青木真也はなぜ「4の字」を自ら解いたのか – 朝倉未来戦で見えた“腕”への執念 - (朝倉未来 vs. 青木真也 『超RIZIN.5 浪速の超復活祭り』)
画像元:©RIZIN FF
昨日、京セラドームで開催された超RIZIN.5 浪速の超復活祭り
平日ながら、顧客動員数は4万8,986人(公式発表)となる大イベントでした。
その中でも古くからの格闘技・プロレスファンから注目された試合が朝倉未来・青木真也戦ではないでしょうか。
2009年Dynamite!!での腕折り事件
青木真也と言えば、2009年12月31日のDynamite!!(DREAM vs 戦極の団体対抗戦)で行われた廣田瑞人戦。青木が廣田の右上腕を骨折させて勝利した試合です。
青木の腕折りは、格闘技のオールドファンにとっては鮮烈に記憶に残る一戦でした。
©t.SAKUMA
今回の朝倉未来戦は、1R 2分39秒、TKO(レフェリーストップ:グラウンドパンチ)により朝倉未来の勝利となりました。
結果だけを見れば朝倉未来の完勝です。しかし筆者は、試合内容を見ていて、あることに気がつきました。
執拗に腕を狙った青木真也
青木真也は試合開始早々、朝倉の腕を狙いにいきます。
#超RIZIN5
朝倉未来 🆚 青木真也🏆朝倉未来
1R 2分39秒
KO(パウンド)試合開始直後、青木真也がタックルを仕掛け、そのままバックを奪取。両脚で朝倉の胴をロックし、青木が優位なポジションを取る。…
— KAKUTOLOG📶プロレス/ボクシング/MMA/格闘技カクトウログ (@kakutolog) September 10, 2026
朝倉に組みついた青木は、自らグラウンドに引き込み、三角絞めから腕十字を狙います。
朝倉がこれをしのいで立ち上がると、青木は再びタックルからバックへ移行。スタンドの状態でバックポジションを取り、そのままグラウンドへ持ち込みます。
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グランドでも、青木真也が朝倉の胴に4の字ロックでバックポジションをとる。グラップラーにとっての理想的な展開です。
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なぜ、青木は4の字ロックを解除したのか?
ここからが本題です。
この時点で試合の残り時間はまだ3分以上ありました。
青木はバックポジションをキープしていれば、朝倉から強いパウンドを受ける危険はほとんどありません。
逆に後ろからチョークを狙いながら、フェイスクランク、パンチ、手首のコントロールなどを繰り返し、朝倉を削りながらリアネイキッドチョーク、ツイスターなどのフィニッシュを狙うこともできたはずです。
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しかし青木は、その4の字ロックを自ら解除します。
そして、バックという非常に有利なポジションを手放してまで、リスクの高い腕十字へと移行しました。
結果的に朝倉は腕を抜き、正対してトップポジションを奪取。そこからパウンドを連打し、青木はTKO負けとなりました。
つまり、この試合「朝倉がバックから脱出した」というより、青木真也がバックコントロールを自ら解き、腕十字で勝負をかけた試合です。
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朝倉未来の腕を極めて勝つ
このことに徹底的にこだわっていたのではないか、ということです。
なぜ、あれほど有利な4の字バックを自ら捨ててまで、腕を取りにいったのか。
しかし、その姿を見ていて筆者の頭に蘇ってきたのが、2009年12月31日の廣田瑞人戦でした。廣田の腕を極め、右上腕骨を折った、あの「腕折り」です。
格闘技の試合を「作品」と表現することもある青木真也。
朝倉未来を相手に、ただ勝つだけではなく、「腕を極めて勝つ」という結末まで描いていたのではないか。そんなことさえ感じさせられた一戦でした。
今回、この視点に気づくきっかけをいただいたのは、下記のお二方です。ありがとうございました。
青木選手、バックキムラから腕十字いったのが悪手となった。
青木選手自身がギロチンや腕十字など下になる極めは近年避けていたはずなのに。
