功労者が報われる業界目指して 日本プロレス殿堂会(NPH)が発足
20日にホテルオークラ東京にて「日本プロレス殿堂会」の記者会見が行われた。「アントニオ猪木の喜寿を祝う会」と同じ場所であり、会見に出席した藤波辰爾・長州力・天龍源一郎は祝う会で猪木とフォトセッションを行っている。
・ 2-20【日本プロレス殿堂会】猪木、天龍、長州、藤波らで『日本プロレス殿堂会』発足 レスラー保障整備…プロレス格闘技DX
天龍源一郎、藤波辰爾、長州力が20日、都内ホテルオークラで会見し、『日本プロレス殿堂会』(NPH=Nippon Puroresu Hall of fame)の設立が発表された。プロレスラーの保障面を支援する組織づくりを志し、いわゆる『殿堂入り式典』の開催も目指す。
日本プロレス界における何らかの“統一組織”創設の必要性は、これまでもことあるごとに叫ばれてきたが、いまだ確たる組織の実現には至っていない。
ゆえに他のプロスポーツジャンルに比べて引退後のセカンドキャリア面でのバックアップや、事故による保障面も団体によってまちまちで、横断的には整備されていない現状が続いている。この日本プロレス界長年の“懸案事項”と向き合うため、そして独自の発展を遂げた“日本のプロレス”の温故知新を目的として、新組織が産声を上げた。
中心となったのは“二世”たち。天龍の娘である嶋田紋奈氏、藤波の息子であるLEONA、長州の娘婿である池野慎太郎氏が『二世会』を結成し、互いに共鳴しながら話し合いを重ねた結果、“中立支援組織”としての『日本プロレス殿堂会』設立に至った。
発足メンバーはそうそうたる顔ぶれで、アントニオ猪木、藤波、長州、天龍に加えて故・ジャイアント馬場さんの肖像権を管理する『株式会社H.J.T.Production』も賛同。新日本や全日本、ノア、DRAGON GATEやDDTといった国内主要団体も“協力団体”として名を連ねている。
今後発足メンバーのほかにも登録選手、元選手を増やしていく方針で、殿堂会入りの可否については推薦に基づく合議で決めていくという。
おもにファンから募る“年会費”が殿堂会を支える仕組み。『日本プロレス殿堂会サポーターズクラブ』を同時に設立し、あらゆる特別コンテンツが閲覧できる会員制のWEBサイトを開設。ロイヤル会員(年額25000円)、ゴールド会員(年額10000円)、サポーター(月額600円)、法人会員(年額5000円)などの会員ランクに応じて、閲覧・参加できるコンテンツや受けられる特典が異なる。同時にイベントも開催し、第一弾として今夏に都内で『プロレス展』を開く。
こうして得た収益を、“プロレスラー報酬”として登録選手や管理マネジメント組織に、独自の算出法で永続的に分配していく方式がとられる。事故などやむをえない事情でサポートが必要となったプロレスラーやその家族への支援費、チャリティーの運営費などにも充てられる。
当面は嶋田代表のルネッサンス株式会社が運営母体となって実行委員会を組織していくが、「10年、20年、30年と続けていくことを考えているので、ゆくゆくはしっかり法人化したい」(嶋田氏)という。
会見で嶋田氏は「私たちの父親たちだけとどまらず、歴史を刻んでこられた先輩方や、これから引退をされる世代にも目を向け、父親たちが人生をかけた生業であるプロレスという業界全体に少しでも貢献ができ、この業界におられる方々とともにすべきことをしていく時期にきたのではないかという考えに至りました。これまでプロレス界を創り、支え、貢献してきた方々を最大限に敬うべきではないのか、選手のセカンドキャリア、第2の人生にも着眼し、その思いを形にしました」と設立趣旨を語った。
アメリカで生まれながらも、日本に伝来して独自の発展を遂げた“日本のプロレス”を文化として伝承していくことも、活動目的の柱のひとつとなる。嶋田氏は「日本に古くから根づいた伝承文化であるプロレスにおいて、プロレスラーの功績を業界全体で永続的に語り継ぎ、ファン、そして選手同士が温故知新に出会える場を設けたい」と話し、英語表記の『NPH』(Nippon Puroresu Hall of fame)にも、あえて“ニッポン”と“プロレス”の文言を入れた。
そして、一般的に“殿堂入り”といえば、多大な功績を残した功労者を認定して表彰することを指すが、ゆくゆくは『殿堂入り式典』なども開催したい意向。一方で嶋田氏は「殿堂会という名前がついているので、ゆくゆくは式典もしたい。ただ、今はまず、殿堂会の趣旨を広く認識していただき、ご賛同いただくところから、ゆっくりと始めていきたい」と話した。
