心となる、もの静かで優しい性格で愛情深い次男ケビンを務めたザック・エフロン、三男デビッド役のハリス・ディキンソン、四男ケリー役のジェレミー・アレン・ホワイト、五男マイク役のスタンリー・シモンズら、フォン・エリック兄弟を演じた豪華主要キャスト4名によるインタビュー映像が解禁!役作りにおける撮影秘話や本作の見どころなどを語り尽くした。
本作での注目ポイントの一つでもある肉体改造について、ザックは「僕にとってはフォン・エリック兄弟といえばあのたくましい体格が何よりも印象的だった。会場を盛り上げるショーマンシップとリングでの超人的な身体能力を持つ彼らのような肉体になることは俳優にとってものすごく大変なことだ。だから本作の役作りは僕にとって大きな挑戦だった」と、『ベイウォッチ』(17)で見事な肉体美を披露したザックにとっても、今回のトレーニングはかなり辛かった様子。だが、そうした中でも彼らがどんな生活を送り、何を感じて生きていたのかなどを理解することができたようで尊敬の念も述べている。
ジェレミーは、ストーリーの要ともなる彼らの人間性や内面部分を表現するにあたり、「私生活を映したものはほとんどなくて映像の彼らはいつもパフォーマンス・モードだった。だから素顔を知るために彼らを取り巻く人間関係を理解しようとしたんだ。兄弟同士の関係や父親との関係についてね」と、想像を絶するほどの喪失を体験した兄弟を演じるには彼らの人間性や当時の生活を十分に理解する必要があったことを振り返る。
最後にハリスは、「これは人の心の強さを力強く訴える物語だ。様々な不幸を乗り越えていくケビンの姿を通じて描かれる。いかに彼がすばらしい人間かよく分かるよ。それに本作ではメンタルヘルスや男らしさについて議論するシーンも多い。本作を見た人がある種の共感を得て、その共感が他の分野にも広がることを願うよ」と、本作の見どころを熱くコメント。
プロレスラー役を演じるために努力を惜しまず作り上げた圧巻の肉体、そしてプロレスシーンも勿論見どころだが、家父長制の家庭で育った兄弟たちの絆や葛藤する姿は現代にも通ずるものがあり、ドラマティックなストーリーに心揺さぶられること間違いないだろう!