超RIZINの空気に当てられたか?… https://t.co/en4aJJ2bFi— 関根シュレック秀樹(Sekine Shrek hideki) (@shrekbonsai) September 10, 2026
これ往年の青木を知ってる人なら絶対気付いたと思うんだが
マジで腕折りにいってたね。
1本とるの容易な場面は2回あったがあえてロックといて、単に試合終わらせるより腕折るとこ今の格闘技ファンにみせようとする青木はやっぱイカれてるな。 https://t.co/iDpJYswS9B— 享楽 (@youcankill) September 10, 2026
柔術家・MMAの専門家の見解
技術的なことは柔術家、MMA選手の方々にはLINEで直接聞きました。
MMAジム CAVEの奥野代表(MMA選手+柔術黒帯)も同じ見解でした。奥野代表は、2009年青木・廣田戦で廣田選手のセコンドについた人です。
自分なら優先順位は
① バックキープ
② バックチョーク
③ ツイスター
④ 後ろ三角
⑤ 腕十字
です。4の字まで組めているなら、まずバックポジションをキープすることを最優先にします。
そこからハンドファイトしてバックチョーク。
相手がこちらを向いてきたらツイスター。
4の字を解除されて相手が下に下がってきたら、後ろ三角か腕十字。MMAなら、下から腕十字を狙うより、この流れの方がポジションを失うリスクが低く、安全だと思います。
特に「バックキープ→チョーク」を最初に置くのが重要です。MMAでは「極め技を狙う」より「打撃も含めて攻撃を継続できる優位なポジションを失わない」という判断が先になります。
ただ、技術も実績もある青木選手がそれを分かっていないはずはなく、久しぶりの日本の大舞台で、ミスをすることもあると思います。
朝倉選手と対峙した時にどんなプレッシャーがあったのかは、本人にしか分からない部分もあるのかもしれませんね。
柔術ジム CAVE BJJ代表の卯都木さん(2026年 JBJJF全日本マスター柔術選手権黒帯優勝)は、過去動画で少し解説しています。
しかしながら、真意は青木選手本人にしか分かりません。
青木真也の回答
この記事を公開してから、青木真也が真相を語っていたので要点をまとめました。
2R、3Rになれば相手も汗も書くし、自分もエナジー(元気)も無くなってくるので攻め手がなくなってくる。
わかりやすく言うと「金ねー奴は博打負けるじゃん。本命にかけれないから、中穴とか大穴狙っちゃうのよ。だから博打で負けていくのよ」。
それと一緒で2R、3Rに行くと分が悪いと思ってるから、1Rで特攻するって腹決めてやってるから。
俺は自分の好きな後輩たちに「かっこいい先輩でいたい」と言う一心でやってるだけ。
現代MMAで腕十字は極まるものなのか?
少しわかりにくかったので筆者なりに解釈して解説を追記します。
現代MMAにおいて腕十字の決まり手はかなり少なくなってきています。
今回のような下のポジションから腕十字の極まり手を、RIZINのプロ戦で過去5年に遡り調べてみました。
| 年 | 試合 | 結果・状況 |
|---|---|---|
| 2022 | 須田萌里 vs. にっせー | 須田が引き込み、下から腕十字→三角→再び腕十字で一本。公式にも「下からの腕十字」と明記。 |
| 2023 | 横山武司 vs. 山本琢也 | 横山がタックルから引き込んでグラウンド。山本が体を起こしたところを腕十字で一本。 |
| 2024 | 今成正和 vs. 摩嶋一整 | 摩嶋が上からヒジを落とす中、今成が下から腕十字。持ち上げられても極め切る。 |
| 2024 | 伊澤星花 vs. ルシア・アプデルガリム | 伊澤が下にされる→下から三角→腕十字へ移行して一本。 |
| 2026 | ジョリー vs. 児玉兼慎 | ジョリーが自ら引き込み、公式記述そのままの**「下からの腕十字」**で一本。 |
| 2026 | 武田光司 vs. 摩嶋一整 | 摩嶋にテイクダウン/バックを取られた流れから腕十字→三角十字。武田自身も「下から極めると思っていなかった」とコメント。 |
過去5年間で6試合です。これはかなり少ない数字です。
つまり、青木真也の言う大博打とはこのことだと感じました。定石通り、バックから相手を削る作業をして1Rポイントを取ったとしても、2R~3Rを乗り切るエナジーがない。
本人談「1Rで特攻する覚悟で腹決めてやってる」。これにつきると思います。


