会見に出席した天龍、藤波、長州もそろって“子息たち”による一念発起を喜んだが、“過去の失敗”と照らし合わせて厳しくも含蓄ある言葉でバックアップを約束。この日77歳を迎えた猪木の“喜寿を祝う会”も、会見場と同じホテルオークラで開かれ、4人そろって『殿堂会』の成功を祈って「ダー!」を敢行した。
会見における天龍、藤波、長州のコメント(抜粋)と、殿堂会の現状での概要は以下の通り。
【天龍の話】(抜粋)「この会ができるということは、これからの後輩のためにも意義あることだと思うので、進展してちゃんと形になるように尽力していきたい。自分たちの子どもたちが、自分たちの生き様をみていてこういう形に至ったのが何よりうれしい。過去にもこういう会が発足しては消滅していった事実もあります。でも、それによって二世の方々も戒めがことのほか強くなったということで、これを進展させていって、僕たちじゃなくて次の世代、そして次の世代人たちがプロレスラーとして成り立っていけるようにしていって欲しいと思いますし、そのために力を尽くしてもらいたいですし、当然やってくれると思ってます。プロレスに心配なく打ち込んでいけるシステムを創りたい。今のレスラーの皆さんのように“後ろ”がなにも無いなかでプロレスで頑張ってるだけ、ではなく、プロレスで頑張っていけば何かがついてくる…という心強いファンの人たちの後ろ盾、力添えがあって、プロレス人生を安心して歩んでいける。これが軌道に乗っていけば、安心してプロレスに取り組んで、プロレスを繁栄させていってもらいたい。それが3人の共通の思い」
【藤波の話】(抜粋)「二世が動いてくれたのを本当にうれしく思います。今まで色んな形で、こういうものが出ては消えてきましたが、自分がWWE殿堂入りをした時、実際目にしたことで、これが日本にもできたらな…という部分もひじょうに強かった。僕ら3人のものではなく、これから育っていくプロレスラー全員のものになって欲しいし、プロレス界全体、プロレスファンの願いでもある。そういう形のプロレス殿堂会を大きくしたいし、自分たちもそのために頑張っていきたい。いつか誰かが動かないといけないものであったし、我々が発足メンバーではありますが、これから入ってくるレスラーのことも考えて、これは自分たちの夢というか使命だと自分は感じます」
【長州の話】(抜粋)「今まで殿堂会、選手のために役に立つことを…と過去に(こうした試みは)何度かありました。自分の気持ちのなかでは、これが“最後の機会”かなという思いがあります。しっかりとこれが、これからの選手の役に立つように。まだまだ先は長いですけど、プロレスで頑張っている選手のために、選手の役に立つような素晴らしい殿堂会をやりたいと思っています。2、3日前に今ニューヨーク(WWE)で活躍してる(中邑)真輔と一杯飲みまして。自分の夢だけで海外に渡って、家族についてすべてのことがケアできるのか。そのプレッシャーに追われながら仕事をしていかないといけない。家族の期待に添えて、今現在、一生懸命ニューヨーク(WWE)で頑張って、日本人で今までにないほどのトップになってますけどね。結構前からこの話(殿堂会)を聞いていたんですけど、以前からこういうこと(レスラーの保障面を考えた統一組織)は無くてはならない、と。ただ、個々の選手の考え方や見方が違って、意見がなかなかまとまらない。各団体もなかなか話の波長が合っていかない。それを自分たちの息子や娘が、今度こうして、こういうものを創り上げていきたい、と。これがもし、何かのことで以前と同じように崩壊していくようだったら、お前たち3人、叩かれるぞ、バッシングされるぞと。その心配が先に立って。でも結局、誰かがやらないと。今のプロレスも大変ハードな内容になってますし、一歩間違えればホントに、うん…とんでもない事故にもつながりますし。その時に選手一人ひとりがサイン会だなんだってやるんですけど、それがどれだけ役に立ってるのかな…っていう。家族もあって、子供もあったら大変だろうなって。だから源ちゃんの娘さん、レスラーでもある藤波さんの息子、そして俺の義理の息子。これを彼らがどういう具合に組み立てていくのかな…っていうことを考えれば、これは…うーん、成功して欲しいって気持ちと、親としてはどうやって背中を押して支えてやるかっていう。大変な思いをすると思いますが、親としてはうれしい限りです。ですが、今は背中を“支えてやる”ってぐらいで、押すっていうことはできないっていう思いがあります」
☆日本プロレス殿堂会
▼運営
[二世会]嶋田紋奈(天龍プロジェクト代表)
[二世会]LEONA(プロレスラー)
[二世会]池野慎太郎(リキプロ代表、長州の娘婿)
日本プロレス殿堂会実行委員会▼賛同メンバー
ジャイアント馬場(株式会社H.J.T.Production※故・馬場さんの肖像権を管理)
アントニオ猪木
藤波辰爾
長州力
天龍源一郎▼特別協力
東京スポーツ新聞社
週刊プロレス
株式会社ブロンコス
ニコニコプロレスチャンネル▼協力団体
新日本プロレス
全日本プロレス
大日本プロレス
DDT
DRAGON GATE
プロレスリング・ノア
2AW
WRESTLE-1▼日本プロレス殿堂会サポーターズクラブWEBサイト
https://nippon-puroresu-hof.com
2月22日12時開設※ツイッター、フェイスブック公式アカウントやYouTubeチャンネルも20日より順次公開
ボクはメディア取材のお手伝いで「祝う会」の現場へ。古舘伊知郎さんの語り、猪木の継続する意欲に間近で接することができた。特に印象深かったのは、長州力がアドリブで猪木に「オレたちは(猪木)会長の噛ませ犬じゃない!」と突っかかるシーン! テンション高い長州を藤波が押さえ、天龍は猪木に寄り添う臨戦態勢。
TKJPばりの乱闘コントののち、長州が猪木のビンタを食らった。レジェンドが暴れるとおのずと盛り上がる。長州がロビーに到着したときの様子にも遭遇したのだが、「今日は何をやるの!?」的な言葉をまわりに発しつつ実にエネルギッシュ。意欲的に場をつくろうとする姿勢は素晴らしい。
何より猪木に元気でいてもらえるのが嬉しいのだろう。この顔ぶれが健在で揃っている今が“最後の機会”ではないかと本当に思う。レジェンドが関わっての横断組織の創設。
ファンからは「自分たちの報酬が目当て!?」との声が出るものだが、会見では後輩への道筋をつけたいという意図が随所に出ている。具体的な活動内容が問われるし、ガラス張りの運営が求められていく。役割を果たせば報酬を得たって構わないのだ。いっぺんに大きなことはできないだろうが、活動の充実を期待せずにはいられない。
ここ数年はイベント会社によるレジェンド選手のトークイベントも目立ち、盛況なものも多い(イベント会社の業界貢献度は高い!)。英雄だった功労者と接することができ、好きだったころに思いを馳せられるならば、お金を落とすファンもいる。そういった潮流が日本でもようやく本格化しているのではなかろうか。
アメリカWWEでの殿堂とは?
・ WWE殿堂 – Wikipedia
WWE殿堂が設定されたきっかけは、1993年に死去したアンドレ・ザ・ジャイアントである。彼の生前の功績を称える目的で、WWF(現:WWE)は同年にWWF殿堂を創設した。以降、WWFは1996年まで毎年一回、殿堂入り人物を発表したが、この当時は特にPPVに連動したイベントとはなっておらず、独立したセレモニーとして表彰式を行っていた。しかしながら、式典の規模は大きなものではなかった。
2004年に入り、1996年以降行われていなかった殿堂入りが復活する。団体の名称がWWEに変更していたので、殿堂の名称もWWE殿堂となった。また、殿堂入りの表彰はレッスルマニア前日に行われるイベントとして、一連のレッスルマニアの行事に組み込まれ、式典も盛大に行われることとなった。レッスルマニアの当日にも、開催会場において殿堂者が紹介される時間が設けられている。
2006年にバーン・ガニアが殿堂入りして以降は、NWAやAWAなど他団体で活動していたレスラーや関係者の殿堂入りも相次いでいる。日本を本拠としていたレスラーでは、アントニオ猪木が2010年、藤波辰爾が2015年に殿堂入りしており、2017年には力道山がレガシー部門の殿堂者に迎えられた。
2015年からは障害や病気に立ち向かう人々に向けて、アルティメット・ウォリアーの名前を冠したウォリアー賞(Warrior Award)が新設された。
日本ではアメリカほどPPVを買う文化がないので同じようにはいかないだろうが、日本としてもスケールの大きなイベントを確立していきたいところ。
この日の「祝う会」の出席者は300人とも500人とも言わているが、関係者限定とはいえ参加費5万円なので300人でも1500万円が集まる(昨年に夫妻で入院していた猪木であるが、五輪イヤーの活動資金が必要となる)。猪木の関与は間違いなくカギとなるだろう。
新日本プロレスのレスラーズ(現役ではオカダ・カズチカ、棚橋弘至)からも花が届いていた。
お祝い。#アントニオ猪木 #喜寿 #オカダ・カズチカ pic.twitter.com/JZF9xjhW1a
— カクトウログ_プロレス/格闘技 (@kakutolog) February 20, 2020
今年に入ってオカダが「猪木」の名を出しているが、“現在のプロレス”とつながっていくことも、ものすごく大切。老若男女問わず愛着のある業界へ・・・迷わず行けよ、行けばわかるさ!!